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「当たり前のことを新しいことのように言わないでほしい」

2014年06月25日 | コンサルティング

 「これからは視点を変えなくてはいけないと思うんです」「従来とは違う新たな視点が必要です」

これは先日あるテレビの情報番組で、かつてスポーツ選手として活躍していた人がコメンテーターとして発した言葉です。

その番組では、行政が過去に作った箱モノと言われる公共施設の転用の例を取り上げていました。この方は、これらの施設が現在の社会・経済情勢の中で当初の設置目的とは大きく違った利用をされていることに大変感銘を受けたようで、これは行政の変化の一例であり、今後はこうした「新たな視点を持つ」ことがいかに重要かということを繰り返し力説されていました。

従来とは異なる視点を持つことの重要性については私も全く同感であり、異論をはさむ余地はないのですが、正直このコメンテーターの発言には違和感を持ちました。

というのは、その番組で紹介していたような転用は、何も今に始まったことではないからです。私の出身市では、1970年代に新興住宅地に建設した小学校の建物の将来の利用法を、当時から将来(現代のことです)の高齢化を見込んで、老人介護施設にする前提で考えており、現在では当初の予定通りに老人介護施設として利用されています。

同じような例は他にもたくさんあって、30年程前に建設された県立高校が現在は老人介護施設になっている例など、枚挙にいとまがないほどです。

つまり、冒頭のコメンテーターが言っていたことは「新たな視点」でも何でもないということです。もちろん、このコメンテーターにとってはフレッシュな情報で斬新なアイディアであり、自分がイメージするこれまでの行政のあり方とはだいぶ違うということだったのでしょうから、ストレートな感想だったのだと思います。

しかし、この方に限ったことではないですが、例え自分の専門外のことであったとしてもコメンテーターとして発言するのであれば、少なくともそのテーマにかかる周辺の情報をある程度収集し、それなりの知識を持って臨む必要があると思います。それをしないで、従来からあることや当たり前のことをまるで新しいことのように言われると少々興ざめしてしまいます。

 そして、こうしたことは私が身を置いている研修講師の業界においても言えることなのです。

以前このブログでも書きましたが、研修講師でも研修の技法をしっかり勉強して自分のものとして身に付けていない人ほど、自身の進め方を新しいやり方だと力説したり、海外から入ってきた情報を鵜呑みにして発言したり、そのまま研修に使ったりしているように感じています。

しかし、本当に大切なのはそうした技法を上辺だけで伝えるのでなく、きちんと受講者に理解いただけるように自分のものとすることだと思っています。

コメンテーターでも研修講師でも、外に向けて何かを発信をする時は本当にそれが正しいのかきちんと把握するなどそれ相当の準備が必要であると自戒の念を込めて思ったのでした。

(人材育成社)


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