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第1,157話 性別の表記は必要か否か

2023年03月08日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「男女の表記を入れる必要はありますか?」

これは、私の知り合いの研修講師がある企業の研修で、受講者名簿へ性別の表記を依頼したときに、研修担当者から言われた言葉です。

その講師は今までにそのような質問を受けたことがなかったため、一瞬うろたえてしまい、その場では明確な返答ができなかったとのことでした。

近年、自治体などでは申請書類やアンケート用紙から性別欄を廃止する流れになってきていますので、この企業の研修担当者はそのような考えに基づいて質問をしたのかもしれません。実際、性別を記載することによって無意識の偏見であったり不利な扱いを受けたりするような例も少なくないようですので、その点には十分な配慮が必要なことは確かなことです。

その一方で、性別を伏せることにより、たとえば男女別の統計が取りにくくなりジェンダー不平等の改善をめざす政策立案に影響が出る恐れがあるといった声があります。また、組織における昇進スピードの男女差などの解消のためには、性別のデータが必要になるといった専門家の意見などもあります。

それでは、研修の際に受講者名簿への性別の記載は必要なのでしょうか?

この点については様々な考え方があるかと思いますので、一概にどちらが正しいと決めることはできません。しかし、私自身は自分が担当させていただく研修においては、記載していただきたいと考えています。

弊社が担当させていただく研修では、テーマにかかわらず様々なグループ演習に必ず取り組んでいただくようにしています。その際には、はじめに個人で課題に取り組み、次にグループでディスカッションをしていただく場面を設けています。そのグループ編成の際には極端に議論が偏らないように、できるだけ男女別や年齢、キャリアなどが偏らないようにバランスを意識して、できるだけ多様な意見が出るようにしています。

グループ討議は、グループで取り組むことによって自分だけでは考えつかなかったような見方をすることができたり、人それぞれに様々な意見があることを確認できたりする大切な機会です。メンバー同士で意見交換することでたくさんの気づきを得られることを実感する受講者が多いと感じています。そのためにも多様な考え方や意見に接することができるよう、グループ編成の段階では男女別の記載も参考にしているのです。

同時に、この多様性の大切さについては通常の仕事をしている組織ではなかなか気づけない、仕事を離れた研修という場だからこそ、気づけるという面があるのではないかとも考えています。

今後、様々な組織のみならず世の中全体において、多様性の重要性と、それを受け入れていくことの大切さが認識され、その方向にさらに進んでいくものと思います。私もその動きにはもちろん大賛成であり、その際には決して表面的な対応で終わってしまわないようにしていくことが重要だと考えています。しかし一方では、先述のように多様性を担保するために必要となる情報もあり、その兼ね合いをどうとっていくのか、なかなか難しい問題です。

私が研修講師を始めた頃は、男女別の記入欄があるのが普通の時代でしたが、今後は研修においても多様化に向けた取組みの流れをしっかり見据えながら対応していかなければならないと、あらためて考えています。

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