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人口減少と仕事の減少、どちらが先に訪れるのか

2016年03月23日 | コンサルティング

「人口減少」と「仕事の減少」、最近この2つの話題を耳にすることが多くなっています。いずれも今はまだあまり実感していない人も多いかもしれませんが、今後はそれにともなう問題が様々な形で顕在化してくると思います。

まず、仕事の減少については、「今ある仕事の半分はいずれ機械に取って替わられる」と言われて久しいです。最近ではメディアなどで数年後には人工知能やロボットに置き換えられる可能性がある仕事や業種が具体的に挙げられていて、それらを見ると少なからず焦るような気持ちになります。

先週のNHKのクローズアップ現代「あなたの仕事がなくなる」では、5年後、10年後には自分の仕事がなくなることが当たり前になると取り上げていました。番組の中では、手書きの文字を代筆してくれるロボット、スマホのアプリを使ってHPを作るなど、これまでは人間にしかできなかったことが機械に置き替わる様々な例が紹介されていました。

また、人口減少の方も今年から日本でも減少に転じ始めたそうです。人口減少にともなう様々な問題が指摘されていますが、その1つにマーケットが減る・縮小することがあります。

日本ではだいぶ前からなかなかモノが売れない時代になっていますが、今後はさらに人口も減っていくため、これまでとは異なるやり方で情報を得て、マーケットをとらえていくことがますます重要になっていくのでしょう。

今後コンピュータや人工知能(AI)が進歩したとしても、データを分析するだけではマーケットを的確にとらえることは難しいでしょうから、私は機械に置きかえられない仕事は必ず残ると考えています。たとえば、1人1人のユーザーから様々な情報を得て、それに基づいて個々のユーザーの感性に合ったモノやサービスを選び出し、それを提案するような仕事は当面は人間しかできないと思います。

先日、このようなことがありました。気に入って使っていたトルコ石のアクセサリーが壊れたため、修理のためにある店を訪ねたところ、店員から「トルコ石がお好きなのですね。ちょうどトルコ石を使った新作がいろいろ入ってきているんですよ。試しに付けて見ませんか」と言って、様々なアクセサリーが私の目の前に並べられました。しかし、私としてはトルコ石を気に入っているものの、同じようなものであるならばあえて購入するまでにはいたりません。

そこで、「トルコ石のものはこれがあるのでもういりません。別のもので気にいったものがあれば購入することもあるかもしれませんが・・・」とやんわりとお断りをしたところ、店員は慌ててトルコ石以外のものをショーケースからピックアップして、私の前に並べて見せてくれました。これこそが、まさにAIを超えたhumanタッチのやりとりなのだと思います。

インターネットで本やモノを一度購入すると、そのデータを基にしてその後様々な類似品が画面を通してセールスされてきます。しかし、私の場合は類似品を買うことは多くありません。

1人の顧客がある商品を購入したという情報は「点」の情報ですが、それが次の商品の購入につながるためには、点と点の情報がつながって「線」の情報になることが必要だと思います。

先ほどの例のように、人間であればコミュニケーションによって、点の情報を積み重ねて線にすることができますが、機械の場合は点としてのばらばらの情報収集にならざるを得ないため、顧客のニーズに簡単には合致できないのではないかと思います。

今後、人口減少社会においてマーケットをとらえていく場合、「1人1人の人間を様々な視点で理解する」ことが、今まで以上に必要になるのではないでしょうか。先日、コンピュータソフトが囲碁の世界トップ選手を破ったニュースがありましたが、そうは言っても、この点は機械はまだまだ人間には及ばないと思います。

しかし、人間自身もデータに頼りすぎると、AIと同様のことをやってしまいかねません。人間でなければ丁寧な対応が難しい領域をどれくらい顕在化させられるかが、今後マーケットをとらえる重要なカギになると思っています。

(人材育成社)