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国立大学の文系は不必要?

2015年09月13日 | コンサルティング

今年6月、文科省は全国の国立大学に向けて、組織や業務全般の見直しを行うよう「文部科学大臣通知」を出しました。その中の「教員養成系学部・大学院や人文社会科学系学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める」という一文がちょっとした波紋を起こしました。

これが、大学関係者を中心に「文系学部は廃止するか、企業が求める人材を養成するように」という通告だと受け止められたのです。

日本学術会議や多くの大学の教員から疑問の声が多数上がりましたが、専門家の意見はさておき、ツイッターや身近な人の意見は様々でした。

先日、居酒屋で理系出身の友人とこの話題が出ました。

「学生時代を思い出すと、文系の連中ってほとんど勉強してなかったな」
「それでも大企業に就職した奴もいたし・・・勉強する意味ないよね」
「国立大学に文学部なんて必要?税金で昔の小説を勉強してどうするの?」

・・・と、こんなことを言っていました。文系出身の私ですが、友人の意見を終始うなずきながら聞いていました。

さて、人文系学部を廃止するのが「企業が求める人材を養成する」ために必要なのか、考えてみました。

しばらく考えているうちに、当の(?)企業側である経団連からの声明が出てきました。少し長いのですが、一部を紹介させていただきます。

1.人文社会科学を含む幅広い教育の重要性  2015年9月9日 一般社団法人 日本経済団体連合会

国立大学法人の第3期中期目標・中期計画に関し、6月8日付で発出された国立大学法人に対する文部科学大臣通知では、教員養成系学部・大学院や人文社会科学系学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める」としている。これを巡って、様々な議論が行なわれている。その中で、今回の通知は即戦力を有する人材を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材像は、その対極にある。

かねてより経団連は、数次にわたる提言において、理系・文系を問わず、基礎的な体力、公徳心に加え、幅広い教養、課題発見・解決力、外国語によるコミュニケーション能力、自らの考えや意見を論理的に発信する力などは欠くことができないと訴えている。これらを初等中等教育段階でしっかり身につけた上で、大学・大学院では、学生がそれぞれ志す専門分野の知識を修得するとともに、留学をはじめとする様々な体験活動を通じて、文化や社会の多様性を理解することが重要である。

また、地球的規模の課題を分野横断型の発想で解決できる人材が求められていることから、理工系専攻であっても、人文社会科学を含む幅広い分野の科目を学ぶことや、人文社会科学系専攻であっても、先端技術に深い関心を持ち、理数系の基礎的知識を身につけることも必要である。

ここには、産業界が必要とする人材像がわかりやすく表現されていると思います。 文化や社会の多様性を理解すること、文理を超えて関心を持ち知識を身につけること、つまり特定の分野に片寄らないアタマを持った人材を求めているわけです。

しかし残念ながら、現在の大学、特に文系の学部がそれに応えているとは言えません。一方、理系は少なくとも専門分野においては学生をしっかりと鍛えていることは確かです。大学の文系学部の改革は必要です。

では、すでに企業で働いている社員にとって「文化の多様性に関する理解や文理を超えた幅広い知識」は不要なのでしょうか。

またひとつ考えるべき大きな問題が、頭の中に居座ってしまいました。

(人材育成社)