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「ルーティン」を再認識

2015年09月23日 | コンサルティング

「私の仕事はルーティンワークばかりなので・・・面白みがないんです」

先日、研修終了後に一人の受講者から相談を受けた時に言われた言葉です。

「ルーティンワーク」というと、手順の決まった仕事で発想や企画の余地がなく、つまらない仕事というイメージでとらえる人が多いのではないでしょうか。

しかし、現在行われているラグビーのワールドカップ2015で、日本代表チームの南アフリカへの勝利に大きく貢献した五郎丸歩選手のキック前のあのポーズによって、「ルーティン」の意義が再認識されるのではないかと思っています。

もちろん同じ「ルーティン」と言っても、ビジネスとスポーツでは意味合いが少々異なります。

スポーツの「ルーティン」は「型にはめた一連の動作」と定義されており、決めた動作を毎回同じスピードと順番で行うことで集中力を高め、最大の結果を得ることへつなげていくものです。

つまり、一つ一つの動作の中で自分の筋肉や関節に向き合い、調子を確認する行為の中で、自分の精神を最高の状態に移行させていく。本番の試合でも、練習の時と同じ動きを行うことで、練習時のベストの状態にまで精神状態を誘導していくことです。

したがって、どういうルーティンを取り入れるのかは大変重要であり、一挙手一投足の動作は、メンタルコーチと共に丁寧に考えながら作り上げていくとのことです。

あのイチロー選手が打席に入る前に、毎回同じ動きをすることは有名ですが、私はこれまでこのような動作を単なる「ゲン担ぎ」のようなものなのではと思っていましたが、そんなに単純なものではないということですね。

一方、ビジネスの「ルーティン」は少し意味合いが異なります。

ビジネスにおいては、効率的でない仕事や生産性の低い仕事、また、トラブルが頻繁に起こってしまうような仕事ではルーティンを決めることによって、同一の成果が期待できるというメリットがあります。

例えば、作業の標準時間を決めたり、作業手順を決めたり、チェックリストなどを用いて仕事を進めること、つまりルーティン化することで、個人による差を極力減らすことができるのです。誰でも実践できて、同様の結果を出せて生産性の高い仕事になれば、組織にとっては非常に大きなメリットがあります。

しかし、その一方で冒頭の受講者の言葉のように、個人が関与できる部分が減ることにもなることから、仕事が機械的になり、その分面白みに欠けてしまうように感じられる面も否めないと思います。

このように、ビジネスにおいてはルーティンのメリットとデメリットの両方があるわけですが、これまではどちらかというと冒頭のように、言葉のイメージはあまりよくなかったように思います。

しかし、五郎丸選手のポーズをきっかけにして「ルーティン」への関心が高まることで、あらためてルーティンの意義やメリットが広く認識され、巡り巡ってビジネスにおけるルーティンの有効性も認識されていくような予感がしています。

ところで、今回の五郎丸選手のあのポーズ、まるでお願いをしているようで何となくかわいい感じがしませんか。しばらくは、子どもたちが真似をして(もしかすると、大人も職場などで「お願い」をする場合にも)流行りそうです。

(人材育成社)