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アンケートには記名欄を設けるか否か

2014年10月15日 | コンサルティング

「無記名式のアンケートにした方が良いのではないですか?」

研修終了後の受講者アンケートに、時々このような感想が書かれます。

「アンケートには記名欄を設けるか否か」は、古くて新しい議論です。

アンケートをとる目的や対象、その範囲によって、一概にどちらか一方が良いと断定できるものではないとは思いますが、私は研修アンケートに関しては記名をお願いしています。

研修の内容及び講師に対する受講者の感想は実にさまざまです。そもそも研修を受講する理由が人によりいろいろですし、研修テーマに関する受講者個々の知識や経験、スキルの量などによっても感じ方は異なるからです。

また、同じ人であっても、研修の開催時期によって研修に対する受け止め方や感想は変わってくると思います。忙しい時に自分で希望していない研修の受講を命じられれば、マイナスに感じることもあるでしょう。また、研修の内容や講師だけではなく、共に受講するメンバーの組み合わせによっても、研修後の感想は変わってくると思います。

いずれにしても、アンケートの中ではプラスの意見であってもマイナスの意見であっても、理由を具体的に示していただければ、それはとても貴重な情報になります。

マイナスと感じたのであれば、どの点について何が良くないと感じたのかを具体的に示してもらえれば、次回以降の研修の改善点が明確になるので、研修の発注側と講師側の双方にメリットがあるからです。

しかし、「記名でなければ本音で感想を書くけれど、記名をするのであれば本音では書けない」というような考え方による意見であれば、せっかくアンケートに書いていただいても、それを次に生かすことは難しいと考えています。

なぜなら、私のこれまでの経験では無記名のアンケートの場合は、「とりあえず出せばいいだろう」といった感じで、必ずしもしっかりと考えた上で意見を書いていないのではと感じる例が多いからです。

これは先日(10月8日)のブログで書いた「割れ窓理論」に通じるところです。

心理学者フィリップ・ジンバルドは、人が匿名状態にある時の行動特性を実験により検証(1969年)しています。「人は匿名性が保証されていたり、責任が分散される状態では自己規制意識が低下し、『没個性化』が生じる。その結果、情緒的・衝動的・非合理的行動が現われ、また周囲の人の行動に感染しやすくなる。」という結果を出しています。

例え我々講師にとって厳しい内容ではあっても、きちんと考えていただいた意見であればそれはもちろん大歓迎ですので、弊社では今後も記名式のアンケートを続けていきたいと思っています。

(人材育成社)