ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

「安行桜」 川口市

2012年09月27日 06時15分13秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物

安行はもう花盛りだった。前日に続いてめっきり春めいた10年3月14日(日)の植木の里、川口市安行。梅ではない。れっきとして桜である。あまり知られていないものの、県内一早咲きの「安行桜」が七分咲きで盛りを迎えようとしていた。

安行桜は、「安行寒桜」(大=おお=寒桜)ともいい、地元の沖田雄司氏が見つけて育てたもので「沖田桜」とも呼ばれる。普通の寒桜より花弁が大きく赤みを帯びていてあでやか、開花期は長い。染井吉野よりも早く咲く。

その中心地が60年前から植えている真言宗豊山派の古刹「密蔵院」。広大な境内や参道沿いにある約50本はあり、これを知る地元の人たちでにぎわっていた。

ヒヨドリが喜んで大挙して蜜を吸いに来ている。小さいのもいるので、望遠レンズ付きのカメラを構えている人に確かめたら、「メジロじゃない。確かにヒヨドリの子供だ」とのことだった。

日本の桜は、染井吉野一辺倒なので、こんな桜があるのはうれしい。知ったのは数年前で見に来たこともあるが、盛りに近いのを見たのは初めてだった。

ママチャリでの帰途、安行原の県道103号線(埼玉県花と緑の振興センターの前を通る)沿いの畑の中に、河津桜より遅いが、安行寒桜より早咲きの新種「谷古田(やこだ)桜」8本が満開になっているのを見た。まだ3mぐらいだが、その名は江戸時代にこの一帯が「谷古田」と呼ばれていたからだという。

朝日新聞の埼玉版で大きく伝えられているもので、桜研究家でもある「県花と緑振興センター」の関根家松所長が15年ほど前、地元で見つけ、植木業者の中山謙二郎さんと共同研究を進めている。農林水産省に品種登録申請を予定している。

花は下向きで、濃紅、沖縄の緋寒桜にそっくり。申請から認定まで通常2年ほどかかるとのことだが、安行から新しい桜が発信されるのが楽しみだ。

安行ではこの時期、桜の他、レンギョウやユキヤナギ、ヒュウガミズキなどの春の花が一斉に開こうとしており、ギンヨウアカシアは満開。見物の客も増えている。