ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

ナマズの里 吉川市

2011年07月18日 18時59分55秒 | 食べ物・飲み物 狭山茶 イチローズモルト 忠七めし・・・


吉川市と言ってもどこにあるのか知らない人が多いに違いない。同じ武蔵野線の駅の利用者で、乗れば20分ぐらいでいけるのに、これまで行ったこともなかった。

地図を見ると、現在、埼玉県出身としては最も有名な若手プロゴルファー、石川遼選手の出身地松伏町の南隣の市と言った方が分かりやすい。いずれも千葉県と境界を接しているので、埼玉県人より千葉県の野田や流山市の住民の方が馴染みが深い。

この市は、養殖ナマズで町おこしを図ろうとしている。食べたことがないので、いつか食べに出かけようと思っていた。11年7月17日、この市では、神輿の上げ方がちょっと変わった、4百年の歴史を誇る八坂神社の夏祭りがあるとのことで、猛暑の予想にもめげず出かけてみた。。

この市は広報に力を入れている。市のホームページを見れば、どこに行けばいいかよく分かる。便利である。

それと、私が注目していたのは、「サイクリング立県」を目指す埼玉県が、JR、東武、西武、秩父鉄道の協力で出している「レンタサイクルで気軽におでかけ!駅からチャリマップ」と題する小冊子である。

この中に、近くにレンタサイクルがある駅が載っていて、長瀞、秩父、川越、行田などに並んで、吉川も入っていたからだ。それも無料とあるから一度試してみない手はない。

市がやっている吉川駅北第一自転車駐車場で、観光用途に限られ、身分証明書があれば貸してくれる。地元の自転車店から寄贈された新品同様のもので、私がふだん乗っているものより、乗りやすい。

さっそく、小冊子の地図通りに走ってみる。この市は、西に中川、東に江戸川があり、平坦そのもの、埼玉県中、東部を代表するようなところだ。

万葉集の昔から早生米の産地として知られていたというのもうなずける。それが大きな団地や住宅地に変わっている。永田公園には、高さ16mの「よしかわ富士」があり、市内を見渡せ、天気が良ければ、富士山や筑波山も見える。

さて、ナマズ料理。レンタル駐車場で聞くと、一番歴史が古いのは、創業400年の料亭「糀家(こうじや)」。葛飾北斎や安藤広重などの肉筆や、有名画家の作品が廊下に展示されているという。

「料亭で昼食か」とちゅうちょしたものの、ランチメニューもあるとのことで、「ナマズ天ぷら御膳」とビールを注文した。早く行けば、広い料亭の入り口近い一室で一人で昼食を食べるのだから、悪い気はしない。

名物のナマズのたたき揚げのほか、ナマズ天ぷら、汁にはナマズのたたき、突き出しにはナマズの卵の煮付けが入っていた。

名物は、ナマズの身を包丁でたたき、味噌などを練りこみ、丸めて揚げる郷土料理だ。「フグよりうまい」と触れ込みのポン酢で食べるナマズの刺身もある。

北斎や広重の肉筆は、その上に別の絵がかかっていて、見えなかった。廊下の突き当たりにある谷文晁のなまず絵は、なるほどという作だ。

近藤勇や勝海舟、板垣退助のほか、戦後では佐藤栄作、福田康夫、中曽根康弘も来たそうだ。

中川沿いの料亭「福寿亭」には、“ナマズの天丼”ともいうべき「鯰丼」がある。

他にもナマズ料理を出す料亭や店は何軒もあり、駅の南口には、世界で一番大きい親子ナマズの金色のモニュメントがあり、「ナマズの里」をPRしている。親ナマズは、約5m。人間国宝の漆芸家の手になる。

ナマズの饅頭、最中、煎餅、サンドイッチに「なまず御前」という名の純米酒もあり、ナマズ尽くしのまちである。4月上旬には「吉川なまずの里マラソン」も行われる。

江戸時代初期には、「吉川に来て、ナマズ、ウナギ食わずなかれ」と言われるほど有名で、川魚料理を売り物にした料亭が軒を連ねていたという。

この市で出すナマズは市内で養殖しており、“地産地消”であるのが泣かせる。

八坂祭りの神輿かつぎは、単に担ぐだけでなく、一時放り上げたりする「あばれ神輿」と呼ばれるもので、中川の舟運でにぎわった往時をしのばせる。