全国一のペースで進む高齢化
さいたま市の、それも東京に最も近い南区に住んでいるため、毎朝、保育園のお散歩や、区役所の子育て支援センターで赤ちゃんの姿を多く見かけるので、「少子高齢化日本」の中でも埼玉県は例外で、「若く元気な県」だと思い込んでいた。
実際、05年の国勢調査では、「生産年齢人口(15-64歳)」を総人口で割った比率が69・4%と日本一高かった。05年には、県民一人当たりの国民医療費は全国一低かったのである。
2010年の国勢調査では、埼玉県の平均年齢は43・6歳。沖縄、愛知、滋賀、神奈川県に次いで47都道府県の中で5番目に若い県だった。
ところが、人口760万人(15年の国勢調査)の埼玉県で、高齢化が全国一のペースで進んでいるというから驚く。
若い頃、埼玉にどっと流入した「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が老人の仲間入りをしたためである。
埼玉県は東京に隣接している地理的条件から、東京都に近い市に、転入者から転出者を差し引いた「社会増」がプラスされる形で、人口増を続けてきた。
17年1月末発表の総務省の「人口移動報告」によると、16年の県内への転入者から県外転出者を差し引いた「転入超過数」は1万5560人と11年連続でプラス、東京都,千葉県に次いで3位。さいたま市が県内トップ、越谷、三郷、志木、草加など県南の市が続いている。さいたま市は8655人で、全国の市町村別でも、東京都特別区(23区)、大阪市、札幌市に次いで4位だった。
この転入超過に「自然増」が加わり、県人口は、1977年に500万人、87年に600万人、2002年に700万人を突破した。
ところが、近年、その伸びが鈍ってきた上、高齢者の伸び率が全国最高を記録していることが分かった。
総務省が14年4、6月に発表した人口推計と人口動態調査で確認されたもので、2013年10月1日時点の人口推計では、埼玉の65歳以上の人口は前年比で4.8%、75歳以上でも5.4%と、いずれも47都道府県で最も高い伸び率だった。65歳以上が総人口に占める割合は23.0%で、前年比1.0%上昇した。
14年10月1日時点の総務省人口推計では、65歳以上が173万人と総人口の24.0%(前年比1.0%増)、75歳以上が73万人と10.1%(前年の9%台から10%の大台に)を占め、その伸び率は4.6%、4.7%といずれも47都道府県で最も高かった。県民のざっと4人に1人が65歳を越えようとしているわけである。
10年の国勢調査で75歳以上の割合は8.2%で日本一、65歳以上に占める要介護(支援)認定者の割合(11年度末)も13.5%と日本一だった。
日本最高齢どころか世界最高齢で、ギネスワールドレコードの持ち主も14年6月以来、埼玉県人だったが、15年7月7日死亡した。さいたま市中央区の百井盛さん(112)で、1903(明治36)年福島県生まれ、約60年前から現在のさいたま市で暮らし、県立与野高校の校長などを務めた。
救いは、65歳以上の高齢者のスポーツ行動者率が58.2%(11年10月)と日本一であることである。スポーツで身体を動かす老人は健康だからだ
国勢調査に基づく人口推計は毎年発表される。県の65歳以上の増加率が全国で最高なのは、10年の国勢調査からすでに4年続いている。
総務省が16年10月26日発表した15年国勢調査の確定値によると、65歳以上の人口は、178万人と前回調査から22%増え、千葉、神奈川県を上回り、全国トップの増加率となった。総人口(約726万人)にしめる割合は24.8%と4.4ポイント上昇した。
これは突然起こった現象ではない。県の高齢者の増加率が全国一になるのは、予測されていたことだ。
12年3月末時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査(総務省)では、埼玉は東京、千葉とともに、初めて死亡者数が出生者数を上回る「自然減」に転じている。
「自然減」になれば、「社会増」がなければ、人口は増えない。
県内63市町村のうち43市町村で人口が減っていると確認されたのは、住民基本台帳に基づく総務省の人口動態調査(14年1月1日時点)である。
熊谷市の1143人を筆頭に、久喜市の819人が続き、春日部市や秩父市も700人規模で減少した。
戸田市や志木市など東京に近い県南部の市町を中心に20市町では人口が増えた。
県内への外国人の増加人数は3978人で、47都道府県で一番多かった。中国人、ベトナム人が主で川口市(1370人)が最も多かった。
川口市の外国人総数は2万2958人で、さいたま市を上回り県内で最も多かった。
JR京浜東北線蕨駅から徒歩約8分、蕨駅から東京駅まで30分の位置にある、川口市芝園町の都市再生機構(UR)の「芝園団地」では、約4500人の入居者のうち半数以上の2500人超が外国人。9割以上が中国人で、日本人は高齢者、中国人は子育て世帯が多い。
多文化共生の研究者や学生の協力で、「芝園ふるさと祭り」には中国人も参加、中国人の自治会員も徐々に増え、役員も誕生した(東京新聞)。東大や早慶大など8大学30人の学生や院生らが参加して、「芝園かけはしプロジェクト」が15年2月に発足。交流を進めている(朝日新聞)。
15年1月1日の人口動態調査では、県の総人口は前年比0.22%増の30万4896人。県内の外国人の人口は 6487人増の12万6719人になった。
県の日本人の人口は、自然増減は5329人と11年以来のマイナスなのに、転入者と転出者の差である「社会増減」がプラスで、全体として9561人増えた。
法務省のまとめでは、県内の外国人は11年以降増加し、15年末時点で13万9656人と、都道府県別で5番目に多い。国・地域別では150か国・地域から来ていて、最も多いのは中国の5万5716人で、フィリピン1万7820人、韓国人1万5548人が続いている。
秩父地方や北部を歩いていると、赤ちゃんの姿などまず見当たらず、人影も少ないのに気づく。道に迷っても人がいないので聞きようがない。商店街には閉まったままの店、農村部には廃屋が目に付くようになった。
国立社会保障・人口問題研究所が、10年の国勢調査を基に13年3月に発表した「地域別将来推計人口」によると、40年に埼玉県の人口は、90万人減って630万人になる。
65歳以上の割合は20%が35%。驚くべきは75歳以上の人口の絶対数で、埼玉と神奈川県は10年の2倍以上になる。
同研究所が14年4月に公表した「世帯数の将来推計(都道府県別)」では、35年には本件の75歳以上の独り暮らし世帯は22万3000世帯と、対10年比で35%増になり、全国で最高の増加率を示すという。
15年の国勢調査に基づく推計では、県内の75歳以上人口は45年に131万4000人まで増える。東京都、神奈川県、大阪府に次ぐ4番目の多さになり、増加率は1.70倍と沖縄県(1.75倍)に次ぐ高さだ。
法務省が19年4月12日発表した18年10月1日現在の人口推計によると、県の総人口は全国5位の733万人。75歳以上の人口は92万2000人と前年比5.5%増え、47都道府県で最も高い伸び率を示した。総人口に占める75歳以上の割合も12.6%に上り、15歳未満(12.2%)を上回った。
数字が多いので恐縮ながら、忘れてはならない埼玉県の深刻な人口動態である。