一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

704  女郎花立つに寝そべる男郎花   鉄之介 

2012年09月14日 | 

(おみなえし/たつにねそべる/おとこえし)

  オミナエシは、秋の七草の一つで、黄色の小花が密集していて、高原に咲いて美しい。しかし、花が終わると、その実には強い悪臭がある。オトコエシは、同型のやや大型で花は白く、咲き終わると同様の悪臭がある。そこでかわいそうに女郎、男郎といういかがわしい名がついた。

 さて、この句をそのまま読むと、女郎花は普通に咲いていて、男郎花は倒れていたとなる。これが事実だった、と言われたらそれまでだが、「寝そべる」が、作者が男女を意識しての選択だったことは読み取れる。

 この句の女郎花と男郎花をひっくり返して、「男郎花立つに寝そべる女郎花」とすれば、素直な表現になるのだが、わざとひっくり返した作者の意図は?

ハナシュクシャ(花縮砂) ショウガ科の半耐冬性球根草

別名 ジンジャー

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703  一人には余る三匹秋刀魚買う  

2012年09月13日 | 

(ひとりには/ あまるさんびき/ さんまかう) 

 スーパーに新秋刀魚が出ていた。小振りだが三匹入りのパック詰めしかなく、単品では売っていない。バラ売りで、好きなだけ買えるように何故しないのか。「面倒臭いんだろうな、全くしょうがない店だ」と呟きながら、それでも初物だから買うことにした。余った秋刀魚は、腹わたを取って煮付けておけばいいけれど、やはり焼くのが一番美味いのだ。

 そういえば以前、句会の月見の会で、わざわざ目黒から秋刀魚を買ってきて、炭火で焼いて食べたことがあった。アイデアを出すのも出す方、買って来るのも買ってくる方だ。「さあさあ、目黒の秋刀魚を食べてくれ!秋刀魚は目黒に限るよ!」

 クズ (葛)マメ科 つる 性の多年草、秋の七草の一つ

根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる

 

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702  ひぐらしやこの世のものと思われず

2012年09月12日 | 

  いつ誰が、この世以外の「あの世」を考え付いたのだろうか。一口に「あの世」と言っても、生まれる前の「前世」と死後の「来世」があるが、二つは別物なのだろうか、それとも一つなのだろうか。又、来世にも「地獄」やら「天国」やら色々あるようだ。「輪廻転生」は、あの世とこの世を行ったり来たりする自由な考え方だ。

 あの世なんて信じていない私が、自分で作ってなんだが、世の中にこの世のものと思われず、どこか別の世界からやって来たのではないか、と思われるものに、「ヒグラシ・蜩」と「カンタン・邯鄲」がある。共通点は、共に秋の虫であり、鳴き声である。

 カンタン(邯鄲)に関しては、「邯鄲の夢と思わば別れ難し」も参考にご覧下さい。

オトコエシ(男郎花) オミナエシ科 オミナエシ属

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701  来世も人口過多や秋彼岸   孝子

2012年09月11日 | 

 

 この句のお陰で、猿人が生まれたのはアフリカで、およそ100万年前。新人が生まれたのがおよそ10万年前と言われているが、以来この世に累計何人の人間が生まれ、あの世に逝ったのだろうか、などというつまらぬことを考えてしまった。

 およそ世界の人口は、4,500年前で1億人、2,000年前で2億人、1,000年前で3億人、200年前で10億人、100年前で20億人、その後あれよあれよで現在が70億人、

そこで累計を計算すると、一説によると200億人、又は750億人、1,300億人という説もある。どうしてそんなに違うのか。累計計算の元になるデータが、それぞれ異なるからだろう。

 今、核戦争で人類が滅亡したと仮定すると、200億説ならば、3人に一人は私と一緒に死んだ70億の現代人ということになる。

 「私が死んだら、先に逝った愛しい夫に、あの世で会えるだろうか。数百億人の中から、夫を探し出し巡り合うのは、至難の業かもしれない・・・・・・などというつまらぬ心配をするのは、作者以外にも結構いるかもしれない。

ツリガネニンジン(釣鐘人参) キキョウ科の多年草。

ツリガネソウ、フウリンソウ(風鈴草)、チョウチンバナ(提灯花)ともいう。

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700  国会のデモを見ている月とわれ   佳津

2012年09月10日 | 

 毎週行われている原発反対のデモが、数万人の規模になっているらしい。歩道を歩いているデモ隊をむりやり警察が制止するので、後ろのデモ隊が津波のように次々と押し寄せて来るから、車道に溢れざるを得ない。それを警察が厳しく取り締まる、という映像(←クリックすると見ることができます)があった。少数ではあるが、公務執行妨害で逮捕者も出ているらしい。

「いたたまれなくて福島からやって来ました」という女性もいて、心ある人々がどうやら全国からデモに参加しているらしい。

 核燃料廃棄物の最終処分場さえ決まらないのに、見切り発車で原発を稼働したのは、いったいどこの誰が中心になって行われたのだろうか。自民党政権時代に行われた、ぐらいしか知識しかないが、これは犯罪として厳しく糾弾すべき問題ではないか。

 少なくとも当時の稼働推進の当事者は、大いに責任を感じてもらわなくてはならないが、一体どこの誰の責任なのか、それを問う声さえさっぱり聞こえない。

ススキ(芒、薄)イネ科ススキ属の多年生草本 、萱(かや)、尾花とも

秋の七草(葛、萩、桔梗、女郎花、芒、撫子、藤袴)の一つ

(くず、はぎ、ききょう/おみなえし/すすき、なでしこ/ふじばかま)

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699 様よりもさんと呼び欲し秋医局  さくら

2012年09月09日 | 

 病院で「だれそれ様」と呼ばれると、自分が医者の金儲けのための「お客様」として呼ばれているように感じる。医者が奥でにやにや笑っているように、自分が馬鹿にされているように感じる。「さん」で呼ばれると、そういういやらしさが感じられない、ということか。

  最近、市内の温泉病院が、健康保険の不正受給で摘発され、その結果閉鎖に追い込まれた。こういうことが頻繁に続く限り、私達市民の病院への不信は消えないだろう。たった一つの病院の不始末が、全国全ての病院の不信につながるのだから、その罪は深い。

コマツナギ 【駒繋】 マメ科の草状小低木。

名は、茎がじょうぶで駒(馬のこと)をつなげるほどであるという意味とも、

馬が好んで食べるからだ、ともいわれる

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698  火葬場に煙突見えず街残暑   多可

2012年09月08日 | 

 都会の、まして最近の街中の火葬場には、たぶん煙突はないだろう。防臭、無煙装置が完備していて、二酸化炭素以外は99,99%吸着されて排出されるだろう。いや二酸化炭素さえ出さないかもしれない。

 火葬場の建物は、高級ホテル並みの大理石などを使った室内装飾で、焼却炉の扉が閉まっていれば、ホテルのロビーと間違えるかもしれない。

 いづれにしても、戦後の高度経済成長と近代科学の進歩によってもたらされた、浅墓な産物だ。

サルスベリ(百日紅=ヒャクジツコウ)は、ミソハギ科の落葉中 高木

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697  どことなく新涼といふ身のこなし  かつ子

2012年09月07日 | 

 「何故この句がいいか」と問われたら、説明に戸惑ってしまう。例えば、この句の人物が誰だかさっぱりわからないからだ。男か女か、大人か子供か、 家族の誰かかもしれないし、・・・・・

茶道や能の所作かもしれないし、買い物客や店員かもしれないし、公園を歩く二人かもしれないし、屋外か室内か・・・・・「身のこなし」だって、ゆっくりなのか、てきぱきなのか・・・・・・

 こんなにぼかされてしまうと、様々なイメージがありすぎて、私にはかえって、ある特定の状況を限定できないのだ。だから、「何故いいか」と問われても、「どことなくいい」としか言いようがない。

結局、この句の「どことなく」という言葉に、まんまと騙されたような気がする。

コバギボウシ(小葉擬宝珠)  リュウゼツラン亜科ギボウシ属の 多年草

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696 鴫立つてあと淋しさの夜明けかな  久子

2012年09月06日 | 

(しぎたって あとさみしさの よあけかな)


 吉田松陰入獄の野山獄に、高須久子という女囚がいた。彼女は姦淫の罪によって入牢している美しい人だったそうである。当時「委託刑」という刑があり、久子は一族の依頼によって獄に押し込められていて、食費その他の経費は一族が拠出していた。

 松陰出獄の時、他の十一人が、若い松陰のために送別句会を催した。掲句は、その時の久子の句で、鴫(しぎ)は松陰の俳号、子義と掛けている。

 獄中ではあるが、松陰にとって唯一の淡い恋と言えそうである。

カヤツリグサ(蚊帳吊草、莎草) カヤツリグサカヤツリグサ属の一年生植物。

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695  図らずも木の葉を散らす秋の風  子義

2012年09月05日 | 

 「子義」は、吉田松陰の俳号。ペリー来航に際して、松陰は黒船への乗船、アメリカへの密航を企て失敗し、萩藩(長州藩)の野山獄に繋がれた。

 ここに、在獄五年の吉村善作という俳句のできる男がいて、松陰は「以前から自分は俳句を学びたい、と思いながらその機会がなかった。吉村殿がおられるのを幸いに師事したい」と申し出て、他の囚人と共に吉村の弟子になり、獄中句会を開くことになったのである。掲句は、松陰の習い始めの句である。

 「木の葉」「落葉」と言えば冬の季語であるが、秋にして欲しい季語である。何故なら、先日から我が家のテラスは、秋風によって山桜の木の葉が降り始めたからだ。

 さて、この句の「図らずも」に松陰の苦悩が読み取れる。世は変わらねばならないのに、藩や幕府などは旧態然としている。木の葉が散るように世の中、私の思うようにはならぬ。

マツヨイグサ(待宵草) アカバナ科の二年草

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694  底紅や風雲急に天気雨

2012年09月04日 | 

(そこべにや ふううんきゅうに てんきあめ) 

 秋の季語の「底紅」とは、ムクゲ(槿、木槿)の白の花の底が赤いから命名された。千利休の孫の宗旦が特に好んだので「宗旦ムクゲ」とも呼ばれている。

 夏の季語の「天気雨」は、室町時代に「細照雨、そばえ」という同義の言葉が存在する。「日照雨」とも書く。又、「晴れて雨が降る時、狐の嫁入りがある」という俗信から「狐の嫁入り」とも言う。

 黒雲がにわかに現れ、天気雨を降らせて去った。晴れて暖まっていた大地から湯気が上がっていた。それから、一変に涼しくなった。これこそ濃厚な秋の気配だ。

マルバダケブキ(丸葉岳蕗 ) キク科メタカラコウ属の多年草

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693  ボーイさんブルームーンをお願いね   ひまわり

2012年09月03日 | 

①   「ブルームーン」とは、青く見える月のことで、火山の噴火や隕石の落下などによるガスや塵の影響によって、ごく稀に月が青く見える現象を言うそうだ。しかし、青い月を見ることは、非常に困難であるため、ブルームーンは「決してあり得ないこと」を意味するようになったと言う。

②   今月は、満月が2回ある。9月1日と30日である。この二回目をブルームーンと呼ぶそうである。つまり、今年の十五夜はブルームーンであって、見た人は幸せになるそうである。

③   「ブルームーン」という青い薔薇があるそうだ。

④   「ブルームーン」というカクテルがある。ドライジン、バイオレット、レモンジュースを混ぜたものだそうだ。

  さて世の男性諸君、結論である。知らなかったブルームーンを調べて、以上の4つが分かった。つまりこの句、男に誘われてナイトクラブに行ったのだが、彼女がブルームーンを注文したということは、「あなたとのお付き合いはあり得ないこと、今日限りでお断りします」という意味なのです。

コガンピ(小雁皮)   ジンチョウゲ科ガンピ属

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692  望遠にスカイツリーや震災忌

2012年09月02日 | 

 震災忌の震災とは、関東大震災のこと。89年前の大正12年9月1日、午前11時58分。震源地は三浦半島西方沖一帯。M7.9。190万人が被災、死者10万5千人。

  「ここから横浜ランドマークタワーが見えるなら、スカイツリーも見えるはずじゃないか」と友人が言うので、そうかなあと疑問に思いながらも、双眼鏡を覗いてみると、どうやらそれらしきものが確かに見えるのだ。台風の去った後や、木枯が吹いた後でないと正確には確認できないが、ほぼ間違いないようだ。

 スカイツリーが見えたからって、別にどうということはないが、その前にある三浦半島がはっきり見えて、その手前あたりの海底が震源域だとすると、今度起きるかもしれない神奈川県西部地震は、間違いなく震度6以上になるだろう。ああ、おそろしや。

キョウチクトウ(キョウチクトウ科キョウチクトウ属)

 

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691  ひやひやと陽水のこゑ裏返る   美紗

2012年09月01日 | 

 陽水とは、たぶん「井上陽水」のことだろう。井上陽水がどんな曲に裏声を使うか、考えたこともなかった。そこで色々調べてみると、そういう歌は意外に少なく「夢の中へ」くらいだった。

 彼の詩がユニークで支離滅裂なのは、ボブ・ディランから学んだそうである。勿論、その支離滅裂は、曲に難解と深みをもたらし、聞く者に混乱とともに感動を与えるのである。

 ところでこの句の作者は、井上陽水の歌の中の裏返る声をどんな気持ちで受けとっているのだろうか。その答は、季語の「ひやひや」にある。

オミナエシ(女郎花 )合弁花類オミナエシオミナエシ属 の 多年生植物

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