漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「耑タン」<長老・シャーマン>と「端タン」「湍タン」「猯タン」「揣シ」「瑞ズイ」「惴ズイ」「喘ゼン」

2023年12月13日 | 漢字の音符
 タン  而部


 上は耑タン、下は而音符「而へ)
解字 金文・篆文とも、「斜めの山形(長髪)+而(あごひげ)」の象形。長髪で、あごひげのある長老をあらわす。端の古字とされており、端には巫覡フゲキ(神と人の媒介者)の意味があり、古代において長老はまた、神託を告げるシャーマンでもあった。
意味 端の古字。長老・シャーマン。はし(=端)。

イメージ 
 「長老・シャーマン」
(端・瑞・湍・揣)
 「形声字」(喘・湍・猯)
音の変化  タン:端・湍・猯  シ:揣  ズイ:瑞・惴  ゼン:喘

長老・シャーマン
 タン・はし・は・はた  立部
解字 「立(立つ)+耑(長老)」 の会意形声。一族の長老が立ったさま。長老は「きちんとしている」、長老の坐る席は一番奥にあるので「はし・すえ」、長老から話を始めるので「はじめ・いとぐち」の意味を持つ[字統を参考]。中国で端公はシャーマンの意味がある。
意味 (1)ただしい。きちんとしている。「端正タンセイ」「端厳タンゲン」「端座タンザ」(姿勢を正してすわる。=端坐) (2)はし(端)。すえ。はた(端)。は(端)。「先端センタン」「端末タンマツ」「舌端ゼッタン」(舌のさき。転じて、口先。もの言い)「端境期はざかいき」(境のはし・はた。果物・野菜などが市場に出回らなくなる時期) (3)はじめ。いとぐち。はな(端)。「端緒タンチョ」「発端ホッタン」 (4)[はし(端)の派生義]はんぱ。はした。「端数はスウ」 (5)[中国]四川省および漢水一帯では巫覡フゲキ(神と人との感応の媒介をする者)の活動が盛んだった。「端公タンコウ」(シャーマン。神と人との媒介者)
 中国のシャーマン「端公」
 ズイ・しるし・みず  王部
解字 「王(=玉。たま)+耑(長老・シャーマン)」 の会意。シャーマンが用いる玉。シャーマンがこの玉を見て、兆しを占うこと。よい兆しを瑞という。めでたいしるしの意。
意味 (1)しるし(瑞)。めでたいしるし。「瑞雲ズイウン」(めでたい兆しの雲)「瑞祥ズイショウ」(めでたいことの起きるきざし=祥瑞) (2)[国]みず(瑞)。みずみずしい。他の語頭に付いて、美しい・清らかな意を表す。「瑞穂みずほ」(みずみずしいイネの穂)「瑞穂国みずほのくに」(日本の美称)
 ズイ・おそれる  忄部
解字 「忄(心)+耑(長老・シャーマン)」 の会意。瑞ズイはシャーマンが玉を見てよい兆しをえること。惴ズイは悪い兆しをみて、心でおそれること。
意味 おそれる(惴れる)。びくびくする。「惴惴ズイズイ」(恐れおののく)「惴慄ズイリツ」(おそれおののく)
 シ・スイ・はかる  扌部
解字 「扌(手)+耑(長老・シャーマン)」 の会意。瑞ズイはシャーマンが玉を見てよい兆しをえること。揣は、シャーマンが玉を手にとって、兆しをさぐること。
意味 はかる(揣る)。おしはかる。「揣摩臆測シマオクソク」(物事をあれこれと勝手に推測すること。あてずいりょう。)「揣知シチ」(おしはかって知る)「揣度シタク」(人の気持ちをおしはかる。≒忖度ソンタク) 

形声字
 ゼン・あえぐ・せき  口部
解字 「口(くち)+耑(タン⇒ゼン)」の形声。ゼンは息を吸うときの擬声語。速く息を吸い込んで出すとき、ゼイゼイと口からでる音を表す。
意味 (1)あえぐ(喘ぐ)。いきぎれする。 (2)せき(喘)。ぜいぜいする。せきこむ。「喘息ゼンソク」(激しい喘が出て呼吸困難になる病気)
 タン・はやい  氵部  
解字 「氵(水)+耑(タン)」の形声。タンは、灘タン(なだ・はやせ)に通じ、急流をいう。
意味 はやい(湍い)。はやせ。急流。「湍流タンリュウ」(早瀬。奔流)「急湍キュウタン」(急れの速い浅瀬)「飛湍ヒタン」(流れの激しい瀬)
猯[貒] タン・まみ  犭部
解字 「犭(けもの)+耑(タン)」の形声。タンという名のけもので、アナグマをいう。貒タンは異体字。梁の543年成立の[玉篇]は「野豬のいのしし」と書いているが、イノシシと似たところがあるが、牙がない。

アナグマ(「野毛山動物園 夏のアナグマ」より)
意味 (1)まみ(猯・貒)。アナグマ。イタチ科の哺乳類でタヌキに似るが、四肢が短く頑丈で爪が大きい。穴居生活をする。日本語の「まみ」はアナグマの異称。語源は、目見(まみ)で目をあげて見る目ツキ、目もとのこと。アナグマやタヌキは目のまわりが黒っぽいことから目ツキ・目もとを意味する「まみ」の名で呼ばれた。 (2)地名。「東猯穴ひがしまみあな」(茨城県牛久市の町名)※「狸穴まみあな」は本来アナグマの穴を言ったが、のちに狸の字が当てられた。
<紫色は常用漢字>

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