漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「斤キン」<おの>と「近キン」「祈キ」「匠ショウ」「兵ヘイ」

2022年01月22日 | 漢字の音符
  キン・ちょうなを追加しました。
 キン・おの  斤部       

解字 「ちょうな」と呼ばれる手斧の形の象形。甲骨文は可から口をとった丁と形が似ており、曲がった木の先に石斧を付けたかたちと思われる。金文から形が変化し、現代字は斤になった。また、斧は、はかりの分銅に用いて物の重さをはかったため、目方の単位となった。斤が音符となる時、斧の刃を「ちかづける」イメージを持つ。
 おの(検索サイトから)
意味 (1)おの(斤)。ておの。「斧斤フキン」(おの) (2)重さの単位。1斤は500グラム(現代中国)。「斤量キンリョウ」(目方)

イメージ 
 「おの」
(斤・兵・匠・釿)
 オノを「ちかづける」(近・圻・祈・芹)
 「形声字」(欣・忻・听・沂・鋲)
音の変化  キン:斤・釿・近・芹・欣・忻・听  キ:祈・圻  ギ:沂  ショウ:匠  ヘイ:兵  びょう:鋲

お の
 ヘイ・ヒョウ・つわもの  ハ部 

解字 甲骨文から篆文まで、「斤(おの)+両手」の会意。武器として使う斤を両手で持つさま。現代字では両手が「一+ハ」に変化した。漢字検索のための部首は「ハ」だが、成立ちとは関係ない。
意味 (1)つわもの(兵)。軍人。「兵士ヘイシ」「挙兵キョヘイ」 (2)武器。「兵器ヘイキ」 (3)いくさ。戦争。「兵法ヘイホウ」「兵火ヘイカ」「兵糧ヒョウロウ
 ショウ・たくみ  匚部
解字 「匚(はこ)+斤(おの)」の会意。箱に大工道具の斤を入れる大工。
意味 (1)たくみ(匠)。大工や指物師のこと。 (2)手細工をする職人。「石匠セキショウ」 (3)技芸の巧みな人。「巨匠キョショウ」「宗匠ソウショウ」「名匠メイショウ」 (4)装飾的なデザイン。「意匠イショウ
 キン・ちょうな  金部
解字 「金(金属)+斤(おの)」の会意。斤(おの)に金属をつけて金属製のオノ(斤)であることを確認した字。
意味 (1)ちょうな(釿)。おの(釿)。ておの。「釿鋸キンキョ」(手斧とノコギリ) (2)きる(釿る)。たつ(釿つ)。たちきる。

ちかづく
 キン・ちかい  辶部
解字 「辶(ゆく)+斤(ちかづく)」の会意形声。そばに近寄る意。
意味 (1)ちかい(近い)。「近接キンセツ」「近隣キンリン」 (2)時間がちかい。「近況キンキョウ」「近来キンライ」(ちかごろ) (3)にている。「近似キンジ」 (4)身近。「近親キンシン
 キ  土部
解字 「土(土地)+斤(=近。ちかい)」の会意形声。都に近い土地で、方千里(=畿)をいう。
意味 (1)王城の方千里をいい、王畿オウキ(王城から四方へ500里、すなわち方千里)のこと。「圻父キホ」(王畿を警備する司馬職)「圻田キデン」(王領地)「圻内キナイ」(王畿の内) (2)へり。さかい。かぎり。「圻界キカイ」(境界)
 キ・いのる  ネ部
解字 旧字は「示(祭壇)+斤(ちかづく)」の会意形声。祭壇に近づいて神に祈ること。新字体は示⇒ネに変化する。
意味 いのる(祈る)。いのり(祈り)。「祈念キネン」「祈雨キウ」「祈年キネン」(その年の豊作を祈る)
 キン・せり  艸部
解字 「艸(くさ)+斤(ちかい)」の形声。田の畔・湿地に自生する草で、水辺の近くで生える草の意。日本ではセリをいう。中国ではキンサイ(セロリに似たセリ科の植物)をいう。
意味 せり(芹)。セリ科の多年草。春の七草のひとつ。水辺の近くで生える草の意で、中国では水芹と書く。「献芹ケンキン」(つまらない野草のセリを差し上げる意で、物を贈ることをへりくだっていう語)「和蘭芹オランダゼリ・パセリ

形声字
 キン・ゴン・よろこぶ  欠部
解字 「欠(人が口をあける)+斤(キン)」の形声。キンは喜キ(よろこぶ)に通じ、口をあけて喜ぶさま。キはキンの語尾が消えた音で、斤キンに祈の音がある。[説文解字]は「笑い喜ぶ也(なり)。欠に従い斤の聲(声)。発音は許斤切(キン)」とする。
意味 よろこぶ(欣ぶ)。たのしむ。「欣然キンゼン」(よろこんで行うさま)「欣喜キンキ」(大喜びする)「欣喜雀躍キンキジャクヤク」(雀がおどるように喜ぶ)「欣求ゴング」(喜んで仏の道を求める)「欣求浄土ゴングジョウド」(喜んで浄土にゆくことを求める)
 キン・よろこぶ  忄部
解字 「忄(こころ)+斤(=欣。よろこぶ)」の形声。心でよろこぶこと。欣キンと通用する。
意味 よろこぶ(忻ぶ)。たのしむ。「忻然キンゼン」(こころよろこぶ)「忻慕キンボ」(よろこびしたう)
 キン・わらう・ポンド  口部
解字 「口(くち)+斤(=欣。よろこぶ)」の形声。よろこんで口から声をだすこと。転じて、わらう意となる。日本ではポンドの意味で使う。
意味 (1)わらう(听う)。「听然キンゼン」(大いにわらうさま) (2)きく。聴チョウの俗字。現代中国でも簡体字で、聴く意味になっている。 (3)日本では「口(くちまね)+斤(1斤の重さ)」で、1斤の重さに当たる英語を口真似する意で、ポンド(pound)をいう。1ポンドは453グラム。
 ギ・キ・ギン  氵部
解字 「氵(みずの流れ)+斤(キン⇒ギ)」の形声。ギという名の川。また、川のふち・ほとりの意味がある。
意味 (1)川の名。「沂水ギスイ」(山東省に源を発し、泗水に注ぐ川。沂河とも) (2)地名「臨沂リンギ」(沂河が市内を流れる市。山東省内で最も面積が広く人口も最大で、1,101万人(2020年)。歴史が古く新中国建国後の十大発見の一つと呼ばれる孫子竹簡が出土した銀雀ギンジャク山漢墓があることで知られる。 (3)川のふち。ほとり。きし。「鴨沂オウキ高校」(京都の鴨川の沂(ほとり)にある府立高校)
<国字> びょう  金部
解字 「金+兵(ビョウ)」の形声。ビョウと言う頭の大きな金属のくぎ。室町末期の国語辞書である伊京集に「鋲」を「金平(これで一字)」と表記していることから、ビョウ(平:たいら)に通じ、頭が平らで大きな釘の意。
意味 頭の大きな釘(くぎ)。リベット。おしぴん。「画鋲がびょう」「鋲打ち機びょううちき
<紫色は常用漢字>

参考 キンは部首「斤おの・きん」になる。漢字の右辺(旁)や下部に付いて、①おの、②おのを持つ行動、などを表す。常用漢字で5字。約14,600字を収録する『新漢語林』では22字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 5字
 キン・おの(部首)
 ザン・きる(斤+車の会意)
 シン・あたらしい(斤+音符「亲シン」)
 セキ・しりぞける(斤を含む会意) 
 ダン・たつ(斤を含む会意)
常用漢字以外
 シ・これ(斤+其の会意)
 フ・おの(斤+音符「父フ」)ほか 
 ※なお、斤キン・新シン・斬ザン・斥セキ・斯シ、は音符になる。

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

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