漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「容ヨウ」<とりいれる> と「溶ヨウ」

2021年04月20日 | 漢字の音符
  容の解字をやり直しました。
 ヨウ・いれる・かたち  宀部

解字 甲骨文は「冂(建物)+Λ(入口)+口(くち)」の会意。「冂(建物)+Λ(入口)」は建物の入り口を入った内側の意で、甲骨文字で「内」を意味するが、十干(甲・乙・丙~)の丙ヘイに仮借(当て字)されている[甲骨文字辞典]。それに口(いりぐち)がつき、建物の内側に口(いりぐち)から物を取り入れる形で、中にいれる意となる。(しかし[甲骨文字辞典]はこの字形を収録していない。字形は[漢語古文字字形表][字統]から)。金文は建物がΛ、入り口がハ、口が〇になった。そして戦国(秦)で、「宀+ハ+〇」になったが、篆文(説文解字)で、「宀+ハ+ハ+口」になり現在の字形に近くなった。現在の楷書は、「宀(たてもの)+谷」の形だが、この谷は「たに」の意味ではない。
 容の意味は、建物の内側に口からとりいれる意、とりいれた中味、このほか、入っている物の外側のかたち・すがたの意となる。
意味 (1)いれる(容れる)。とりこむ。「収容シュウヨウ」「包容ホウヨウ」 (2)いれるのを許す。「許容キョヨウ」 (3)いれた中身。中に入っているもの。「内容ナイヨウ」 (4)(とり入れて入っている物の外側の)かたち(容)。すがた。「容姿ヨウシ」「陣容ジンヨウ」 (5)たやすい。「容易ヨウイ

イメージ 
 「とりいれる」
(容・溶・熔・鎔・榕)
 容の意味(4)の「すがた」(蓉)
音の変化  ヨウ:容・溶・熔・鎔・榕・蓉

とりいれる
 ヨウ・とける・とかす・とく  氵部
解字  「氵(みず)+容(とりいれる)」 の会意形声。水のなかに物がとけること。
意味 (1)とける(溶ける)。水にとける。とかす(溶かす)。とく(溶く)。「溶液ヨウエキ」「溶解ヨウカイ」「水溶性スイヨウセイ」 (2)熱で固体が液状になる。「溶岩ヨウガン」「溶接ヨウセツ」「溶融ヨウユウ」 (3)水の流れのさかんなさま。「溶溢ヨウイツ」(あふれること)
 ヨウ・とける  火部
解字 「火(ひ)+容(=溶。とける)」 の会意形声。火で熱せられて金属などが溶けること。常用漢字でないため、溶に書き換えることが多い。
意味 とける(熔ける)。とかす(熔かす)。「熔解ヨウカイ」(=溶解)「熔接ヨウセツ」(=溶接)
 ヨウ・とかす・とける   金部
解字 「金(金属)+容(=溶。とける)」の会意形声。金属が溶けること。
意味 (1)とかす(鎔かす)。とける(鎔ける)。金属を熱してとかす。金属がとける。「鎔鋳ヨウチュウ」(金属を鎔かして鋳造する) (2)いがた(鎔)。「鎔型ヨウケイ」(いがた)「鎔範ヨウハン」(①金属を鎔かして鋳型にいれる。②いがた)
 ヨウ・あこう  木部 
 アコウ果実の内部  
解字 「木(き)+容(とりいれる⇒とりこむ)」 の会意形声。イチジクのように実の中に花をつけるので、花を実の中にとりいれている木のこと。また、実は鳥やサルの餌となり、糞にまざった種子は木の上で発芽して繁茂し、気根を垂らして元の樹木にまつわりつく。気根が地面に達するとどんどん太くなり、元になった木は気根に囲まれて(とりこまれて)枯れてゆく。そこで、元の樹木をとりこんでしまう木の意で、絞め殺しの木ともいわれる。
意味 あこう(榕)。アコギ。赤榕あこうとも書く。クワ科イチジク属の常緑高木。「榕樹ヨウジュ・ガジュマル」(クワ科の常緑高木。熱帯・亜熱帯に生え、幹・枝はよく分枝して多数の気根をたれて地面に達すると幹になり成長する)

すがた
 ヨウ  艸部
解字 「艸(草)+容(すがた)」 の会意形声。すがた(容姿)の美しい花をつける草木。
意味 「芙蓉フヨウ」に使われる字。芙蓉とは、大きく美しい花をつける草の意で、①ハスの花の別称。美人のたとえ。②アオイ科の落葉低木。大形の一日花を開く。鑑賞用。「木芙蓉モクフヨウ」③「芙蓉峰フヨウホウ」とは、富士山の雅称。
<紫色は常用漢字>

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