漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「肙ケン」<まるく細長い虫>と「絹ケン」「羂ケン」「鵑ケン」「捐エン」

2020年11月16日 | 漢字の音符
 エン・ケン  月部にく         

解字 「口(まるい)+月(からだ)」の会意。まるくて細長い芋虫の形を表わし、蜎の原字。「まるく細長い虫」のイメージを持つ。
意味 (1)小さく細長い虫。(2)うごく。(3)ぼうふら

イメージ  
 「まるく細長い虫」
(蜎・絹・羂・捐)
 「細長い・ちいさい」(娟・鵑・狷)
音の変化  ケン:絹・羂・娟・鵑・狷  エン:蜎・捐  

まるく細長い虫
 エン・ケン  虫部
解字 「虫(むし)+肙(まるく細長い虫)」の会意形声。虫をつけてもとの意味を強めた。いもむしがくねるさまをいう。ボウフラの意もある。また、娟ケンと通じ、美しい意でも使われる。
意味 (1)いもむしのはうさま。屈曲する。「蜎蜎エンエン」(いもむしの動くさま) (2)ぼうふら。蚊の幼虫。 (3)美しい。「蟬蜎センケン」(あでやかで美しい=嬋娟)
 ケン・きぬ  糸部
解字 「糸(いと)+肙(まるく細長い虫=かいこ)」の会意形声。肙はここでは蚕。絹は蚕が作った繭まゆからできる絹糸をいう。
意味 きぬ(絹)。きぬいと(絹糸)。また、絹糸の織物。「絹織物きぬおりもの」「絹布ケンプ」「絹本ケンポン」(絹の布に書いた文字や絵画)「人絹ジンケン」(人造絹糸の略)
 ケン  罒部よこめ
解字 「罒=网(あみ)+絹(絹糸)」の会意形声。絹糸で編んだ網。
意味 (1)わな。あみ。「羂索ケンサク・ケンザク」(①羂はあみ、索はつなの意で、網をつないで張った獲物を捕らえるわな。②[仏]衆生を救うために用いる五色の糸をより合わせてつくった縄。衆生救済の象徴とされ、不動明王・千手観音・不空羂索観音などがこれを持つ) (2)くくる。つなぐ。
 エン・すてる  扌部
解字 「扌(て)+肙(まるく細長い虫)」の会意形声。肙はここで芋虫やボウフラなどの役立たない虫のこと。これらの虫を手ですてること。
意味 (1)すてる(捐てる)。「捐棄エンキ」(すてる。捐も棄も、すてる意)「捐身エンシン」(身をすてる)「捐命エンメイ」(命をすてる) (2)さしだす。寄付する。「義捐金ギエンキン」(慈善・災害救助などのため寄付したお金。義援金とも書く) (3)清朝末期の税金の一種。「戸捐コエン」(家屋税)「房捐ボウエン」(家屋税)

細長い・ちいさい
 ケン・エン・うつくしい  女部
解字 「女(おんな)+肙(細長い)」の会意形声。すらっとした美しい女。
意味 うつくしい。しなやか。「娟秀ケンシュウ」(しなやかですぐれる)「娟雅ケンガ」(しなやかでみやびな美しさ)「嬋娟センケン」(あでやかで美しい)
 ケン  鳥部
 ホトトギス
解字 「鳥(とり)+肙(細長い)」の形声。細長くすらっとした鳥のホトトギス。
意味 「杜鵑トケン」とはホトトギスの意。中国・戦国時代の蜀の杜宇(望帝)が不品行により帝位を逐われ、魂が化してこの鳥になったという伝説から杜鵑トケンという。「杜鵑花トケンカ」(サツキツツジの別称・ホトトギスが鳴く頃に咲く花の意。
 ケン  犭部
解字 「犭(いぬ)+肙(ちいさい)」の会意形声。犭(いぬ)は、ここで犬のような人の意で評価の低い人物をさす。狷ケンは、心の小さく狭い人を意味し、頑固・片意地などの意となる。
意味 (1)心が狭い。気が短い。「狷急ケンキュウ」(度量が狭く気が短い)「狷狭ケンキョウ」(度量が狭い)「狭狷キョウケン」(理想に走りかたくなななこと[論語・子路]) (2)がんこ(頑固)。片意地な。「狷介ケンカイ」(かたく自己をまもり協調性にとぼしい。介は、かたい意)「狷介孤高ケンカイココウ」(かたく自己の意思を守り、他人と和合しない)「狷介固陋ケンカイコロウ」(かたく自己の意思を守り、新しいものを受け入れないこと)
<紫色は常用漢字>



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