漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「可カ」<斧のまがった柄とその発音・カ>「歌カ」「苛カ」「河カ」「何カ」「荷カ」

2015年10月17日 | 漢字の音符
 増補改訂しました。
 カ・よい・べし  口部
石斧を装着した曲がった木の柄

解字 甲骨文字は、「口(くち)+丁(斧の柄にするまがった木)」の形声。丁(丁テイとは別の字)は、斧の柄にする木製の曲がった木。可は、この曲がった柄の発音である「カ」を口から出す形であり、カの音を表す。カの音は、漢字ができる前から肯定を表す意味で使われており、「可」の字でこの意味を「仮借カシャ」(当て字)して表した。承諾を表す「よし」の他、「できる」意となる。
意味 (1)よい(可い)。よし。よいと許す。「許可キョカ」 (2)できる。「可能カノウ」 (3)べし(可し)。するべし。

イメージ 
 「よし・できる」
(可)
 「カという声」(呵・訶・哥・歌・苛・珂)
 斧のまがった柄から「まがる」(河・舸・柯・坷・軻・何・荷)
音の変化  カ:可・呵・訶・哥・歌・苛・珂・河・舸・柯・坷・軻・何・荷

カという声
 カ  口部
解字 「口(くち)+可(カという声)」の会意形声。口からカッという声を強く出すこと。しかる意と、わらう意とある。可は本来、カ(丁)という音を口から出す意だったが、可能などの意に仮借カシャ(当て字)されたので、口をつけて本来の意味を表した。そのため、この字には口が二つある。
意味 (1)しかる(呵る)。せめる。「呵叱カシツ」(呵も叱も、しかる意)「呵責カシャク」(しかりせめる)(2)わらう(呵う)。「呵呵カカ」(からからと笑う)
 カ  言部
解字 「言(ことば)+可(カという声)」の会意形声。カッという強い言葉を出すこと。呵とほぼ同じ意味だが、梵語の音訳字としての使用が多い。
意味 (1)しかる(訶る)。(=呵る)。せめる。(2)梵語の音訳。「魔訶マカ」(梵語mahaの音訳。偉大な・非常に・すぐれる意)「摩訶不思議マカフシギ」(非常に不思議な。原義は、思い議(はか)りもできないほど偉大な)
 カ・コ  口部
解字 「可(カという声)+可(カという声)」の会意形声。カという声を連続して出すこと。うたう意となる。歌の原字。コの発音は唐音(宋以後の中国音)。
意味 (1)うたう(哥う)。うた。 (2)地名。「哥倫比亜コロンビア」(南アメリカ北西部の共和国)
 カ・うた・うたう  欠部
解字 「欠(口をあけて立つ人)+哥(うたう)」の会意形声。欠ケンは口をあけて立つ人の象形。これに哥(うたう)がついた歌は、人が口をあけて歌うこと。
意味 (1)うた(歌)。うたう(歌う)。「歌手カシュ」 (2)やまとうた。「和歌ワカ」「歌人カジン
 カ  艸部  
解字 「艸(くさ)+可(カという声)」の会意形声。からい草を食べてカッと声を強く出すこと。からい意から転じて、きびしい・むごい意となる。
意味 (1)からい(苛い)・きびしい(苛しい)・むごい(苛い)。「苛政カセイ」「苛烈カレツ」「苛酷カコク」 (2)いらだつ。いらいら(苛苛)する。「苛立(いらだ)つ」
 カ  王部
解字 「王(玉)+可(カの音)」の形声。カという名の宝石。メノウの白いものを言う。
意味 (1)しろめのう。「珂声カセイ」(玉の触れ合う音)「珂傘カサン」(玉で飾った傘蓋) (2)貝の名。くつわがい。 (3)地名。「那珂湊なかみなと」(茨城県の旧市名)「那珂川なかがわ」(①茨城県で太平洋にそそぐ川。②福岡県で博多湾にそそぐ川)

まがる
 カ・かわ    氵部
解字 「氵(水)+可(まがる)」 の会意形声。曲がって流れる大きな川の意。中国で黄河を表す字として使われた。黄河は中流で「几」の字形にまがり、さらに関中盆地から流入する渭水との合流点でもほぼ直角に曲る。甲骨文字からある字だが、殷の時代には渭水との合流点で直角に曲がることから、黄河を表す字として用いたと思われる。のち、大きな川の意となった。なお、殷の時代に黄河の先が曲がっているのを正確に把握していたとは考えられないとして、この説を批判する人がいるが、渭水との合流点で曲がっていることは遠くから旅をしてきた人に聞けば簡単に把握できる。戦略を立てる上からも川の流路を把握することは国家にとって最も大事なことである。
意味 (1)川の名前。「黄河コウガ」 (2)かわ(河)。大きなかわ。「河川カセン」「運河ウンガ
 カ  舟部
解字 「舟(ふね)+可(=河。大きな河)」の会意形声。河を上下する比較的大きな舟。
意味 ふね。おおきな船。「軽舸ケイカ」(軽快な船。はやぶね)「舸艦カカン」(大きな軍艦)
 カ・え  木部
解字 「木(き)+可(まがる)」の会意形声。まがった木の枝。先端に斧を結び柄とする曲がった木の枝。原字は丁で、可の構成要素となる重要な字。
意味 (1)え(柯)。斧の柄。斧をつける先の曲がった枝。「斧柯フカ」(斧の柄) (2)木の枝。「柯葉カヨウ」(枝と葉)
 カ  土部
解字 「土(つち)+可(まがる)」でこぼこした土地。
意味 ごつごつと角張っているさま。でこぼこでひっかかるさま。「坎坷カンカ」(行きなやむ。坎も坷も、でこぼこする意)
 カ  車部
解字 「車(くるま)+可(=坷。でこぼこした土地)」の会意形声。でこぼこした土地で車が行きなやむこと。
意味 (1)「轗軻カンカ」とは、坎坷カンカを車偏に置き換えて作った熟語。①車の行き悩むさま。②事の思うように運ばないさま。 (2)車がきしるさま。「軻峨カンガ」(ごつごつして高いさま) (3)孟子の名。「孟軻モウカ
 カ・なに・なん  イ部

解字 甲骨文は、人が斧の柄(=丁。=柯。まがった柄)をになう形。荷(になう)の原字。金文は人に頭部を追加して描いた形。篆文以降、「イ(ひと)+可(=柯。斧の柄)」になった。意味は人が斧の柄を「になう」こと。しかし、本来の意味でなく、人にものを尋ねる意に仮借カシャ(当て字)され、「なに」「どれ」などの疑問詞となった。
意味 (1)なに(何)・どれ・どの。「誰何スイカ」(誰か、と声をかけて問いただす)「如何イカン」 (2)になう。
 カ・に・になう  艸部
解字 「艸(くさ)+何(になう)」の会意形声。花弁を荷っているハス花の花托の意からハスの意がある(実際は花托でなく雌しべ)。何が「なに」の意となったため、本来の「になう」意味も表わす。
意味 (1)になう(荷う)。「荷担カタン」(①荷物を担う。②味方をする) (2)に(荷)・にもつ。「出荷シュッカ」「重荷おもに」「歩荷ぼっか」(山小屋などへ荷物をいくつも背負って運ぶ仕事をする人。荷物が歩く意からと言われる) (3)はす(蓮)。はちす(蓮の古名。花托の形がハチの巣に似ることから)。「荷葉カヨウ」(ハスの葉。ハス花の香りに似せた練り香の一種)
<紫色は常用漢字>

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