今年の土用の丑の日は7月21日と8月2日であった。先日、混雑する丑の日とその前後を外して鰻屋へ行った。
当日は店の都合で2階の座敷に通された。その部屋には4人用の座卓と6人用の座卓が1つずつ対角線上に配置されていた。夕方の5時半過ぎということで先客はなく、私たち2人は奥の4人用の席に案内された。
それなりの鰻屋では席に着いたからとて直ぐに鰻が出されるわけではない。最低でも30分以上は待たなければならず、それまでの間を一杯やりながら待っていた。やがて男女の2人連れが、別の従業員に案内されて他方の席に付いた。私はその仲居さんとは親しかったので、注文を受け終わり立ちあがったところで、「今日は!」と斜め後ろから声を掛けた。
その彼女が振り向いて返事をするのに一瞬の時間を要した。その僅かな間に、客の女性が「今日は!」と答えてくれた。続いた仲居さんの「何時もどうも・・・」との声で、その女性は自分の勘違いに気付いたらしい。「あっ やっちゃった!」との気まずそうな表情を示した。
こちらとしては申し訳なかったとの気分が充分にあった。帰り際には笑顔を作り、「お先!」と頭を下げて部屋を出た。彼女はホッとしたのであろう。“ばつの悪さ”から解放されたかのように、本当の笑顔で会釈を返してくれた。