結婚を機に亡き長兄のお嫁さんと同居していた母を引き取り一緒に暮らすことにしました。
妻は母の面倒をよく看てくれて、やれお花見だ、やれあやめまつりだ、やれ夏まつりだ、やれ菊まつりだ、やれ紅葉狩りだと事あるごとに母を誘い、三人でいろんな所に出かけました。
母もそんなそんな妻を実の娘の様に可愛がりました。
妻と母はご近所でも評判の「仲良し嫁・姑」でした。
こちらに引越しして来る2年前に母が脳梗塞を患いその後認知症になって、病院と介護施設を半年くらいずつ行き来する生活を送るようになると妻は足しげく母の見舞いに
通うようになりました。
彼女は母を車椅子に乗せて散歩に連れ出したり母の好きなじゃんけん遊びをしたりしてくれました。
母が長生きしてくれたのもこうした妻の存在があったお蔭だと思っています。
妻は仕事においても常に全力でがんばっていました。
長年勤めた呉服屋では持ち前の積極性と明るさ、人懐っこい笑顔でトップクラスのセールス・レディに上り詰めていました。
間違いなく仕事は彼女の生きがいだったでしょう。
そんな妻の体に異変が起きたのを僕が初めて知ったのは3年前の5月後半からでした。
彼女自身はそのかなり以前から体のある部分に違和感があったのを自覚していたらしいのです。
それから6月の中旬にかけて彼女は咳が連日続いていました。
彼女は風邪かも知れないという軽い気持ちから地元の総合病院の内科外来で受診しました。
そこでとりあえず胸部のレントゲン写真を撮ったのですが、彼女の話では写真を見た医師は一瞬顔色を変えてから難しい病気かも知れないので精密検査の必要があると
いう事を告げたそうです。
その日から彼女は三日連続でMRI検査、胃カメラ検査、大腸の内視鏡検査、その他の検査を受けました。
そして検査結果による最終的な診断が下される日が6月23日に決まったのです。