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新国立競技場 建設費削減 1550億円 見直し 迷走

2015年08月29日 10時40分12秒 | 新国立競技場

“疑問”が残る新国立競技場建設計画 建設費「1550億円」 “混迷”はまだ続く?




新国立競技場の総工費「1550億円」決定
  政府は関係閣僚会議を開き、総工費を「1550億円」とする新しい整備計画を決定した。

▽総工費の上限は、「2520億円」に未公表分を加えた「2651億円」と比べて、約「1100億」円余り削減して「1550億円」とする。
▽基本理念は、「アスリート第一」、「世界最高のユニバーサルデザイン」、「周辺環境等との調和や日本らしさ」。
▽観客席は6万8000程度とする。
▽サッカーのワールドカップも開催できるように、陸上トラック部分に1万2千席を設置し、8万席への増設を可能にする。
▽屋根は観客席の上部のみで「幕」製とする。
▽「キールアーチ」は取りやめる。
▽観客席の冷暖房施設は設置しない。
 観客の熱中症対策として休憩所や救護室を増設する。
▽陸上競技で使用するサブトラックは競技場の近辺に仮設で設置する。
▽総面積は旧計画の22万2000平方メートルから約13%減の19万4500平方メートルに縮小する。
▽VIP席やVIP専用エリアの設置は“最小限”にする。
▽スポーツ博物館や屋外展望通路の設置は取りやめて、地下駐車場も縮小する。
▽競技場は原則として陸上競技、サッカー、ラグビーなどのスポーツ専用の施設とする。但し、イベントでの利用も可能にする
▽災害時に住民らが避難できる防災機能を整備する。
▽工期は、2020年4月末とする
▽設計・施工業者を公募する際に2020年1月末を目標とした技術提案を求め、審査にあたって、工期を目標内に達成する提案に評価点を与えて優遇し、工期を極力圧縮することに努める。
▽財源については、“先送り”をして、多様な財源の確保に努め、具体的な財源負担の在り方は、今後、政府が東京都などと協議を行い、早期に結論を出す。
▽9月初めをめどに、設計から施工を一貫して行う「デザインビルト」方式を採用して、入札方式は「公募型プロポーザル方式」とし、応募の資格要件を課した上で、事業者を「公募」で募集する。

 政府は「約1千億円の削減幅」をアピールして、国民の理解を得たいとしているが、ロンドン五輪や北京五輪のオリンピックスタジアムの建設費に比較しても、1000億円超ではまだ破格に高額で、国民の批判が収まるかどうか不透明である。
 また、削減幅にこだわったことで、基礎工事や周辺工事などで、算定から“抜け落ちた”工事が発生したり、労務費や資材費が値上がりするなどして、実際には「1550億円」が更に膨らむ懸念がどうしても残る。また焦点の「2015年1月」完成を目指した場合は、総工費は「1550億円」の上限は維持できるのだろうか?不安材料は、依然として残る。


新国立競技場新建設計画 再出発への“疑問”

▽ 総工費圧縮「約1000億円」の“明細”を明らかに!
 「2520億円」から「約1000億円」削減して、「1550億円」に圧縮した“努力”は評価したいと思う。
 しかし、具体的にどんな経費を圧縮したのか、明らかにならないと納得できないのではないか。
2015年7月7日、日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議で決定した「2520億円」と一体、どこが違うのだろうか? 「2520億円」の試算は、日本スポーツ振興センター(JSC)と設計会社JV、施工予定者の大手ゼネコンが積算している。
 施設の総面積を旧計画の22万4500平方メートルから約13%減の19万4500平方メートルに縮小したので総工費は削減可能だろう。
 可動式の屋根は、設置しないので「キールアーチ」は不要になるだろう。
屋根の経費は「950億円」から75%削減し「238億円」と算出している。観客席の上部の屋根は「幕」製にするとしている。
 観客席は、前の計画では、「6万5千席」が恒久設備で、「1万5千席」を仮設としていたが、今回の計画では「6万8千席」(恒久設備)として、余り大差はない。
 冷暖房設備は削減したり、スポーツ博物館や屋外展望通路の設置は取りやめて、地下駐車場も縮小することは明らかにされている。
 その他の機能や設備で、何が“残った”のか、何が削減ないし縮小されたのか、詳細に公表すべきであろう。但し、 今は「公募」前なので、積算価格は公表するのは適切ではないだろう。
 筆者の疑問は、7月に公表された「2520億円」の概算見積もりをどこまで信用できるのかという点である。工事費の積算が適正にされていたのだろうか?
また、「2520億円」は“粉飾”された総工費で、実は“未公表”の経費が「131億円」あり、実は「2651億円」だったということを今回、突然明らかにした。「131億円」の内訳は芝生の育成施設(16億円)、最寄り駅との間を結ぶ連絡通路(37億円)など計81億円。さらに大会組織委員会の新規要望である電源の複線化などに費やす50億円などとしている。唖然である。
 更に、「1550億円」には、設計・管理費、「40億円以下」は別枠として、入っていない。“五輪便乗”と批判が出ている日本スポーツ振興センター(JSC)本部、日本青年館の移転経費、「152億円」も入っていないし、すでに工事が進んでいる旧国立競技場の解体費も別枠で予算措置を講じている。
新国立競技場の建設経費を巡っては、余りに“杜撰”な“予算管理”である。
 一体、本当のところ、総額はいくらになっているのだろうか?
 この疑問が解消されない限り、「1550億円」にも疑念が残るだろう。


▽ 完成時期「2020年春」では無理?
 完成時期を、IOCは「2020年1月」に早めるように強く要請しているが、どうするのか? 新国立競技場は、メインスタジアムとして、開会式と閉会式を開催するのが最大の“使命”である。「3ヶ月」で、開会式の準備をするのは「無理」とされている。ロンドン五輪、北京五輪、ソチ冬季五輪、開会式は、開催国が威信をかけて華麗な演出を競う。
 それを成功させるには、綿密なリハールを繰り返すことが必須である。本番にたどりつくまで「3ヶ月」では到底、不可能だと思う。 ロンドンオリンピックでは開会式のリハーサルに200日に及んだという。「2020年春完成」で本当に開会式の準備に間に合うタイムスケジュールが組めるのか? 大会運営者はどのように考えているのだろうか?
「テストマッチ」の開催も必須である。招致ファイルでは、陸上競技は「2020年2月、4月」、サッカーは「2019年11月、12月」としている。仮に新国立競技場完成後の「3ヶ月」に詰め込むことは可能なのか。さらに競技場のさまざま機能のチェックやセキュリティ対策やVIP対応、観客の動線、選手や大会役員の管理、さらに競技場の運営スタッフのトレーニングなども含めると、「3ヶ月」の準備期間では、極めて厳しいと思われる。 
最近のオリンピックでは、開会式や競技の中継放送を成功させることが大会成功のカギを握っているとされている。世界各国の視聴者にオリンピックのプレゼンスをアピールするとともに“放送権料”の確保は、IOCにとって極めて重要な難題なテーマである。映像・音声の生中継のシステム構築を行い、本番に向けて周到な準備作業やリハーサルを行うために、長期の準備期間が必要である。「3ヶ月」では不可能だろう。
「開会式」のリハーサル期間の十分な確保はほぼ絶望的だ。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの“看板”は“おもてなし”だったのではないか? “おもてなし”には十分な“準備”が必要だ。
 日本スポーツ振興センター(JSC)が設けた技術提案等審査委員会は、設計・施工業者選定にあたっての審査基準などを決めたが、国際オリンピック委員会(IOC)が20年1月までの完成を求めていることを踏まえ、「工期を短縮した場合に評価が高くなる項目を基準に盛り込んだ」と見られている。(毎日新聞 8月27日)
 完成時期も含めて競争に委ねるという“曖昧”な建設計画に大きな懸念が残された。依然として、新国立競技場の建設を巡っては“混迷”が続く。

▽ 「周辺整備費237億円」はどこへいった? 「周辺整備費237億円」の内訳は、「明治公園整備」33億円、「周辺人工地盤」143億円、「歩行者ブリッジ外苑西」22億円、「歩行者ブリッジ新宿道」19億円、「水道等インフラ移設」15億円、「サブトラック連絡通路」4億円、「明治公園撤去」1億円とされている。 総工費「2520億円」が決められた際には、明らかにされてなかったが、含まれていなかった可能性が強い。
 「周辺人工地盤」については、新国立競技場の建設用地が、高低差7~8メートルの斜面になっており、この敷地をフラットにして競技場や公園を建設するために必要な基盤整備である。また最寄りの駅からのアクセスを確保する「歩行者ブリッジ」、立体公園化する「明治公園整備」など、“バリアフリー”を確保するために基盤整備として必須の工事である。
2020年東京オリンピック・パラリンピックのキーワードの一つは“バリアフリー”、パラリンピック開催をきっかけに、車いすなどでも容易に移動可能な障害者や高齢者に“やさしい”街づくりに大都会東京が大きく踏み出すとしていたのではないか。
 今回の「1550億円」には、「周辺整備237億円」は、どのように処理しているのだろうか? “曖昧”にする問題でない


▽ 観客席の“冷房システム”は必須!
 五輪の開催時期は真夏で“酷暑”が想定されるなかで、観客席の“冷房システム”をどうするのか? 経費節約の対象となる設備ではなく、優先順位の高い設備だろう。“酷暑”対策の“ホスピタリティ”は、“冷房システム”だ。
 「開会式」やサッカーなどは、夜間に開催するから不要というのは余りにも“ホスピタリティ”重視の姿勢を欠いて言わざるを得ない。
 安倍首相は「冷却効果が少ないなら、別な形にしてもいい。『かち割り氷』もある」と発言したとされているが、「世界で最高のホスピタリティ」を目指すという理念はどこへ行ったのか?
 新国立競技場は50年後、100年後を見据えた「レガシー」(未来への遺産)を目指したのでないか?


▽ 天然芝は維持管理システムが重要!
 天然芝の維持のために必要な“芝生育成補助システム”をどうするのか?
 天然芝の大敵、夏場の高温多湿から芝生を保護するためや、ピッチ上部の可動式“屋根”は設置しなくても観客席の屋根は設置するので日照時間は制約されるので、“芝生育成補助システム”は、必須である。荒れた芝生のピッチは、“スポーツの聖地”に相応しくない。
 「1550億円」の建設計画では、十分な“芝生育成補助システム”が含まれているのだろうか?


▽ “ホスピタリティ施設”の削減はどうなっているのか?
 建設経費増の原因となっている広大なエリアを占める「世界水準のホスピタリティ施設」を謳っているVIP専用席、プレアム席やラウンジやレストランはどうなっているか。観客席の“冷房システム”の方がはるかに重要だろう。

▽ 五輪開催後、新国立競技場を何に使用するのか?
 五輪開催後、新国立競技場は主としてどんな競技を開催する目論見なのか?
ポイントは、陸上競技場として残すかである。五輪開催後も陸上競技場として機能させて成算があるとのだろうか? 横浜市の「日産スタジアム」、調布市の「味の素スタジアム」、また駒沢オリンピック総合運動場で陸上競技の開催は十分可能だろう。
集客力のあるサッカーを中心にラグビーなどの球技場専用を目指すのが現実的だろう。球技専用にするなら、観客サービスを充実させるために、陸上競技用の9レーンのトラックは取り払い、“ピッチサイド席”の設置するのが適当だろう。 サッカーやラグビーには、9レーンのトラックの空間が“邪魔”になる。


▽ 陸上競技場に必須のサブトラック!
五輪開催時は、「仮設」で対応するとしているが、五輪開催後はどうするのか? 新国立競技場を陸上競技場として、国際競技会や公式競技会の開催を目指すなら、サブトラック問題は避けて通れない。
 五輪開催後のサブトラックの設置のメドが立たなければ、9レーンの国際標準のトラックなど陸上競技場としての設備は“無用の長物”となる。

▽ 新国立競技場は五輪終了後の“改築”を前提にして整備計画策定を!
 「8万人」規模のスタジアムの維持は、五輪開催後は“絶望的”だろう。観客席の縮小や競技場の設備の再整理など“改築”を前提にして、整備計画を策定する必要がある。そのためには、五輪開催後、数十年に渡って、新国立競技場をどう維持していくのか、デッサンを描かなればならない。
「1550億円」の建設計画で、新国立競技場の“五輪後”の姿は明確に視野に入れているのだろうか?

▽ 五輪終了後の収支計画はどうなっているのか?
「2520億円」の建設計画を決めた際に、日本スポーツ振興センター(JSC)では、可動式屋根設置後という“条件付き”で、年間で、収入40億8100万円、支出40億4300万円、3800万円の黒字という収支見込みを公表している。
「1550億円」の仕切り直しの建設計画では、収支見込みはどうなっているのか、まだ不明である。この建設計画を評価するにあたっては、五輪後の収支見通しを示すのが必須であろう。
それとも新国立競技場の運営は「民間に委託」としているので、政府としては、収支のメドはコメントしないのか? 日本スポーツ振興センター(JSC)はどうするのか?

▽ 無駄”になった約60億円をどう処理する?
“白紙撤回”されたことで、日本スポーツ振興センター(JSC)が契約し、発注しているZaha Hdid Architecsや設計会社、工事を請け負うゼネコンへの支払い約62億円の大半が戻らないとされている。
“無駄”になった約62億円は、だれが負担するのか? その責任は誰がとるのか?



(新国立競技場の完成予想図。環境に配慮して高さが当初案より5メートル低い70メートルになった 出典 日本スポーツ振興センター)

★ 最新記事 新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか


新国立競技場“迷走” 第三者検証員会設置へ
2015年7月24日、下村文部科学大臣は、新しい国立競技場の整備計画の見直しに至った経緯を検証するため、建築関係者やアスリートなどを委員とする第三者委員会を設置し、9月中旬にも中間報告を取りまとめたいとした。
 「もともとのデザインを選んだ時期から今日に至るまでをきちんと検証し、どこに問題があったのか、どのようなスキームの中で、どういう責任が問われるのかということについて、お手盛りではなく、第三者による検証を委員会にお願いしたい」と述べた。
 2015年8月7日、第三者による検証委員会の初会合が開かれ、提出された資料からは、2013年7月、総工費は「3535億円」に上るとの試算が日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパンの4社の共同体から日本スポーツ振興センター(JSC)に示されていたことが明らかになった。4社の共同体は、5月に新国立競技場の設計業務を行う事業者に入札によって選定され、「基本設計」のフレームを決める「フレームワーク設計」を開始していた。
2020年五輪・パラリンピックの東京開催を決めた2013年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会の2ヵ月前である。
 日本スポーツ振興センター(JSC)では、当時は、「国際デザイン・コンクール」を行う際に定めた「1300億円」としていた。日本スポーツ振興センター(JSC)では、この報告を受けた文科省から、大幅なコスト削減の指示を受け、同8月に延べ床面積を減らすなど複数のコンパクト案を報告していた。
 この情報は、安倍首相や下村文科相、森喜朗組織委員会会長(現)に伝えられていたのだろうか? それとも文科省と日本スポーツ振興センター(JSC)の担当者だけに留められたのだろうか? 疑念が生まれる。
 いずれにしても、IOC総会ではザハ・ハディド氏の当初デザインのままで、招致に向けたプレゼンテーションが行われた。
 新国立競技場を巡る“迷走”は、誰がこのプロジェクトを責任を担って進めるのか、まったく曖昧のままにしてきた「無責任体制」が最大の原因である。国際デザイン・コンクールの審査委員会、有識者会議、日本スポーツ振興センター(JSC)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、文部科学省、官邸、何が問題だったのか、しっかりと検証して欲しい。前途多難、先行きに“不安”を感じているのは筆者だけだろうか?


新国立競技場建設費 2520億円承認
 2015年7月7日、日本スポーツ振興センター(JSC)は「有識者会議」開き、新国立競技場の改築費は、当初よりも「900億円」多い「2520億円」になることが承認さてた。スタンド工区が1570億円、屋根工区が950億としている。膨大な建設費に批判が集まるなか、5年後に向けた計画が進められることになった。
会議にはメンバー12人が出席したが、デザイン案を決めた国際デザイン・コンクールの審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は欠席した。

JSCは、新国立競技場について斬新なデザインの象徴となる「キール・アーチ」は残すが、開閉式の屋根の設置を先送りにし、可動式の観客席を着脱式にするとしている。 この結果、約「260億円」を削減し、スタンド本体の総工費を「1365億円」と見積もったとしている。一方で、「キール・アーチ」のための資材費や特殊な技術が必要な工費の負担増で「765億円」、建設資材や人件費の高騰分が350億円(約25%増)、消費増税分が40億円、合わせて約「1155億円」の経費が増えたとしたとしている。
 差引で約「900億円」増額としたのである。しかし2014年5月の試算から増加したのは約「「1155億円」、何と1000億円を超えていたのである。
ザハ・ハディド案は基本的に「建築デザイン」が中心で、総工費について詳細に積算した上での算出はしていない。
しかし、その後、日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパンの4社の共同体が「フレームワーク設計」を行い、その上で「基本設計」も終えている。「基本設計」の段階では、工法、工期など仕様がほぼ固まっており、各費目の積算をした上で、総工費の想定額が算出される。4社の共同体には、こうした設計業務で、約10億円も支払っている。その上で、「1625億円」の総工費の想定額が算出されているのである。
「基本設計」終了後の総工費想定額は、精度の高い数字で、通常、最終的な契約額とのズレは、10%程度といわれている。
但し、「1625億円」は、「2013年7月の単価」で「消費税5%」で試算しており、その後の資材費や人件費の値上がりや「消費税8%」分は、上乗せになるのは理解できる。しかし、総工費が総額で約1000億円も膨れ上がるのは理解できない。
「10億円」費やした日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパンの4社の共同体の「基本設計」が杜撰だったのか?
それとも大成建設と竹中工務店がさまざまな条件を考慮して、極力“高め”の総工費を設定したのか? 
今回の新国立競技場の工事発注が、競争入札ではなく、「公募型プロポーザル方式」と呼ばれる事実上の“随意契約”で行われていることが、「1000億」の原因なのでなかろうか? 価格競争が行われないと、発注価格は“高止まり”になるのは常識である。
新国立競技場の建設計画を“白紙撤回”して“仕切り直す”なら、基本設計から「1000億」も、なぜ膨れ上がったのか、本当に妥当な額なのか、しっかり検証しなければならない。

 また、開閉式の屋根を大会後に設置したあとの収支計画も明らかにし、黒字額は前回は「3億3千万円」としたが、今回は約10分の1の年間「3800万円」に大幅に縮小された。また屋根の設置時期については明らかにしなかった。
 このほか、完成後50年間で、修復・改修費が前回の試算より400億円増えて、1046億円に膨れ上がったことを明らかにした。
計画は全会一致で承認され、新国立競技場の工事は、10月に着工し、2019年5月の完成を目指す。



(国立競技場将来計画有識者会議 新国立競技場設計概要 段階的整備について 2015年7月7日)


(国立競技場将来計画有識者会議 新国立競技場設計概要 段階的整備について 2015年7月7日)


(国立競技場将来計画有識者会議 新国立競技場設計概要 段階的整備について 2015年7月7日)

「2520億円」の内訳と疑問
 猪瀬前東京都知事は、日本テレビのうえいくアッププラス(2015年7月25日)に出演して、「2520」億円の内訳について、屋根工区とスタンド工区に分けてそれぞれ詳細を明らかにしている。
▼ 屋根工区
直接工事  727.9億円
          土工事                  44.3億円
          鉄骨工事                427.8億円
          防水工事                 5.7億円
          電気設備                 30.3億円
          直接仮設・仕上げ工事・設備費   219.8億円
共通費   152.0億円
工事価格  879.9億円
消費税    70.4億円
工事費   950.3億円  (屋根工区合計額)

▼ スタンド工区
直接工事 1247.7億円
          土工事                   86.1億円
          鉄筋工事                  42.3億円
          鉄骨工事                 208.7億円
          木工事                   22.1億円
          金属工事                 104.7億円
          電気設備                 135.3億円
          空調工事                 100.3億円
          直接仮設・仕上げ工事・設備工事等 548.6億円
共通費   205.7億円
工事価格 1453.4億円
消費税   116.3億円
工事費  1569.7億円  (スタンド工区合計額)

 総工費「2520億円」は、当初案を大幅に縮小・削減した建設計画で算出した額である。それでも当初の目論見の「1300億円」のほぼ倍に膨れ上げっている。その原因について、長さ約370メートル、重さ約3万トンとされる2本の巨大な鋼鉄製の「キールアーチ」だと強調されてきた。しかし「キールアーチ」の工事費は、約「428億円」である。さらに問題はスタンド工区の工事価格である。スタンド工区は特に技術的に難しい工事だとは言われていない。スタンド工区だけで「1570億円」を計上している。建築資材費や人件費の値上がりや、旧国立競技場の取り壊し工事が5か月遅れたことによる「突貫工事」になったことや、消費税8%は承知している。しかし、「基本計画」策定時の総工費概算「1625億円」の際の積算と具体的にどこが変わったのだろうか? 果たしてゼネコン2社は適正に積算がなされたのであろうか? 発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)や文科省はしっかりチェックしたのだろうか?疑問は晴れない。


有識者会議の委員は?
 安西祐一郎(日本学術振興会理事長)▽安藤忠雄(建築家)▽小倉純二(日本サッカー協会名誉会長)▽佐藤禎一(元文部事務次官)▽鈴木秀典(日本アンチ・ドーピング機構会長)▽竹田恒和(日本オリンピック委員会会長)▽張富士夫(日本体育協会会長)▽都倉俊一(日本音楽著作権協会会長)▽鳥原光憲(日本障がい者スポーツ協会会長)▽馳浩(スポーツ議連事務局長)▽舛添要一(東京都知事)▽森喜朗(東京五輪・パラリンピック組織委員会会長)▽横川浩(日本陸上競技連盟会長)▽笠浩史(東京五輪・パラリンピック推進議連幹事長代理)=敬称略、五十音順

日本のスポーツ界を代表する“そうそう”たるメンバーで構成されている。


最後の議論の場
 2015年7月7日、激しい批判にさらされた新国立競技場の建設計画を巡って、「最後の議論の場」となる“有識者会議”が開催された。
「2520億円」という当初計画の「1300億」の約倍に膨れ上がった建設経費やデザイン案維持への納得のいく説明がされないまま、責任の所在もあいまいなままで進めらてきたこことに世論の批判が殺到していた。JSCが施工業者と契約する7月上旬までに公で行われる「最後の議論の場」にもなるだけに、多くのキーマンが顔をそろえ、JSCの諮問機関の役割を果たす有識者会議がどう意見を集約するかが注目されていた。
JSCはこの会議で、「10月着工」、「2019年」完成で、工事着工に向けた「大きなステップ」(JSC)として、建設計画について了承を得たい考えだった。
“有識者会議”は、文科省の管轄下にある日本スポーツ振興センター(JSC)の理事長の私的諮問機関であり、あくまで“意見を集約”する場で、議決する場ではない。会議の出席者が順番に各人の意見を述べる場だとされている。
しかし、建設計画の了承には、出席委員の過半数の支持が必要になるとされ、仮に支持が過半数に達せず、“承認されず”となれば、建設計画を前に進めるのは事実上不可能だろう。
 なお有識者会議には、安西祐一郎氏(日本学術振興会理事長)と安藤忠雄氏(建築家)が欠席した。新国立競技場のデザインを選定した国際デザイン・コンクールの審査員長を務めた安藤忠雄氏は、この日、大阪で所用があったとして欠席した。


全員一致”の“了承” 
 会議では、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が、五輪招致で安倍晋三首相が「このスタジアムを造る」と発言したことに触れて「国際公約を守るのは重要」と指摘するなど、スポーツ界の重鎮からは計画推進を求める声が相次いだ。
 「膨れる不安にも説明が必要だ」と膨らむ総工費に疑問を投げかけたのは、「東京五輪・パラリンピック推進議員連盟」幹事長代理の笠浩史衆院議員(民主)だけだったという。委員からは逆に、「(ピッチサイドの移動席が)仮設ではサッカーW杯を招致できない」(日本サッカー協会の小倉純二名誉会長)、「屋根がないことで外国人アーティストと長期契約が結べない」(日本音楽著作権協会の都倉俊一会長)との注文が相次いだ。
出席者によれば、「『2520億円』の金額の根拠について、JSCから十分な説明はなかった」とか、「どの時点で計算が違ってきたのか、説明がないのでみんな驚いていた」(週刊文春 7月23日号)としている。
会議を締めくくったのは森喜朗東京五輪組織委員会会長で、「(総工費は)極めて妥当なところ」とし、これを受けて、河野日本スポーツ振興センター理事長が「異議なしで宜しいでしょうか」と述べて(週刊文春 7月23日号)、「2520億円」の「基本計画」は“全員一致”で“承認”され、会議は1時間あまりで終わった。


有識者”の責任
 これだけ批判を浴びている新国立競技場の建設計画が、12人の「有識者」によって前回一致で承認されたのは“唖然”という他ない。「有識者」とは一体何だろうか? 数名は異論を示してもしかるべきだと思うが如何? 更にこのデザインを選定した国際デザイン・コンクールの審査員長、安藤忠雄氏は今日の会議を欠席している。ザハ・ハディド氏のデザインを選定に自信があり、新国立競技場を建設する意義を評価するなら、胸を張って会議に出席して、自ら主張して欲しかった。それが“一流”の建築家だと筆者は思うが……。

すでに“破たん”している「2520億円」
 「2520億円」の見込み額は“破たん必至”と懸念されている。
 “過少”に見込み額を設定するために、“操作”されていることは明らかである。
  グランド上部の可動式の“屋根”はオリンピック終了後、建設するとしているが、工費は「168億円」かかるとしている。単に先送りしただけで、一体誰が負担するのか、まったく明らかにしていない。
 イベントの収入見込みが年間たった6億円しかないのに、「168億円」をかけて“屋根を建設することに国民は納得するだろうか?
 2020年東京オリンピック・パラリンピックが終わり、“祝祭”の熱気も消えた後に、多額の費用をかけて、“屋根”は建設するのは絶望的かもしれない。
 仮に“屋根”の建設ができなければ、約1000億円かけて建設する巨大な「キール・アーチ」は、まったく“無用の長物”となる。文科省とJSCはどう考えているだろうか?
 サッカーやラグビーなど開催時にピッチにせり出す可動式の観客席、1万5千席は着脱式に変更するとしているが、この経費は含まれていない。一体、いくらかかるのか? 誰が追加で負担するのか?
 陸上競技の大規模な大会開催には、サブトラックの整備も欠かせない。2020年東京オリンピック・パラリンピックは仮設で対応するとしてとしているが、その後、どうするのか。スポーツの“聖地”を目指した新国立競技場は、陸上競技のスタジアムとしては“不完全”なものになるだろう。

 「基本計画」では総工費に含まれていた新国立競技場の「周辺整備費」「237億円」が消えている。
 JSCでは周辺整備について以下の整備を行うとしている
▽人口地盤等(バリアフリー)
▽都営大江戸線との接続 (バリアフリー)
▽サブトラック連絡通路
▽立体公園(バリアフリー)
▽上下水道幹線移設費
 新国立競技場ではパラリンピックも開催されることを忘れてはならない。周辺施設やアクセスをバリアフリーにするのは必須であろう。2014年5月に策定された「基本計画」では、本体工事だけでなく「周辺整備費」あったのではないか?  今回の「2520億円」では、どのように処理されているのか明らかにされていない。
 総工費「2520億円」が承認されてから、約1週間後、早くも、歩行者用デッキ(立体歩道)やインフラ設備の移設費、合わせて約72億円を入れていないことが分かった。(スポーツ報知 2015年7月14日)2014年5月に示した「基本設計」では、駅からのアクセスが多いと想定する歩行者用デッキ(立体歩道)1号、2号の整備費を37億円と水道などのインフラ設備の移設費の35億円と合わせ、計72億円と試算し、当時の総工費「1625億円」には、この72億円が含まれていたという。JSCは「今回示した総工費に72億円は含まれていない」と認め、未記載の理由について「歩行者デッキなどは見直しを図っていくので含めなかった」と回答したという。
 意図的に総工費を削減する“見せかけ”が行われているのではという疑念が生まれる。

 さらに巨大な「キール・アーチ」の建設には、膨大になる鉄骨の重量を支えるために前例のない大規模な基礎工事が極めて重要になる。建設工事を進めていく過程で、工事費の追加が懸念される。
 また、世界で最先端のスタジアムを目指すなら、高精細映像システムや最新の4KLED巨大スクリーンなどの映像設備や光ファイバーなどの通信ネットワークや高速WiFi設備、デジタルサイネージ、音響設備等のインフラが必須だろう。話題のウエアブル端末サービスも必要だ。総務省は2020年には“世界で最高水準”のICT社会を実現すると宣言している。”“箱”だけ作っても、“中身”がなければ世界に誇れるスタジアムにはならいない。「2520億円」にどこまで含まれているのか不透明である。本当は、“箱もの”の議論は終えて、“世界で最高水準”のICTを実現するスタジアムにするために知恵を絞る時期だろう。当然、経費もかかる。
 現状の建設費の目論見から計算しても、「2520億円」に加えて、可動式の屋根の建設費「168億円」や芝育成システム、ガラスカーテンウオール、可動席、それに周辺整備費は必要で、「3000億円」は上回ると見込むのが妥当と思う。“数字合わせ”を無理やり行ったのではないかという懸念を持つ。
 すべてが、「キール・アーチ」のデザインにこだわったために“犠牲”になっているのではないか……?

「五輪便乗」? 日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟建設 16階建の高層ビル 
 2015年8月10日、参議院予算員会で、新国立競技場の建設問題が取り上げられ、民主党の蓮舫元行政刷新相は、“白紙撤回”されたにもかかわらず、現在も進めらている関連工事の総額が約320億円あるとして、政府を追及した。
 この中で、問題視したのが、「JSC本部棟・日本青年館新営設計・工事・管理等」業務である。
 政府内で、密かに“白紙撤回”に向けて検討が進められている最中、6月30日に、この建設工事で「165億円」契約が、文科省とJSCで交わされた。「165億円」の内、「47億円」はJSCが負担するが、その財源は、税金とtotoでまかなうとしている。

 実は、新国立競技場関連経費は、「2520億円」とは別枠で、JSC本部・日本青年館の移転費用等(174億円)や新国立競技場設計監理費用(91億円)、埋蔵文化財調査費(14億円)など「279億円」の経費が必要だとして、2014年1月、文科省と財務省は合意している。
 平成26年度の政府予算で、「2020オリンピック・パラリンピックの東京招致・開催支援等」という項目で、「現在の国立霞ヶ丘競技場(陸上競技場)は、建築後50年以上が経過し、競技場そのものの老朽化が進むとともに、今日開催される大規模な国際競技大会の主会場としての仕様を満たさない状況となっていることから、2019年ラグビーワールドカップ日本開催、2020年オリンピック・パラリンピック東京招致等を視野に入れ、同競技場の改築を目指す。平成26年度においては、新競技場の実施設計及び既存建物の解体工事等を行う」として、約230億円を計上している。一見すると、「新競技場の実施設計及び既存建物の解体工事」と誰もが思うのは間違いない。


(平成26年度予算概算要求 財務省)

 実はこの中に、新国立競技場の建設用地内にあるJSC本部と日本青年館の移転費も、「支援等」として“こっそり”入れ込み、「五輪便乗」と問題視されている。
 計画では、現在の日本青年館の南側にある西テニス場の敷地約6800㎡に、地上16階地下2階、延べ床面積約3万2000平方メートルのビル、「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」を新築し、JSC本部の事務機能や日本青年館の宿泊施設・ホールなどの機能を集約した施設を整備する。JSCは、この内、4フロア、6000平方メートル、これまでの1・4倍の面積を使用して、本部機能を移転する計画である。
 2015年6月14日、競争入札で、安藤ハザマが落札、落札額は152億5000万円(予定価格は164億9626万円)だった。
 「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」建設は、文科省の新国立競技場整備に関する「予算の上限」をJSCに示した時にすでに「174億円」(内JSC本部関連は28億円)を入れ込んでいる。 膨れ上がる新国立競技場の建設費を“抑制”するために「232億円」は別枠にしたのであろう。
それにしても「152億5000万円」使って。「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」を建設する必要があるかどうか、しっかり検証したのだろうか。 神宮外苑に、新たに1240席の大ホール、客室数約220室のホテルを税金を投入して建設する必要があるのだろうか? 
 日本青年館は、全国の青年団活動の拠点にするため、「1人1円」の建設資金募金活動を繰り広げ、 大正14年9月に総工費162万円をかけて地上4階地下1階建ての旧日本青年館が完成した。
昭和54年2月には、青年団募金5億円が集められ、政府、経済界、各界の支援を受けて総工費54億円をかけて地上9階地下3階建ての現在の日本青年館が完成した。そして約30年、首都圏には、ホテルやホールの施設は十分に整っている。“時代”は変わっているのである。「五輪便乗」と批判されてもやむ得ないのではないか?
「東京五輪」を名目にした“便乗・膨張体質”が早くも露呈している。


(新日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟完成予想図 出典 日本青年館ホームページ)



誰が負担するのか 財源不足は「1000億円」超は必至
 「2520億円」の巨額の経費は、一体、誰が負担するのだろうか? 最大の問題である。
 すでに決まっているのは、国が「392億円」、スポーツ振興基金の取り崩し「125億円」、toto(売り上げの5%:2013年と2014年分)で「109億円」、合わせて「626億円」だ。
 これに期待されているのが、東京都「500億円」?、命名権など「200億円」?、toto(売上の10%に引き上げ:5年間)「660億円」で、最大「1388億円」だ。
 すべてこの目論見通り進んでもまだ「530億円」が不足している。
 周辺整備費「237億円」も入れると、現状でも「767億円」の財源が足らない。
 可動式の観客席に代わって着脱式にする1万5千席の設置費や大会終了後、整備するとしている“可動式の屋根”、最新鋭の芝生育成補助システム、東西面ガラスカーテンウォールの設置を加えると現状でも、財源不足は「1000億円」は軽く超えると思われる。一体、財源はいくら必要なのか、まったく不透明のままである。
 誰が負担するのだろうか? 結局、国民や都民の税金が投入されるのだろうか?


大会終了後の新国立競技場の収支は大幅赤字“必死”
 焦点の年間の収支見込みについては、昨年夏の試算では「収入38億円」、「支出35億円」、「3億3000万円」の黒字としていた。今回の収支目論見では、開閉式屋根を設置した場合という条件付きで、「収入40億8100万円」、「支出が40億4300万円」、「3800万円」の黒字と試算した。支出が増えたのは完成後にかかる修繕費も6割増の年10億円となったためだとしている。合わせて収入見込みを約2億円増やし、無理やり、黒字にしたという印象があるが、とになく“不明瞭”である。
 
巨額の後年度負担が次世代に
建設後50年間に必要な大規模改修費を前回より「400億円」増やして、約「1046」億円と見積もった。高層ビルや公共施設など大規模な構築物は、修復・改修を常に積み重ねていかないと快適な環境は保てないのは常識だろう。通常はこうした経費も収支計画に組み込むのも常識だ。
 官公庁の施設マネジメントを行う一般財団法人建築保全センターは、大規模な建築物などの五十年間の長期修繕費について、「すべき修繕、望ましい修繕、事後保全」は建設費の百五十四パーセント、「すべき修繕、望ましい修繕」同九十六パーセント、「すべき修繕」同五十一パーセントとしている。
 「事後保全」とは、建造物や設備にトラブルが発生したら、その都度、修理、修復、設備更新を行う修繕作業である。
 新国立競技場の場合、可動式屋根や可動式観客席、芝生養生システムや空調設備などの最新鋭設備、他の官公庁の施設に比べて、保守修繕費がかさむのは明らかであろう。
 「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、建設費とほぼ同額の「2419億円」、「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、「3880億円」が、今後50年の長期修繕費として見込まれているのである。
 また鹿島建設では、建築物は竣工後から解体廃棄されるまでの期間に建設費のおよそ3~4倍の経費が必要で、竣工時に長期修繕計画を作成し、計画的に修繕更新を行うが重要としている。 この試算では、「2520億円」の施設を建設すると「7560億円」から「1兆80億円」の後年度負担が、今後50年間に発生することになる。
 JSCでは、約「1046億円」でさえ、早くも、ギブアップして、国に財源確保を要請している。
 競技場など“箱もの”は、建設費だけ調達すればよいというわけにはいかない。巨額の後年度負担を次世代に着実に残すことになる。


新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)第一号か?
 2020年東京大会のキャッチフレーズは「DiscoverTomorrow(未来をつかむ)」である。
 新国立競技場の建設にtotoの財源を充当する方針が進められているが、totoは、地域スポーツ活動や地域のスポーツ施設整備の助成や将来の選手の育成など、スポーツの普及・振興に寄与するという重要なミッションがある。Totoは“スポーツ振興くじ”なのである。仮にtotoを財源に1000億円を新国立競技場の建設に拠出するとしたらtotoの創設精神に反するのではないか?
 オリンピックの精神にも反するだろう。IOCの“レガシー”では、開催地は、大会開催をきっかけに国民のスポーツの振興をどうやって推進していくのかが重要な課題として問われている。東京大会の“レガシー”は、どこへいったのだろうか?
 東京大会コンセプトは「コンパクト」、繰り返し強調しているキーワードである。過去からの資産を大切にしながら明日に向かって進んでいく都市の姿を世界に伝えていくとしている。
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会での2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致演説は何だったのだろうか。
 “新国立競技場”のキャッチフレーズ、「『いちばん』をつくろう」は実現できるのか?
  新国立競技場が“負のレガシー”になる懸念が更に増している。





東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
二転三転「維持費と収入」 新国立競技場収支への“疑念
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト




2015年7月8日
Copyright (C) 2015 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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1 コメント

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Unknown (無名)
2015-08-04 15:55:48
新国立競技場、誰1人り責任のなすりあい政治家
役人、すべての人間に責任があるはずなのに、みんな
責任のなすり合い最低な政治家自民党はじめ与党、野党オールジャパンで取り組まなければいけないのに
ザハド氏の設計も斬新しすぎて日本の国立競技場としてはふさわしくない設計で、廃止になったのは歓迎
するが、またザハド氏が設計に携わりたいなんていってきて、二度とザハド氏には国立問題には口を出さないでもらいたい、金取もうじゃにしか見えない、絶対にザハド氏を国立問題から外すべき、出来れば日本人建築家で進めてもらいたい、日本人建築家は、世界1です
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