ドナウ川の白い雲

ヨーロッパの旅の思い出、国内旅行で感じたこと、読んだ本の感想、日々の所感や意見など。

プリトゥヴィツェ湖群国立公園の森の中を歩く……アドリア海紀行(5)

2015年11月30日 | 西欧旅行…アドリア海紀行

 ヨーロッパツアーのなかで、イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、スイスなどへのツアーを 「卒業」 した日本人に、今、いちばん人気があるのが、クロアチア・アドリア海方面へのツアーである。

 その人気コースの中で、欠かすことのできない訪問先の一つが、プリトゥヴィツェ湖群国立公園。

 もう一つのハイライトは、「アドリア海の真珠」と言われるドゥブロヴニク。私のお目当てはこちらの方。

 それはともかく、この国立公園の、ブナとモミにおおわれた広大な森の中には、大小16の湖と92の滝がある。

 最も高い位置にある湖と、一番低い位置にある湖の標高差は500m。その間を階段状に92の滝が結んでいる。チョウや小鳥、コウモリ、清流に泳ぐ魚、何と!! ヒグマまでいるそうだ。

 1979年、ユネスコの世界自然遺産に登録された。

 広大な自然公園のなかの森と湖と滝の間を縫うように、ハイキング用の小道が整備され、徒歩以外には、エコロジーバスが上部と下部を、遊覧船が大きな湖の渡し場と渡し場を結んでいるだけだ。

        ★

 公園内のホテルに2泊し、朝の9時から夕方の4時過ぎまで、この自然の中を歩いた。美しく色づいた森の葉に、目が黄色くなった。

 お年寄りも、肥満した人も、足腰の悪い人も、付いて歩ける速さで、ゆっくり、ゆっくりと。

 午前は曇っていたが、午後はすっかり晴れ渡って、木々はすっかり秋の色、水はエメラルドグリーンに澄んでいた。

 自然以外には何もない世界を一日中歩いたのは、若いころ、登山をしていたとき以来だろうか。一日の歩数、15000歩。午後から腰や膝が痛んだが、翌日に持ち越さなかったから、良い運動だったのだろう。

        ★

 さて、たくさん撮った写真のほんの一部を掲載する。

(高台からの景観…連続する滝)

    ( 木の間隠れの滝 )

 

   (水、水、水、地球は水の星)

  

(小道の脇の野の花と清流のカモ)

   ( 大きな湖を渡る遊覧船 )

  (森のはずれにある休憩所の黄葉)

(雨上がりには、増水で通れなくなる遊歩道も)

   ( 澄んだ湖面に黄葉が映える )

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 一昨日訪れた「アルプスの瞳」と言われるブレッド湖 …… 湖の中に小島があり、小島には小さな教会が立ち、教会の鐘の音が湖面を流れ、湖のはずれの絶壁の上には古城が立つ …… あのメルヘンチックな風景こそ…… ヨーロッパ !!

 むき出しの「自然」ではない。ヨーロッパの風土と歴史と文化が作り出した、ヨーロッパ的な自然の景観である。

 湖に浮かぶのは、この地方独特の手漕ぎの舟だけ。

 多くの観光客を受け入れても、別荘やレストランは、風景を損なうようなかたちでは、許可されない。

 「個人の勝手でしょう!!」は、戦後の日本の社会で、子どもの間でさえよく言われた言葉だ。

 しかし、個人主義は、市民精神の上に立脚する。市民精神とは「公」の精神であり、自立した個人が共同体に対して責任の一端を担おうという精神。各自の家の中は、各自の勝手。一歩、家を出れば、そこは、公の場所。個人が勝手にして、良いわけがない。

        ★

 このプリトゥヴィツェ湖群国立公園もまた、同じである。しっかり入場料を取る。そして、人間の歩く遊歩道を効率的に整備し、それ以外には立ち入らせない。公園内のエコロジーバスも、遊覧船も、レストランも、しっかり管理し、生態系を守る。

 例えば、富士山もそのようであってほしい。ゴミの処理や糞尿の処理がきちんとでき、生態系が守れる範囲に入山者数を制限すべきだし、そのために必要な費用は、入山料として取るべきだ。それが、「公」の精神であり、後世への「責任」というものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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