感染症診療の原則

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すべての高校で性感染症検査(ワシントンDC)

2009-08-06 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
国連と米国CDCの定義では人口の1%を超えるHIV陽性率の場合「まん延」地域・国となっています。

2009年3月の発表で「人口の3%」がHIV陽性であったワシントンDCでは、様々な対策を講じています。

その一環として、特に増加の著しい若年層を対象に性感染症のプログラムを充実させようという動きがあります。性感染症に罹患していると、HIVに感染しやすくなるからです。
先にクラミジアなどの性感染症を早く治療しよう、HIV検査を早く受けようというプランです。

本日の英語メディアには、ワシントンDCではすべての公立高校(12000人)でSTD検査を受けることができるようにする、というニュースがありました。現在、DCにおけるクラミジアと淋病の半数は思春期層となっています。

このプログラムのよいところは、感染がわかったときには公的なお金で生徒が治療を受けることができる、という点です。

ちなみに米国では12歳以上の場合、親の承諾なしに本人の意思で性感染症の検査を受けることができます。

パイロット調査では、中学生の30%、高校生の60%に性交経験があり、希望で尿検査を受けた生徒の13%が性感染症に罹患していることがわかりました。この13%は同時にHIV感染リスクも生じていることを意味します。

DCのこの計画は、2002年にフィラデルフィアではじまったプログラムをモデルにしたもので、ニューヨーク、シカゴ、ニューオリンズ、バルチモアも計画中です。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/08/04/AR2009080403402.html

日本ではエイズ検査だけ熱心ですが、低プレバレンス国なのでそうそう陽性の診断にはいたりません。その手前にある「もっとたくさんの」性感染症リスクや困っている人のニーズはケアされていません。

学校で知識が大切、自己決定が大切と教えます。しかしその先がありません。
(裏メッセージとしては無知が悪い、自業自得です)
100%安全なセックスはないという科学的な前提を持てば、その先のケアもでてくるはずなんですが。
大人だって敷居の高い性感染症うたがいの受診ですから、お金の無い人たちへの支援はもう少し手厚くないといけないわけです。

かつて、某県で保健所でクラミジア検査を無料にしようとしたときに、医師会からストップがかかりました。
保健所の検査は採血で抗体をみるだけなので、そこで感染疑いを掘り起こして医療機関につながるはずなのですが、無料検査=客が減る と心配をされたようです。
誰がこどもたちの健康を守れるのだろうと考える事例でした。
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