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検査で判定できないかも、の淋菌の話

2012-03-02 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
2008年のCIDに
Low Positive Predictive Value of a Nucleic Acid Amplification Test for Nongenital Neisseria gonorrhoeae Infection in Homosexual Men
Clin Infect Dis. (2008) 47 (2)
という論文がありました。

検査の「陽性的中率」が低いという指摘。本当は陽性なのに陰性と出てしまうのが問題、という話。

オーストラリアのホモセクシュアル男性での検体では、ノドの検体で30.4%、直腸のサンプルで73.7%。
porAアッセイでの限界を指摘しています。

生体試料から得た淋菌porA核酸断片を検出するようになっているのですが、その仕組みではうまくいかない、ということです。


そして、PCR検査で偽陰性だったN. meningitidisの事例は2011年5月に報告されていました。
False-negative results using Neisseria gonorrhoeae porA pseudogene PCR – a clinical gonococcal isolate with an N. meningitidis porA sequence, Australia, March 2011. Euro Surveill. 2011;16(21)



検査や治療がうまくいかないかも、という経験を公表することで、他の医療者や患者での診断の失敗を予防し、より正確な検査に変えて行くことにつながります。
リスク因子や地理情報など公衆衛生的にも必要な情報がつみかさなってくればより具体的な予防にも反映できます。



最新のEurosurveillanceにはスコットランドで同じような経験を3例しています、という報告。

Identification of Neisseria gonorrhoeae isolates with a recombinant porA gene in Scotland, United Kingdom, 2010 to 2011
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=20101

スコットランドで2010-2011年にかけて分離された2つの2つのNeisseria gonorrhoeae multi-antigen sequence typing (NG-MAST) についての報告です。これらは通常の確認検査で用いるporAがありませんでした。

淋菌のNAAT検査は診断のためのスクリーニング検査に用いられます。NAAT検査で淋菌陽性の場合、スコットランド性感染症リファレンスラボ(Scottish Bacterial Sexually Transmitted Infections Reference Laboratory (SBSTIRL) に確認のため検体がおくられるようになっています。ここではすべて NG-MASTタイピングが行われ、薬剤感受性が測定されます。確認検査はリアルタイムPCRを用いて、porAをターゲットとして判定を行います。検体が indeterminate あるいは negativeの場合、Aptima GC (Gen-Probe)を使用して検査します。
検体によっては量の不足から判定ができないこともあります。

2011年5月にオーストラリアで、同じ患者から分離された2つの淋菌の株がリコンビナントのpor A遺伝子をもっていたことが報告されました。
NG-MAST type 5377で、スコットランドのリファレンスラボで使用しているPCRでは検査できないものでした。

スコットランドでの事例:2011年10月に、淋菌のNAAT検査で陽性となった直腸のスワブと、直腸から分離株の2つがリファレンスラボにおくられてきました。スワブ検体のporAの PCR検査では陰性(Aptima GC検査はできず)。
分離された菌もporA PCRは陰性でした。この株はセログループWII/II、NG-MAST type 5967であり、ペニシリン、テトラサイクリン、シプロフロキサシンに耐性、セフェフィキシム、セフトリアキソン、アジスロマイシン、スペクチノマイシン感受性でした。

NG-MAST5967のデータベースを検索したところ、スコットランド内の同じ地域の男性の直腸からの分離株と同じであることがわかりました。この人は1カ月前に診断されており、複数の男性のパートナーがおり、全員に連絡はできていません。またNAATの検体はなく、この報告の患者との疫学的なリンクはわかりませんでした。薬剤感受性の傾向も同じでした。スコットランドで把握されたNG-MAST type 5967 の淋菌は今のところこの2例です。

もう1例、porA陰性、Aptima GC-陽性の尿検体があり、この男性患者は2010年12月にNAATと培養で淋菌と診断されていました。
しかし、上記の2例とは別の地域の人でした。この事例では(検査推奨のための)コンタクトができない男性のパートナーがいました。セログループWII/III、 NG-MAST type 3149でした(薬剤感受性は上記と同じ)。

著者らの注意喚起。
"We recommend that laboratories performing porA-based PCR to confirm positive N. gonorrhoeae NAAT results consider the use of a third NAAT, with an alternative target gene where the confirmatory assay is negative. This third target could alternatively be included as a duplex with the porA assay."

"Laboratories and clinicians alike should be alert to the propensity of N. gonorrhoeae to develop unusual variations in genotype, as well as the well-established phenotypic variations."

もうひとつ、同じEurosurveillanceのレポートはN.meningitidisでの話でした。
Clinical Neisseria gonorrhoeae isolate with a N. meningitidis porA gene and no prolyliminopeptidase activity, Sweden, 2011 – danger of false-negative genetic and culture diagnostic results
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=20102


臨床的には淋菌・・・しかし検査は陰性、のときに考えることになる話。

淋菌のデータベース
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1 コメント

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淋菌は難しいと言われています (師範手前)
2012-03-02 18:27:16
淋菌の検出は難しく、尿道分泌物が大量に出てくる場合は容易に検出同定する機会は多くあります。尿道炎を起こすので自然尿が検体になると検出感度も下がりますので、尿道分泌物の採取を勧めなければなりません。一方、咽頭部のキャリアの問題もSTDを考えた上では避けて通れないものです。オーラルセックスによる感染も多いという報告もあります。DNA検査は万能だと思われがちですが、ある程度の菌量が必要なのは検査をしている人しか分からない事もあるので、結果の解釈が解りにくい場合はラボと相談した方が良いと思います。現行のPCRでは非病原性ナイセリアとクロスするものもあり、何でもPCRすると結果解釈が間違う事もあるようです。難しいですが、特徴を踏まえると何て事も無いかもしれません。

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