Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

ヤマト福祉財団水産業農業の再生支援始まる!!

2011-07-06 | 里海探偵団
本日より,ヤマト福祉財団が水産業・農業の再生支援のための資金提供を始めた。
4月から一箱10円を募金し現在30億円が集まったようである。
第1回目の締切りは7月31日である。1億円以上が対象である。
前回,CSR担当者には漁業者に意欲があっても,資金がなく断念せざるを得ないケースが多い。
ぜひ,なんとか漁業者の資金援助を考えて欲しい,と訴えた。
この趣旨は先方にも通じているはずだ。
市町村単位あるいは県,大学などでぜひ取り組んでいただきたいものである。
http://www.yamatowf-saisei.jp/assist.html#


National Marine Educators Association 2011での発表

2011-07-06 | 水圏環境教育
6月27日~7月2日にアメリカボストン市ノースイースタン大学で開催されたアメリカ海洋教育者学会年会に学生とともに参加した。この会議には、アメリカ本国以外にも、アメリカンサモア、ハワイ、イギリス、ベルギー、ポルトガルマデラ島、ニュージーランド、オーストラリア、チリ、メキシコ等からも参加があり海洋教育に関する国際的な学会である。

今回津波に関するあなたの取り組みついて発表してほしいとの特別なオファーがあり、現場での体験を盛り込みながら45分間のプレゼンテーションを行った。

発表内容は次の通り。

3.11東日本大震災の被害と復興に向けて
ー私たち海洋教育者は何をなすべきか?ー

今回の東日本大震災により、東北地方の岩手県宮城県、福島県を中心に多大な被害を被った。3ヶ月が経過したが復旧にはまだ時間を要する。被災した42市町村のうち6割が収入確保の見通しが立たないと回答し被災者の生活支援にはさらなる取り組みが必要である。

現代社会に於いて、先進国と言われる日本においても単なる科学技術の発達や経済発展だけでは十分に対処できないことが明らかになった。

このような世界的な傾向の中で、私たち海洋教育者は何をすべきなのであろうか?

ところで、三陸地方は過去にも幾度となく津波の被害にあった。年表によると、1611年から2011年まで大規模な津波が押し寄せている。平均で50年に一度の割合で頻繁に起こっているのである。なぜ、このような危険な場所に日本人は住んでいるのであろうか?

その答えは、豊かな自然環境にある。何千年にもわたりこの地域では豊かな自然環境の中で伝統的な生活を営んできた。津波の大きな被害に会いながらも豊かな山林と河川と栄養のあふれる親潮の影響によって、豊富な水産資源が人々に恵みをもたらしたのだ。

さらに、震災後、1月経った4月11日、宮古漁協は驚異的な復活を遂げた。岩手沖合で捕獲したスケソウダラを宮古漁港に水揚げした。沖合底曳船が幸いにも操業中で被害を逃れていた。この迅速な復旧に町中の水産関係者は喜んだ。「津波のあとは大漁になる」という言い伝えの通り、その後も各地の定置網でマダイ、クロマグロ、サケマス等が定置網等で数多く捕獲された。

甚大な被害を被った宮古浦カキ養殖組合は18人体制でカキ養殖作業をスタートさせた。
岩手の18漁協でワカメ養殖も再開することが確認された。

しかし、問題がない訳でもない。養殖業を営む養殖業者のうち意欲的でしかも資金があるものは再開を決意できるが、意欲があっても手元に資金があるなければ再起不能である。まして近年稀にみる異常気象やチリ津波等による被害を繰り返し受けてきた漁業者にとって資金準準備は至難の業だ。結果としてある養殖組合の生産者の2-3割は廃業をやむなくされているという。


またもともと日本の中で生活環境が恵まれた地域ではない。中央集権の強い日本では都会が著しく発展し、地方都市や漁村は人口の流出が激しい。

大学、文化施設,高速道路、新幹線、空港などは内陸部にあり、そこまでたどり着くのに2時間以上かかる。文化的生活を送る上で恵まれていないのである。

もともと決して良い条件が整っているとは言えないのが現状である。どうせ復興するのであれば、復旧ではなくもっとより良いものへと向かうことが望ましい。それではどうししたらいいのか?

私たち東北人は、大変勤勉である。何も言わずひたすら働くことが美徳とされている。目上に逆らうことはできない。そう教えられて生きて来た。それが厳しい生自然環境の中で生きる術である。

このような東北人の生き方が今の日本の反映を支えた。多くの若者やが労働者として高度経済成長を支えた。その結果、世界有数の経済大国となった。東北人の粘り強さが日本の反映を支えて来た。

しかし、現代では、その考えは通用しなくなっている。今回の津波がいい例であった。

国民を救うはずの行政機関や政治家,科学者は利己主義に陥り国民生活よりも自己の地位の維持向上に重きが置かれている傾向がある。

被災地では、津波注意の看板があった。しかし、行政は注意喚起をしていなかった。風評被害を気にしていた。避難所は津波警戒域にあった。100人が流された。誰も疑うことがなかった。

津波想定区域に防災設備があった。防災設備には毛布,食料が入っていた。そのため、寒さを凌ぐ毛布が不足し、食糧もなかった。寒さで何人もなくなった。

行政が動かなければ住民は動けない体質になっていた。避難所が整備されず,避難所に誰がいるのかわからない。生存確認が遅れた。津波の被害の後、国,県の初期対応が遅れた。

被災者は、多大な2次被害を被った。全てを頼りにしていた行政は十分に対応してくれなかった。行政が全て面倒を見てくれた時代は終わったのだ。

これからは行政頼みでなく、自分達の生活環境、自然環境は自分たちで守り考え、自分たちの行動を伝えて行くことが必要だ。


水圏環境に焦点を合わせれば,水圏環境を観察して自分たちで考え責任を持って行動でき,そしてそれらを多くの人々に伝えることができる人材を育成して行くことが大切である。このような人材の育成を目指した教育を水圏環境教育と定義した。

私達はこの津波によってさらに強くなった。問題点が明らかとなりその解決策が見出された。それは、水圏環境教育をより一層推進することである。

水圏環境教育はみじかな自然環境の観察を通し、人々が水圏環境の諸問題について考え、水圏環境リテラシーを理解し、責任ある決定や行動ができ、そのこと多くの人々に伝えることができる人材の育成を目指している。

このような人材を育成するために、ラーニングサイクル理論に基づいた教育プログラムの開発研究、授業実践をおこなってきた。

水圏環境教育を推進することが、豊かな自然環境に恵まれた三陸地域の地域住民の生活環境や意識を向上させていくと確信する。

水圏環境教育が推進されることで期待されることの一つは、人々の自然環境への関心を高め,自然環境の価値を高め,地域住民の連帯を強めることである。

教育の推進によって第四の価値を生み出すのだ。その価値とは、我々先祖代々培ってきた知恵に価値を見出し,他人任せではない,自分たちで自分の未来を切り開いていく連帯の力である。

現在岩手大学と海洋大学との共同研究が始まった。この研究は復興のために両大学の英知を結集して研究するものである。

沿岸部の水産、海洋系の研究施設は壊滅した。4月に岩手大学を訪問した。岩手大学は水産海洋系の学部を持たない。しかし、海洋大学が協力するので沿岸部にシーグラントをモデルとしたエクステンションセンターを設置するよう提案した。

このことがきっかけとなって岩手大学はこれまで設置がなかった三陸の沿岸部に、水産、海洋系大学と連携してエクステンションセンターを設置することを決めた。

現在考えられているテーマは、ブランド開発、水圏環境調査、物流、沿岸部の電源確保、水産業の復興政策などである。

エクステンションセンターの役割の一つとして水圏環境教育を推進することを目指している。水圏環境教育の理念を達成するための教育プログラムの開発研究,教育プログラムを推進するための人材の育成,人材の確保のための資金作り,アダルトエデュケーションの充実,人材を配置するための推進部門の設置等,これらのことでより三陸地域だけでなく全国の各地各地方における住民主導のガバナンスが構築され、今後の災害時におけるまた平常時における,大学の役割を明確にする重要なターニングポイントとなるであろう。