三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「シーフォーミー」

2022年09月01日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「シーフォーミー」を観た。
映画『シーフォーミー』オフィシャルサイト

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8月26日(金)ロードショー|真夜中の侵入者が盲目の少女を襲う 新感覚FPSスリラー

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 冒頭の荷造りの場面はかなりいい。安全ピンの数で衣類を区別する工夫をしている。視覚がないから、頼りは音と臭いと触感だ。人生の途中で見えなくなった場合は、見えていたときの経験値を活かす。生まれながらの盲目とは違うやり方だ。そう考えると、盲目にも人それぞれの違いがあって、一緒くたにはできないことがわかる。盲は音の感覚が鋭いなどとは、一概に言えないのだ。

 
 独善的な母親が登場してからの会話は、互いに愛情が乏しく、この母娘がふたりとも性格に難があることがわかる。こんないけ好かないヒロインで大丈夫かなと懸念するところだ。
 ところがソフィひとりになってからの展開には、利己主義者の性格が必須だったことがわかる。気だてのいいおとなしい娘だったら、たったひとりでの大豪邸の留守番などそもそも引き受けなかっただろうし、スリルもない平板な物語になっていただろう。
 ソフィの性格と素行の悪さと利己主義のおかげで、ストーリーは二転三転、先の読めない展開になった。これは面白い。
 
 タイトルの「See for me」はスマホカメラを利用した盲目向けの案内サービスである。実際にはこういうサービスはないと思うが、アプリなら既にある。アプリだと頓珍漢なやり取りが予想されるから、そこは人間がモニターを見ながら情報を伝えたり指示を出したりするほうがリアルだし、緊迫感がある。ソフィの切迫感にケリーの緊張感が加わり、息を呑むシーンが連続する。
 悲惨な結末でもよかった気がするが、ソフィがいみじくも「盲目というだけで気を遣われる」と言ったように、制作側も盲目のヒロインに気を遣ったのかもしれない。