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2006-06-12 | 読んでみた。finding.
ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け

新潮社

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この本は丁度大江さんがノーベル文学賞を受賞した年、1994年の、4月から1995年11月まで「新潮5」に連載された池田晶子さんの時事放談です。
ただ、形式が稀に見る・驚きの構成になっていて新鮮。
ギリシャ時代の哲学者ソクラテスと、ほとんど全く記録が無い、天下の悪妻といわれたクサンチッペによる夫婦対談形式になっているのです。
ソクラテスだって「ソクラテスの弁明」は口述されたものを弟子アリストテレスが文章として纏めたと言われています。
まさに架空の哲学の大家ソクラテスと、世界三大悪妻の一人クサンチッペが事象をバッサバッサと袈裟切りに切りまくるという痛快コラムです。
いきなりソクラテスに対して先制パンチ「わたしは知っているよ。わたしはごまかせないよ。理屈屋は理屈屋をごまかせたってね。どうしてかって。あったり前でないの。理屈を言うのは頭が悪いせいだからだよ。理屈を言うのは頭が悪いせいだからって、こんな簡単な理屈がわからないから、理屈屋は頭が悪いんだよ。だって、わたしなんか、なあんにも考えてやしないけど、ぜえんぶわかってるもの。わかってる証拠に、考えないもの。考えないのはわかってるからで、考えるのはわかってないからでしかないでないか。そうでないか。考えなけりゃわからないなんてのは頭が悪いせいに決まっているのに、それが理屈屋にや決してわからないんだね、ええ、じれったい。」10ページと哲学者ソクラテスを詰ります。
「政治だの経済だのしち面倒臭いこと、男にやらせときゃいいんだよ。」「女は・女は・って真っ先に言う女はあんまり賢くない。」15ページと容赦ありません。
池田晶子さんは、全く架空の2人を使い、ソクラテスに論評させ、クチンナッペに庶民の視点で突っ込みを入れさせます。
まるで掛け合い漫才のように、ボケたり・突っ込んだり、世相を切って行きます。
ヨースタイン・ゴルデルのベストセラー「ソフィーの世界」は「ソフィーの馬鹿」になります。永六輔さんの「大往生」は「大往生で立往生」となってしまいます。
映画「シンドラーのリスト」もバッサリやられています。養老孟司さんも「脳でなくとも養老孟司」という風に分析されてしまいます。
オーム・サリン事件も厳しく断罪されます。
おほめの言葉を頂いているのは、大江健三郎さんくらいではないでしょうか?
池田さんの言いたいことが、理論的にも・男の視点でも、女の見方も、感覚的・直感的分析も、表現可能な考え方が、まさに縦横無尽に繰り広げられる見事な分析絵巻です。
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