犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

埼玉県東松山市 足場倒壊事故 その1

2012-04-01 23:49:53 | 時間・生死・人生

3月24日  mns産経ニュースより

 埼玉県東松山市のマンション改修工事現場で、足場が倒壊して保育園児2人が死傷した事故で、亡くなった北村波琉人ちゃん(6)の通夜が24日、ときがわ町玉川のJA埼玉中央西部セレモニーホールでしめやかに行われた。
 祭壇には、赤いダウンジャケットを着てほほ笑む波琉人ちゃんの遺影が飾られ、会場は深い悲しみに包まれた。読経が流れる中、親族に続いて波琉人ちゃんが通っていた保育園の園児や保護者らも焼香を行い、冥福を祈った。

 通夜の後、波琉人ちゃんの父、伸明さん(42)が記者団の取材に応じ、「事故以来、心の中にぽっかり穴が開いてしまった。まだ気持ちの整理がついていないが、波琉人を悲しませないため、家族で力を合わせ前に進んでいきたい」と涙ながらに語った。
 通夜には、工事を請け負った業者らの姿もあったが、遺族らは焼香を拒否し、通夜が終わるまで外で土下座していた。


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 私はこれまでの仕事の中で、このような事故の裁判に日常的に接してきました。そこでは、人の言葉をそのまま書き取る供述調書、人の言葉の言葉にならない部分を引き出して書く陳述書、あるいは人の言葉が人に嘘をつかせる特質を最大限に利用した準備書面など、このような事故に関する文章を書くことを職務としてきました。

 自身の職務の遂行にあたり、私は様々な人の立場に立たされ、その自己中心性に強制的に引っ張られ、自分自身の立場が不在となり、本音と建前の文法法則に支配されてきました。このような事故は、生き残った者の防衛本能が最も敏感になる場面であり、人は言葉によってしか考えを考えることができない以上、人間は嘘と知らずに嘘ばかりを語ることになります。

 この事故の報道に接して私が考えたことを、普段の仕事の中で感じていることと合わせて書きます。

(続きます)