信州は八ヶ岳の小海リエックスに、男三人でパラグライダーの合宿に行ったことがありました。テントと車泊で自炊、三泊四日の青年強化合宿であります。
キャンプ場で男くさ~くストイックに過ごし、無事全員が飛べるようになりました。そこで最終日に打ち上げということで、清里に飲みに行くことにしました。もちろん車で。わはは。しかしカラフルなペンションはあれど、飲み屋というのは少ないようです。僕ら三人はぐるぐる廻って、ようやくスナックと居酒屋がミックスされたような店に入りました。キチンと駐車場付き。わはは。もちろんドライバーは飲んだりなんかしませ○×☆。
カウンターにはキザな風貌の男が一人。女性の店員をからかいながら、座ったまま何かを歌っていました。目が合ったときに僕らが軽く会釈してもシカトです。「ナマイキな奴だ・・・」と思いました。若い頃の男というのは、すぐにそういう意味不明の苛立ちを憶えるものです。しかし彼が一曲終わったところで、僕らは盛大な拍手とヒューヒューをしてやりました。会社員の悲しいサガです。毎晩先輩に鍛えられていたのです。
彼は目を大きくして僕らを見て、それからマイクを使って礼を言いました。「え~、思わぬところからの暖かいご声援・・・」妙に礼儀正しいのは純正不良の出身の証。そこで彼に対する好感度が少しUPし、苛立ちは治まりました。
それから僕らも何曲かやったところで、一人の客が入ってきました。薄汚れた作業服を着た40代の男です。カウンターに座って酒を注文してから、ぶつぶつと独り言を始めました。何か不満を言っているようです。
僕ら三人と元不良と店員は、当然彼を無視して遊んでいます。男は早いピッチで酒を呷り続け、独り言は独り言ではなくなってきて、店員にからみ始めました。「ちょっとやめてよ」「なんだと女給のくせに」時代背景いつだよおい。
そうして騒ぎが大きくなってきてから、何故か男は“はっし”と僕を睨みつけ、「ブッ殺す」「てめえこの」などと始まったわけです。こういうのをハードなスポーツ合宿をやっている若い男にやってはいけない。「なんだおい」とこっちもなるわけです。さあどうするどうなる、やるなら一対一だぜ。こっちも酔っぱらっているんだよ~ん。
「どうしたんだい、今日は?」突然、元不良が男に声を掛けました。驚くほど優しい声でした。男は“バキッ!”と音がしそうな勢いで彼を振り返り、暫く睨みました。ガンづけってやつですね。どうもこの文章、荒っぽいな。しかし元不良は気楽な表情で男を見ています。すると、ふいに男の表情が緩みました。まるで一気に歳をとったようでした。「職長がよお、いっつもいっつも俺のことを・・・」泣いているようです。
元不良は黙って聞いていて、それから彼の肩を一度叩きました。彼は立ち上がって勘定をしてもらい、最後に僕らに向かって「すまねえ」と土地の言葉で言って去りました。
そのあと元不良(話したら実際そうであった)は僕らを地元の人オンリーの大変怪しいスナックに連れて行ってくれました。どこをどう走ったのか、全く記憶はなし。暗い暗い森の中にあった店です。
「さっきはうまく収めたな」僕。
「あの人、話しを聞いて欲しかったんだろう」彼。
彼は立派な男でした。
つづく
その1へ
キャンプ場で男くさ~くストイックに過ごし、無事全員が飛べるようになりました。そこで最終日に打ち上げということで、清里に飲みに行くことにしました。もちろん車で。わはは。しかしカラフルなペンションはあれど、飲み屋というのは少ないようです。僕ら三人はぐるぐる廻って、ようやくスナックと居酒屋がミックスされたような店に入りました。キチンと駐車場付き。わはは。もちろんドライバーは飲んだりなんかしませ○×☆。
カウンターにはキザな風貌の男が一人。女性の店員をからかいながら、座ったまま何かを歌っていました。目が合ったときに僕らが軽く会釈してもシカトです。「ナマイキな奴だ・・・」と思いました。若い頃の男というのは、すぐにそういう意味不明の苛立ちを憶えるものです。しかし彼が一曲終わったところで、僕らは盛大な拍手とヒューヒューをしてやりました。会社員の悲しいサガです。毎晩先輩に鍛えられていたのです。
彼は目を大きくして僕らを見て、それからマイクを使って礼を言いました。「え~、思わぬところからの暖かいご声援・・・」妙に礼儀正しいのは純正不良の出身の証。そこで彼に対する好感度が少しUPし、苛立ちは治まりました。
それから僕らも何曲かやったところで、一人の客が入ってきました。薄汚れた作業服を着た40代の男です。カウンターに座って酒を注文してから、ぶつぶつと独り言を始めました。何か不満を言っているようです。
僕ら三人と元不良と店員は、当然彼を無視して遊んでいます。男は早いピッチで酒を呷り続け、独り言は独り言ではなくなってきて、店員にからみ始めました。「ちょっとやめてよ」「なんだと女給のくせに」時代背景いつだよおい。
そうして騒ぎが大きくなってきてから、何故か男は“はっし”と僕を睨みつけ、「ブッ殺す」「てめえこの」などと始まったわけです。こういうのをハードなスポーツ合宿をやっている若い男にやってはいけない。「なんだおい」とこっちもなるわけです。さあどうするどうなる、やるなら一対一だぜ。こっちも酔っぱらっているんだよ~ん。
「どうしたんだい、今日は?」突然、元不良が男に声を掛けました。驚くほど優しい声でした。男は“バキッ!”と音がしそうな勢いで彼を振り返り、暫く睨みました。ガンづけってやつですね。どうもこの文章、荒っぽいな。しかし元不良は気楽な表情で男を見ています。すると、ふいに男の表情が緩みました。まるで一気に歳をとったようでした。「職長がよお、いっつもいっつも俺のことを・・・」泣いているようです。
元不良は黙って聞いていて、それから彼の肩を一度叩きました。彼は立ち上がって勘定をしてもらい、最後に僕らに向かって「すまねえ」と土地の言葉で言って去りました。
そのあと元不良(話したら実際そうであった)は僕らを地元の人オンリーの大変怪しいスナックに連れて行ってくれました。どこをどう走ったのか、全く記憶はなし。暗い暗い森の中にあった店です。
「さっきはうまく収めたな」僕。
「あの人、話しを聞いて欲しかったんだろう」彼。
彼は立派な男でした。
つづく
その1へ
性差別をするわけじゃないです、もって生まれた個々の区別ですって。人、女、役職名など何でもいいのですが。
なかなかそういうところを見せてもらえない。。。
あ、ブログの中ではお見かけしマス(^^♪
こんな乱暴な文章を褒めてくれて、ホンット嬉しいです。
>ブログの中ではお見かけしマス
これって、バレバレってことか?
やっぱ男は、背中にしょってるものが重いんだね。
(と よいしょする今日の幸せ)
「純正不良の出身の証。」こんなことが、わかるというのは、その道の経験者か...(^o^)
>その道の経験者か
さあて、そいつは謎にしときましょう。例えば不良じゃないのにやたら不良方面に好かれる、なんてこともありますね。
いけないのだなあ」と思いながら………。
本当に外見なんて些細なコトです。もっと本質を求めないと。
>ロココさん
木に登りますです。
ってへんな言い方だけど、
なんかこうー心意気といいますか、人間的にやさしい人は
惚れ惚れしますね♪よくウジウジしてる男の人を「女のくさったような」なんて昔はいいましたが、それもおかしいし~。
男らしさをはきちがえて、威張るしか能がないおじさんとかは男として認めないも~んと言いたい。(酔ってないですよ~。笑)ほんと、このスナックの様子は目に浮かぶようです^-^。
元不良の方は、イメージですけど、訳ありで寂しそうに写っちゃいました。
それにしても、パラグライダーはスゴイッスね!
いろんな経験されてて羨ましいっす!
私は高校2年の頃男の子になりたくて、男の子の友達をたくさん作りました。
そして、つるんでいるうちに、あ~かなわないなあ~と思うことが多々あってそれ以来男の人を尊敬するようになりました。
>黙って聞いていて、それから彼の肩を一度叩きました。彼は立ち上がって勘定をしてもらい、最後に僕らに向かって「すまねえ」と土地の言葉で言って去りました。
ここですよ!ここ!
肌で感じろ!!!ですよねっ
いい話です。グスン。