このタイトルでいくつか書いてみようと思います。
時間に追われているとき、トラブルを抱えているとき、あるいはとくに何もないときでも、生きていくというのはときに「大変だあ」と思うことがありますね。ことに真っ直ぐ生きている人や優しい人ほど、そのココロは傷つきやすいものです。
そうしてそこから「イヤなこと」「ムカついたこと」という話題で盛り上がったりすることもあります。気の置けない仲間同士では、上司の悪口なんていうのがうんと楽しいし、密かにお互いをたたえ合う力にもなります。
まあそれはあくまでも仲間内ということで、ここでは逆に「あっ、いいな・・・」と感じた風景を書いてみようと思います。そんな瞬間があるから生きていける、人間は捨てたもんじゃないな、と思った風景です。
熱暑の中、僕は営業用の大きなバッグを提げて、ひたすら目黒の住宅街を歩いていました。その週のうちに新しい投資信託商品を3本売らなければなりません。
その夏の東京は、本当に暑かった。営業所のあった渋谷では日中40度にまで上がった日が続きました。暑さは人をイライラさせるものです。支店長は「気合いが足りんぞお前ら!」と叫び、お客さんは「いつになったらこの銘柄は上がるんだよ、エッ!」と電話で叫び、僕ら営業マンはしかたなく連日の飲み会でマイクに叫びました。
目黒の住宅街も、人々は暑さでふらふらになって歩いています。と、僕をパスしてきびきびと歩いていくご老人が。大変に厳しいお顔付き。手足を大きくスライドしながら僕の前を歩いていきます。どうも彼も何事かに対して怒っているようです。すると今度は後ろからワンボックスのワゴンが、猛烈なスピードで走ってきて脇をすり抜けました。「狭い道なのにあっぶねえなあ」正直そう思いました。ウィンドウは全部真っ黒くろすけです。正面突き当たりのご老人が歩いているあたりで急に左折。ああっと巻き込むぞ・・・!
ご老人はヨロけて壁に手をつき、それからもんのすごい怖い目つきで車を睨みました。幸い事故にはならなかったのですね。すると助手席の窓が開いて、黒人が顔を出してご老人を睨みました。こちらも真っ黒い顔にギョロっとした目。ああこれは喧嘩だ喧嘩だ、見たくねえ~・・・。
そこで思わぬことになりました。その黒人はご老人に向かって“ニカッ”と笑ったのです。そうして片手をさっと上げてすまんすまんというそぶりをし、その手がどこかに当たって今度は「おう、シーッ!」と苦笑いです。ご老人はというと、つられて頬がゆるみ、それから「おう」とかなんとか声を出して格好をつけたあとで、とうとう笑い出しました。
その様子を眺めていた周囲の人々二、三人と僕も、互いに顔を見合わせて、どういうわけか笑っていました。「ほんとにね~」近隣の奥さん風の女性がそんな言葉を発しました。「暑いですよね~」
もうずいぶん昔、平成3年の夏のことです。
つづく
時間に追われているとき、トラブルを抱えているとき、あるいはとくに何もないときでも、生きていくというのはときに「大変だあ」と思うことがありますね。ことに真っ直ぐ生きている人や優しい人ほど、そのココロは傷つきやすいものです。
そうしてそこから「イヤなこと」「ムカついたこと」という話題で盛り上がったりすることもあります。気の置けない仲間同士では、上司の悪口なんていうのがうんと楽しいし、密かにお互いをたたえ合う力にもなります。
まあそれはあくまでも仲間内ということで、ここでは逆に「あっ、いいな・・・」と感じた風景を書いてみようと思います。そんな瞬間があるから生きていける、人間は捨てたもんじゃないな、と思った風景です。
熱暑の中、僕は営業用の大きなバッグを提げて、ひたすら目黒の住宅街を歩いていました。その週のうちに新しい投資信託商品を3本売らなければなりません。
その夏の東京は、本当に暑かった。営業所のあった渋谷では日中40度にまで上がった日が続きました。暑さは人をイライラさせるものです。支店長は「気合いが足りんぞお前ら!」と叫び、お客さんは「いつになったらこの銘柄は上がるんだよ、エッ!」と電話で叫び、僕ら営業マンはしかたなく連日の飲み会でマイクに叫びました。
目黒の住宅街も、人々は暑さでふらふらになって歩いています。と、僕をパスしてきびきびと歩いていくご老人が。大変に厳しいお顔付き。手足を大きくスライドしながら僕の前を歩いていきます。どうも彼も何事かに対して怒っているようです。すると今度は後ろからワンボックスのワゴンが、猛烈なスピードで走ってきて脇をすり抜けました。「狭い道なのにあっぶねえなあ」正直そう思いました。ウィンドウは全部真っ黒くろすけです。正面突き当たりのご老人が歩いているあたりで急に左折。ああっと巻き込むぞ・・・!
ご老人はヨロけて壁に手をつき、それからもんのすごい怖い目つきで車を睨みました。幸い事故にはならなかったのですね。すると助手席の窓が開いて、黒人が顔を出してご老人を睨みました。こちらも真っ黒い顔にギョロっとした目。ああこれは喧嘩だ喧嘩だ、見たくねえ~・・・。
そこで思わぬことになりました。その黒人はご老人に向かって“ニカッ”と笑ったのです。そうして片手をさっと上げてすまんすまんというそぶりをし、その手がどこかに当たって今度は「おう、シーッ!」と苦笑いです。ご老人はというと、つられて頬がゆるみ、それから「おう」とかなんとか声を出して格好をつけたあとで、とうとう笑い出しました。
その様子を眺めていた周囲の人々二、三人と僕も、互いに顔を見合わせて、どういうわけか笑っていました。「ほんとにね~」近隣の奥さん風の女性がそんな言葉を発しました。「暑いですよね~」
もうずいぶん昔、平成3年の夏のことです。
つづく
>片手をさっと上げてすまんすまんというそぶりをし
のとこでふう~よかったと思い、
>「おう、シーッ!」と苦笑
のとこでははは。と笑ってしまいそうになりました。
昨日吉祥寺で車と自転車が接触したとこを見ました。
雨が降っててすべりやすかったのでしょう。でも、自転車に乗っているひとが車と接触し、こけたのに、車からはなかなか人がでてきませんでした。
ドアは5センチほどあいているのに。
そうして3分後、2人の男の人がでてきてこけた女の人に声をかけてましたが、記事の黒人の人のように片手をさっとあげてそして、すまんすまんというそぶりがほしかったです。
自分が悪かった時はすぐにすまんすまんとさっとあげられる人になりたいと強く思いました。(余裕がないときでも)
語彙が乏しいので うまいことわざが飛び出しません(滝汗)
つまり 何ていうんだろう
自分が怒っていたのに ほんのちょっとしたきっかけが
引き金になって 笑顔を思い出すことって
確かに過去にありましたよ~。
ハヤトさんのこの記事を読んで
仕事で ささくれ立ちそうになっていた気分が
真綿のような気分に変身しました。
とても素適な記事をよませてもらって感謝です~。
追伸
酔っぱの日記 いいですね~。
>nezimakiさん
ちょうどそちらのcafeにお邪魔してたところです。
>怒り心頭、岩をも通す
あのう、ふ、不謹慎かも知れませんが、笑っております! わはははは!
考えてみればすごい言葉ですよね~。まったく笑っちゃうなあ。
>真綿
いいですね。酔っぱらってもふんわりと乾いた真綿でありたいなあ。
その人たちを見て、私は大変な時こそ笑おう♪と思ったことを
ふと、思い出しました。
結構前ッス。夜中、お酒飲んで、友達とタバコ吸いながら帰ってたら
二人が前からせまってきたんす。
ヤバイッ!
「シガレットシガレット」
って言われたんで。逃げようとしました!
シガレットってなんやー!?ってそのとき思いました。
タバコを指さしてたんで渡しました。
老人の方の一瞬の気持ちわかります。
>かっちん
う~むむ。本当にタバコが欲しかっただけ、だったのですね。なんか米国では「タバコくれ」っていうのは会話のキッカケに使うことが多いらしいです。日本には他人と道ばたで話し込む慣習はないもんなあ。
その時車内の空気が一気に和んだのを、この記事を読んで思い出しました。
ぴりぴりした営業マンだったので、とても印象に残っています。何気ない出来事なんですけどね~。おっしゃる通り、琴線に触れました。
追:ちなみに琴線って、コトセンと読んでいたことがあります。
> chai-diiさん
おおお~! すっごくいいお話! ここのコメントにはもったいない。記事になるほどのお話。
今ココロがじわっと暖かくなりましたよ。粋な車掌さんがいますね~。
その場のみんなの雰囲気が伝わってきます!
メープルの香りのするスナックを、ムッシャムッシャ食べて
たので、食いっぷりいいなぁ(^^;と思っていると、いきなり
目の前にザンッとその袋を出されました。『食べなよ~』と。
結局、電車を降りるまで英語でずっと話し掛けられました。
私、英語は話せないのに・・・その人、別れ際めっちゃ笑顔で、
ブンブン手を振ってました。まだ日本にいるんだろうか・・・