くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

骨太単独行 哀愁の奥多摩その4

2004-10-14 04:04:17 | 連載もの 骨太単独行
 夜間、空腹で目が覚めた。ちゃんと夕飯を食ってなかったのだ。フリーズドライのスパゲッティを作り、ついでに小用のために外に出る。
 細かな雨が顔に当たって気持ちがいい。このまま明日も小降りだったら登山を強行してもいいかも。
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 初めて一人でキャンプをしたときには、暗闇が恐ろしく思えたものだ。小用のときに外に出ることが出来ずに、入り口のジッパーを開けてそこから放尿したのだった。今は黒々とした木々や夜空を眺めながら雄大かつ深遠な気分で用を足す。背後の茂みで物音が起こっても決して慌てずおっとりとテントに戻り、全てのジッパーを閉めて意味不明の歌を大声で歌うようにしている。プロの貫禄というものである。

 出来上がった料理を食べながらまた読書。フライシートの下で雨宿りをしているコオロギが愛おしい。雨が激しくなってきた。空になった鍋を外に出して横になる。耳の位置はほぼ地面と同じ高さだ。だから雨粒が地面に当たる音が聞こえる。ここらは草地なので太鼓を叩くようにボンボンと小気味良い音となっている。雨水が集まってどこかで流れを作っている音も聞こえる。当たり前のことなのだが、ひどく新鮮だ。雨はただそこらに降るのではない。雨は心の中に降るのだ。
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 夜明け前、雨はバケツをひっくり返したような土砂降りとなった。どうしようもないので朝8時から正午までフテ寝。それからまた山を下りて町に出る。奥多摩駅を過ぎて青梅街道をひたひたと歩いていくと奥多摩温泉もえぎの湯である。気の済むまで歯を磨いてから露天風呂へ。湯船に浸かって見上げると、天空から細かな雨がひっきりなしに落ちてくる。杉の葉が雨粒をまとって輝いている。なかなかいいぞ。
 帰り道に湧き水の汲み場があったのでそこで水の補給。またまた一時間あまり山を登ってキャンプ地へ帰投。なんだか本当に変わったキャンプになってしまったなあ。

つづく
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