まだだ!まだひっくり返すには早すぎる!!
外出をした帰りの電車内で、唐突にお好み焼きを焼く情景が頭に浮かんだ。
じゅうじゅういう音、ソースの香り、身をよじる鰹節。はふはふしながら、生ビールをぐいっとな・・・
これはもう喰わずに済ます事は不可能だ。
想像であるに関わらず、ソースの焦げる香りマジックに見事にはまってしまった。
そして俺は、わざわざ一駅乗り越して、馴染みのお好み焼き屋へ足を運んだ。
ところで独りでお好み焼き屋に入ると、時間の流れが変わった気がすることってないですか?
なになに?私は友達に恵まれているから独りで入ることなんかないですって?!
まあ、そう言わずに聞いてくださいな。
拙の場合は、メニューを選んでから生ビールや生地が運ばれてくるまでは、ごく普通に時間が流れる。
ところが、生地を鉄板に流して、ひっくり返すまでの間が長いのなんのって、時間の長れが急に遅くなる。
まるで時の魔法を掛けられたみたいだ。
しかも、拙の生地は、周りの水気が引く前に何度も、「私を早くひっくり返して!」と誘惑してくるのだ。
それはまるでセイレーンの声のように脳裏に木霊する。
あの誘惑から逃れることが出来るのは伝説の勇者くらいだろう。
そして、勇者ではない拙は、7割くらいの率で、その誘惑に負ける。
まだ生地の周囲がブチブチ泡だってさえいないのに、ひっくり返そうとして失敗してしまうのデス。
でも、焼き上がってしまえば、味に変わりはないだろうから、まあいいさ。
やがて生地が焼き上がり、ソースを塗って、削り節が艶めかしく身をよじれば、お好み焼きの完成だ!
さあ、ゆっくりとお好みの風味を堪能しよう・・・と思っているにも関わらず、勝手にコテが加速する。
今度は、さっきまで止められていた時間が堰を切ったように流れ過ぎていくよ。
そんな訳で、拙の独りお好み焼きは、いつも熱々度マックス。
生ビールの助けを借りても、口内の軽い火傷を伴って、あっという間に終了するのです。
お好み焼き屋にはj時間を操る時魔道士がいるのだ。
そして、独りでお好みを愉しもうとすると、ちょっかいを出しているに違いない。
嘘だと思うなら、今度独りでお好み焼き屋に行って試してみてよ。きっと時の魔法に掛かってしまうから。
御静聴ありがとうございました^^