デンマーク・ハーフキッズ

デンマークについての情報やニュースを紹介、またデンマーク人と日本人のハーフの子供たちの子育て日記。

「民主主義 デンマーク風刺画事件を追って」

2008-01-09 23:35:20 | デンマーク・ニュース
 NHKの33カ国共同制作番組「民主主義」の中で、デンマークの風刺画問題のドキュメンタリー番組が放送されました。あらゆる角度から民主主義を問うという主旨の番組でしたが、このデンマークについての番組は個人的に特に興味深く見ました。

 このブログの中でも風刺画問題を以前書きましたが、この番組を見て、思いを深くした部分、認識を新たにした部分がありましたので書いてみたいと思います。

 まずはじめに、番組の中で「デンマーク社会におけるアラブへの嫌悪感が問題だ」というムスリム側の意見に、私は深く納得してしまいました。これは何もデンマークに限ったことではないと思いますが、私達西側の人々はアラブに嫌悪感を抱いているというのは決して言い過ぎではないように思います。嫌っている人には自分も嫌われる、というのが人の常だと思いますが、こうしたことがアラブ対欧米という図式の中でもあるのではないでしょうか。もちろん、自分を正しいと思うことは自然であり悪くないのですが、相手を間違っている、悪い、おかしい、と決めつけているのではないか、果たして私達はアラブ社会をどれだけ理解しているだろうかと思いました。

 また同じくムスリムの指導者の一人が、「われわれのやり方が最も正しいのだ、自由と言うが本当の自由は存在しない。信号が赤なら止まらなくてはならない」というようなことを言っており、これもあながち間違った意見とは思えませんでした。私自身、今、民主主義の定義がわからなくなってしまっていますし、日本に民主主義があるのか、自由があるのかと聞かれたら、ないかもしれないと思ってしまいます。ムスリムの世界の女性差別については認められませんし、アラブの国々には一般に民主的ではなく、それは受け入れがたいことではありますが、かといってすべてアラブの考え方が間違っているとは言い切れないとも思います。ここでいう、何が正しく、何が間違っているかはやはり個人差や文化の差なのだと思いました。

 そういった民主主義、報道の自由、表現の自由を標榜しているデンマークと、ムスリム国家は互いに触れてはいけない、アンタッチャブルな存在なのだというのが、番組を見て私は改めて認識することとなりました。文字をメインに報道を追っていましたが、今回映像で当時のデモや大使館への放火、国旗への放火、当時の登場人物たちなどを見て、事態は私が想像していたよりも重いものでした。

 個人間でも同じですが、自分とどうしてみても合わない人とはつきあわない、関係しないに越したことはありません。程よく互いに距離を置くことが一番よいと思います。同じ国土の中でそれを強いられているデンマーク国民の努力は大きく、それについては本当に評価されるべきと思いますが、今回の風刺画については相手の領域に土足で入り、合わないのがわかっているにも関わらず挑発をしたことだったのではないでしょうか。触れてはいけないことに触れた、それは挑発だったとしか思えません。そして善悪の決着などつけられない価値観の問題であるのに、こうした行動を取ったデンマーク人を、私は非常に子どもっぽく思えてなりませんでした。もちろんここに至るまでの彼らのフラストレーションは加味しなくてはいけませんが、それでも最終的には彼らの態度を子どもの喧嘩のように思ってしまいました。日本でも個人としては挑発的な発言をする政治家もしばしばいますが、デンマークでは反対意見もあったにせよ、結果として国を挙げて、というあたりに正直驚いています。

 それとも私が、相容れないイデオロギーを少なくとも受け入れようとしていたデンマークを理解していなくて、子どもっぽい意見を言っているのかもしれないと思いつつ、以上、私の見解を書いてみました。

 同時に、息子を2人殺されたというムスリムの活動家が、その殺された息子の写真を見せるシーンを見て、そもそも平和な日本に住んでいる私がムスリム人に意見する資格などないのではないかとも一瞬、思いました。私の考えている民主主義やら、イデオロギーや価値観などは、そもそもすべて甘い認識なのだろうなと思わざるを得ないシーンでした。

 また初めて元ユランズ・ポステンのフレミング・ローズのインタビュー映像を見て、この人は本当に渦中で怖かっただろうなと思いました。ここまで広がるとは予想をしていなかったことだったでしょう。そういう意味では、彼は勇気を持って、原論の自由とは何かを示したことは確かな事実だと思いました。その見返りも含めて。


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5 コメント

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新年おめでとうございます (ちゃっぴぃ)
2008-01-10 19:14:53
クリスマス祝膳を2回も(!)用意されたんですね
心底尊敬してます

お正月は 本、映画、TVと
「デンマークを探る」他
「幸せになるためのイタリア語講座」
「風刺事件を追って(Bloody Cartoons)」
デンマークに関する事をポチポチ吸収しつつ過しました
(学生時代からの悪癖;一夜漬癖が抜けてません)

どれもが”デンマークの在り方”を表しており 面白く拝見しました
私がpip君や義父を より理解する上で
新たな助けを得たとも考えてます
→日本では「チャンスには前髪しかない」から先手を打つべきだと教えられるし私も体感的にソウ思ってるのですが デンマークでは慌てる必要も無くチャンスには長い尾が付いてる気がします 私がpip君を急かすと必ず喧嘩になる原因はコレだと理解しました 

デンマークで自己確立した思春期に 親の離婚が原因で日本へ捻じ込まれた(彼からの視点)pip君
(母親に連れられ13歳の12月に日本へ 言葉の問題から2級下げ小学校5年生へ編入 思春期だから自己確立なのでは無く 幼稚園で既に確立を促されてるんですね)
「最初から最後まで空気を読んで場に馴染む事が基調として望まれる」日本社会
今でも周りと自分との折り合い方が巧みではありません 中途半端に日本ナイズされより複雑化?
(親しい人との関係性ではホボ問題無いですが 集団に置いては最終的に異端児です)
周囲が当たり前と期待するレベルでは空気が読めない(必要性を感じない)為
(デンマークではアジア系と差別され 日本では外人だとの差別 お陰で人の顔色には敏感になっており最初はスムーズです)
不器用な人として 事ある毎に悶々と沈む事も多い様子です
(外見上は全く北欧人らしさ(金髪・碧眼・高身長)と皆無で”濃い日本人”に見えてしまう事も敗因です)

まだ面識も無いのに失礼ですが 伺ってもいいですか?
ハーフキッズさんのご主人が来日されたキッカケを教えて欲しいのです
成人後 自分の意思で人間中心の政治が健全に運営されてる国家から
お上制度が罷り通ってる経済主義国家での生活(悲観的過ぎるかしら?)を
選んだ方の話を伺いたいです

今週末から極寒のデンマーク(怯)へ行ってきます
私の発っての願いでロスキレだけは観光させて貰う予定です
(老父の下で時間を過すのがメインですので観光は後回しです)
札幌(冬季の札幌を2度体験)より寒く 何より暗い冬って話ですので
私が寒さに音を上げ 引き篭もるかもしれませんね
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Unknown (Denjapaner)
2008-01-11 04:14:28
日本にいるとどうしても、イスラームのことは遠い世界の出来事に思えてしまうのは仕方ないかもしれません。日常でもムスリムの人に出会うこともありませんし、率直に言って謎が多いですよね。

デンマークでたとえムスリムの人の「隣」で暮らしていても、結局生活が違うので(平行社会、と呼ばれる所以です)、スカーフの下はどんな髪型なんだろう?とかそんなつまらない疑問さえも解決してくれる「友達」を探すことさえ、難しいのが現実です。頭にスカーフをしている女性と話したことが今までに何回あったでしょう。たぶん、2回くらいです。このつまらない疑問点も、聞いたところ「普通に長い髪の人もいるし、短い髪の人もいるし、変わらないよ」と言われ、当たり前すぎる回答に自分の無知と距離感を感じて恥じました。

アンタッチャブルとはちょっと違う気もしますが、この時にデンマークがprovocativeな態度をとり続けたのは事実ですし、イマームが首相に会いたいと言ってきた時に対話を断ったことも間違いの始まりだったと思います。いずれにしても、デンマーク国民にとって「デンマーク人である」と言うことを恥じた/隠したいと思った初めての瞬間であったという点において、歴史的な意味を持った事件だと言えます。

日本でも、最大野党が大連立を考慮する時点で民主主義歯存在しないのではないかという危惧さえ覚えますが。いずれにしても、誰もが合意できる定義を見つけるのは容易ではないですね。
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Unknown (halfkids)
2008-01-13 18:08:21
ちゃっぴぃさん、

今頃はもうデンマークかもしれませんね。
ご質問の私の夫のの来日の理由ですが、がっかりさせてしまうかもしれないのですが(笑)、夫にはイデオロギー的な理由や確固たる信念などはなかったようです。単に当時、就職難で、大学を卒業しても仕事がなかったようです。そこでフランスと日本の企業に履歴書を送ってみたところ、日本企業から反応があり、たまたま採用されたので来たとのことです。彼は忍術に興味があり、それが日本への興味の理由でした。
まだ彼も若かったので、日本での生活が楽しかったそうです。逆にご主人のようにティーンエイジャーで来た訳ではなかったので、アイデンティティーの問題のようなものは全くなかったと思います。そのうちに日本に10年も住み着くとそれでも嫌気がさして、他国への展望もあったようですが、まあ、いろいろあって、私とも結婚することにもなり、そのまま居座ることとなっています。

先ほども書きましたが、ご主人のほうがご自分の中での葛藤のようなものがあるかもしれません。大人にまだなってない年齢に日本に急に住むことになったのですものね。そのあたりが今、ハーフの子どもを持つ親である私にとって、少々懸念するところでもありますが・・・。

デンマーク滞在、楽しんでくださいね!

ロスキレはかわいい小さな町ですよね。冬のバイキング博物館は寒々としていて、バイキングの剛健さをしのんだ思い出があります。


Denjapanerさん、

ちゃんと深く研究されているDenjapanerさんにコメントをいただいて、少々恐縮していますが(笑)。
あの番組を見て私が本当に思ったのは、西側社会とイスラムの社会は互いに違う世界を生きているのだ、ということでした。人間というものの幅の広さは年齢とともに思い知るばかりですが、この違いもそのひとつだと思っています。
あるいは教育というものが行き届けば、両者はもっと近づけるのだとも希望を持っています。西側社会はそういうことを考え、少しずつでも実行しようともしています。
現状として互いにそういう相手ならば、やはり無視ではないにせよ、いきなり核心に触れずに、違う方法で両者の間を探っていくのがやり方なのではないかと考えています。
デンマーク人もそれまでの寛容性への評価を打ち砕くようなああいった風刺画を、どうして載せちゃったんだろう?と私は残念に思っています。もっとデンマーク人は成熟していると思っていたのですが、それは私の思い込みだったのかなと。

日本の政治はそもそも民主主義という意識が国民に希薄なのだと思います。わからないから、やっても変わらないから、他に楽しいことがいっぱいあるからとせつな的に生きているんじゃないかな。そろそろこういうことが変わってくるといいのですが・・・。
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丁抹より日本の方が寒いです (ちゃっぴぃ)
2008-01-23 21:18:18
出発日の朝も小雪が舞い 今日も雪が舞ってますね
ロスキレ ヨカッタです
大聖堂;他の協会に較べ 欧州っぽいゴシック要素を持ち 時代時代で装飾されたお棺達(王族とは言え何故大量のお棺を眺めてるんだろう…)の対比も面白かったです(今までみたユラン半島側の教会が素っ気なかったもので)
ヴァイキング博物館;何たって立地条件がよかったです 硝子越しに見るかもめの群や海岸沿いの家並み 寛げる美術館(博物館)を造らせたらデンマーク人の右に出る人は稀でしょう
フランス系貴族がケルト民族を圧制した階級社会の英国と違い 王国の成り立ちからしてデンマークってケルト文化の継承が色濃く出てると思います それが立体物(船 家 現代の雑貨デザイン)の面白さかな? 敷石やお棺のレリーフでも目の表現が独特(ケルトっぽくぎょろ目なんです)でかなりお気に入りです

ある日 義父に風刺画の話をふってみましたが 異文化への歩み寄りが無い彼(世界各地を旅行してるのに…)は途端に不機嫌に 素地の違いを理解すべきって事を理解してもらえませんでした
でも旅行者の眼からみても5年前と比較して 移民らしき人は増えてるし 街に蔓延る米国的落書きの多さ コペンハーゲンは確かに荒み始めてます 今回は幼い頃にpip君が住んでた辺りも行ってみたのですが荒涼とした部分が目に付きました
公立学校も荒れてるそうです 日本ほど学資がかからない事もあり 私学志向が高まってるそうです 義父の従兄の孫(8歳♂)が1人 不登校気味だったもしました(でも 従兄弟同士仲良くく遊ぶ姿は明るく 日本から買って行ったお菓子を選ぶのに1時間以上考え抜いてた姿からするに 他の子に較べて色々と吟味し過ぎる性格でリズムが少しズレてるのかしら? とも思いましたが)
滞在期間中に子どもに悪戯をしてた先生が捕まったニュースが流れてました 遠過ぎて伝わってこないだけで抱えてる問題は日本とサホド変わらないと感じました
福祉大国での福祉も軽減への一途だそうで これからの丁抹はどんどん良くなくなる とも言われました

pip君のアイデンティティの問題は 彼自身長らく認識しようとしてなかった問題で 夫婦になった事で日本の一般男性と何が違うのか対応に困った私が模索し始めた為に気付いたのが発端だと思います
彼の場合 文化圏が一気に変わった事と 目の前から父親が消えた事等 思春期に辛い事が重なった結果の問題をハーフだからと問題を摩り替えてた(勿論1部は該当します)ので 今 その頃に考えるべきだった事を今やってるって感じでしょうか? カナリ遅い目覚めなのかもしれません
旦那さまが滞日10年目にして嫌になった部分と恐らく同等な事を感じて暮してるのでは無いかと思います(黒毛・茶瞳なので 見掛けが外人なのか濃い日本人なのか判断を躊躇させるため 日本人側が区別してくる基準が曖昧で中途半端に仲間扱いされてるのにも関わらず最後に壁を感じてしまうのが混乱の元みたいです)


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Unknown (halfkids)
2008-01-30 08:02:08
ちゃっぴぃさん、

いろいろと収穫のあったデンマーク旅行だったようで、そして無事にお帰りになったようで何よりです。

そう、日本の問題(まあ、猟奇的なのはあまりデンマークにはないようですが)は、大なり小なりデンマークにも存在しているようですね。いじめ、非行、薬物などはどの国でも同じなのかもしれません。
要は最後はその人次第、ということでしょうか???

pip君の場合は思春期の問題と家庭の問題、そして自分自身のハーフということの問題が少々絡み合ってしまったのかな?
別に親が離婚していなくてもハーフでなくても、誰でも人はよりどころが必要だと思います。そういうのをこれから見つけていけるといいですね。
それが逆に今後pip君の持っている利点を生かして、ぐっとはばたく原動力になるのかなと思いました!
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