デンマーク・ハーフキッズ

デンマークについての情報やニュースを紹介、またデンマーク人と日本人のハーフの子供たちの子育て日記。

ホスピスの話の続き

2011-09-04 05:38:05 | デンマークについて
 今回のホスピスの入院の前、短期で義母は数日ホスピスにお世話になったことがあったようで、そのときの対応が本当によかったと義母は何度も言っていました。「とても優しかった」と。デンマークでは何かとしばしば不親切な対応を受けることもあるので、ホスピスの人達の優しさは義母にとって本当に心休まり、印象に残るものだったようです。

 そのとき、まずはホスピスで義母と看護師とのミーティングがあったそうです。しばし、質問や話が行われた後で、その看護師の方が「あら、あなた、もしかしてタバコを吸うんじゃないの?」と尋ね、義母がそうだと言うと、「あら、ごめんなさいね、気づかなくて。」と急いで灰皿を取りに行き、「ここでは何でもすべてあなたの好きなようにしていいのよ」と言ったそうです。

 そうしたホスピスがどのようなものなのか、前回紹介した本ではその理念や日々のケアなどが書かれており、私のデンマークのホスピスへの理解を深めてくれました。本の終わりではベテランの看護師リタ・ニルセンがホスピスについての説明をしています。「患者さん1人ひとりや、その家族の方々と対面することは強烈な体験でした。私は教室でクラス全員を教えることには慣れていましたが、ここでは1人の人と向き合って話をするのです。そのシンプルながら深いふれあいに感動しました」「生命に焦点を当てる、つまり人は死ぬまでは生きているのです。患者さんたちは余命がかぎられているし、体調のよい時間となればもっとかぎられたものとなります。たとえば、一日に10分とか、そんな限られた時間ですから、本人の願いを優先させることが大切です。外の空気に触れたいですか?お葬式の準備をしたいですか?それとも、まったく別のことをしたいですか?と」。こうした気持ちで、多分義母にも接してくれているのでしょう、現在入院している義母には何かを強要されることもなく、けれども、いつも傍らにいて話しかけたり、義母の幻想の話を聞いてくれたり、義母の要望に応えようとしてくれています。

 著者は「リタ・ニルセンは、患者に付き添って死の谷に向かう道のりをいっしょに歩き、その途上で思いやりと心の慰めを提供する。死に直面している患者に対して、彼女は同僚達とともにプロの技術と人間性を提供するのだ」と書いています。リタは「プロの技術を使って、痛み止めを投与したり身体上の介護を施したりします」と言っていますが、こうしたことは家族がやりたくてもなかなかどうしたらよいのかわからず、ひたすら困惑する部分です。技術的なことは病院でも提供できると思いますが、死に直面している患者や動揺する家族に対し、深い人間性をもって心から接してくれること、ときには勤務時間を過ぎてまで向き合ってくれることに、どれだけ患者も家族も感謝することでしょう。

 また、スタッフはできるかぎり家族を支援し、それを通じて家族が患者を支援し、「ご家族がもつ親身な愛情が、患者さんに奇跡をもたらしてくれるのです」とリタは語っているが、まさに私達が夏にデンマークに行くということだけが義母の支えであり、その終わりとともに、義母は生きる意欲を失くしてしまったのでした。私達が望めば、サンクト・ルカス・ホスピスは実際に何でも応えてくれようとしてくれていますが、私達家族が遠く離れ、遠隔操作しかできないことをとてももどかしく感じています。

 私も癌で死ぬときはホスピスがいいかな。家で死ぬのがいいのかなと思っていたけれど、家族は私がいる分、自分の生活を縮小したりストップすることになってしまうこと、プロフェッショナルな人のケアが身体的にも精神的にも私自身必要だろうということから、ホスピスが最良の選択のように思います。義母を見ながらそう思っていましたが、この本を読んで、さらにそう思うようになりました。とにかく、サンクト・ルカス・ホスピスの方々が、技術的・人間的にプロフェッショナルであることに深い感謝と尊敬を、今は遠い日本から日々感じています。
 

 
 


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