デンマーク・ハーフキッズ

デンマークについての情報やニュースを紹介、またデンマーク人と日本人のハーフの子供たちの子育て日記。

民主主義 対 民主主義

2009-04-23 17:16:12 | デンマーク 政治・歴史関係
 別にこのタイトルはレイプハルトの『民主主義対民主主義』というわけではないのですが、先日、ショウミーのデンマーク語の通信教育の教材に早くも民主主義が登場したことにちょっと衝撃を受け、また、日本・デンマークの民主主義観の違いについてぜひ書いてみたいと思いました。

 その教材の1ページに「デモクラシー」というテーマがあり、イラストとともに、いくつかの質問が載っています。その質問の見出しはmedbestemmelseとなっていて、これは日本語だと「一緒に決めること」とでもいう意味で、つまり、民主主義とは一緒に決めることであるというわけです。

 その上で質問が載っています。4つの質問があり、あなたの家では誰が一番多くのことを決めますか?あなたはお家で何を決めますか?(-洋服、夕食、バカンス、ベッドタイム)、あなたのお母さんかお父さんが決める3つの例を挙げてください、もし土曜日にあなたがお家のことをすべて決められるとしたら、何をしますか?というものです。

 日本人の場合、民主主義と言われて何を思い浮かべるでしょうか?もちろん、たくさんの答えがあると思いますが、私は子どものころから「民主主義=多数決」だと思ってきました。もちろん実際の政治のうえでは議員を多数決で決めていく(正確には選挙の当選者決定方法によって違いが出てくることもあるけれど)わけですし、議決も多数決で行われるわけです。

 一方、デンマーク人の民主主義に対する考え方は、この教材からは「どの意見が多数か」というよりも、「どのように歩み寄るか」という基本姿勢があるように思いました。家の中で、誰が何を決めるか、でも子どももある程度、自分の意思をもって参加することができるということを表しているように思いました。それがmedbestemmelse、一緒に決めるということです。

 以前、あるデンマーク人と企業の中で誰がどう決定するかという話をしたときに、彼はデンマークではみんながどんどん意見を出し、どの意見を選ぶかではなく、どのように互いに歩み寄り、一番いい答えを出すかというやり方をすると言っていました。このテキストにある「一緒に決める」ということにしっかりと共通しているように思います。

 このように、ごく小さなときから民主主義というものを、意見を出して一緒に決めると教えられるデンマーク人の民主主義観と、もっと大きくなってから多数決で国民の意思を測ると教えられる日本人の民主主義観というのは、根本的にあまりにも隔たりがあるように感じます。

 私の卒論のテーマでもあるこのデンマーク人の民主主義ですが、日本人とあまりにも土台が違っているように見え、本当に面白いなと私は思っています。そして子どもの教材で、こんなところから違い始めているのだと今回知って、少々ショックを受けたわけです。
 

国会議事堂 Folketinget 見学 【その2】

2008-08-28 11:41:38 | デンマーク 政治・歴史関係
 ガイドの方が話してくれたいくつかの面白いエピソードを紹介したいと思います。

          

 ひとつ目がこれです。この小さなテーブルが本会議場の外のホールの片隅に置いてあり、私もなんだろうと思って見ていたのですが、これは以前使われていたシガレット置きだそうです。昔から本会議場の中は禁煙となっており、休憩時間になると議員の方たちがこのホールでシガレットを吸いました。シガレットは吸うのに時間がかかるそうで、休憩時間が終わると吸いかけのシガレットをこのテーブルのシガレット置き場に置いていったそうです。このシガレット置き場には番号が振ってあり、係りの者が置かれていくシガレットの番号と議員の名前を急いで書きとめていったそう。そうしないと誰のだかわからなくなってしまいますからね。

 次が国会議事堂の2階の壁ほぼすべてにぐるりと描かれた、絵の模様です。画家の名前は聞き取れませんでしたが、この画家が海外から招かれ、数年をかけて、壁のデコレーションとして植物の模様を描いていきました。次第にデンマークのことを知るようになった彼は、模様の中に動物や虫なども描き込むようになります。そしてなぜか熊や蜘蛛など(確かに蜘蛛はたくさんいますが、かなり大きい蜘蛛を描き込んでいます)まで描き出しました。後に彼は依頼者からひどく怒られたそうですが、私にはかわいらしいモチーフが人の心を休めてくれるように思いました。ガイドさんも「いろいろ描かれているので、探してみると面白いですよ」と笑っていました。

          

 そして、デンマーク人の友人カップルと一緒に参加していたのですが、ツアーが始まる前から、以前このツアーに参加したことがあるという友人が言っていたのがこれ、エレベータです。これは知る人ぞ知る有名なエレベータで、まず、ドアがない、そして単に区切ってあるだけの長い箱型のエレベータで、乗るときにはタイミングを計って飛び乗らないといけないそう。見ていると、子どもの頃の大縄を思い出したのですが、タイミングを計れればなんということはなさそうですが、うまくできなかったらどうしよう、とちょっとドキドキするエレベータです。ちょうど人が乗っているエレベータが通り過ぎ、他のツアー参加者も面白がってみんなバシャバシャ写真を撮っていました。

          

 最後に笑ってしまうのが、歴代の議長と首相の肖像画でした。誰が誰か忘れてしまいましたが、え~、これが肖像画?しかも国会議事堂に飾る?というものばかり。中にはきちんとしたものもありましたが、ありえない・・・と思うようなものばかりでした。ちなみにラスムセン前首相の肖像画はわりと普通に描かれているのですが、画家のサインの代わりに足元に絵の具が描かれています。まあ、絵に関しては非常に自由と世界でも有名になったデンマーク、このくらいじゃ、なんてことはないのでしょうね、きっと。

          
          退任後、別荘で描かれたそうで、背景に海が・・・。


          
          ありえないでしょう???

国会議事堂 Folketinget 見学 【その1】

2008-08-27 16:06:29 | デンマーク 政治・歴史関係

 クリスチャンボー宮殿の一部である国会議事堂では見学するためには、まず午前中に一度行き、英語ガイドツアーの予約チケットをもらいます。(一日に30名なので、早めに行ったほうがいいそうです。11時から配布開始。)2時に集合場所の国会議事堂入口に集まり、ガイドが現れて注意事項の説明のあといよいよ1時間ほどのツアーがスタートです。

          
          入り口の4人の痛がっている人の彫刻。歯・頭・胃・耳を痛がって
          おり、議員達に健康管理を促すという意味で作られているそうです。

 まず最初に案内されるのが2階にある本会議場です。傍聴席に座り、内装などの説明を受けました。天井の石膏のレリーフが美しく、正面の反対側には4つの身分を代表するという彫刻があります。席は一般席、報道関係者席、そして10月の年度始めの国会に必ず参加しなくてはならないという女王の座るスペース(椅子は取り外されてありました)があります。ここで誰でも気軽に国会を傍聴できるのだそうです。

          

 私がここで一番なるほどと思ったのは、正面の電光掲示板とそれにつながる各議席の機械です。機械には3つのボタンがあり、緑のライトがついているものが賛成、赤が不賛成、そして黄色が棄権という投票になります。そして即座に投票結果が判明するというわけですが、どうして日本はもっと議員数が多いのに、こうした投票の機械化が行われていないのかなと不思議に思ったのでした。もっともこれでは牛歩などという戦術も使えなくなりますが・・・。

          

 本会議場の見学の後、会議場を出て、今度はもうひとつの小さめの会議場に向かいます。その途中で、デンマークの4つの憲法が展示されてあります。廊下には窓側がいくつも小部屋のように作られており、誰でも気軽に座って話し込むことができる雰囲気でした。ドアもないその作りが、私にはなんだか「ちょっと話しましょうよ」というような、とても開かれた民主的な感じがして、いいなあと思いました。また、もうひとつの会議場が使われていないときには、政治的な目的であれば誰でも借りることができるそうです。 

          
          1953年のデンマーク憲法

 いくつか面白いエピソードを聞いたので、また「その2」に書きたいと思います。

社会民主党の活動 in フリマ

2008-08-24 08:48:38 | デンマーク 政治・歴史関係
 
 夫の実家のあるバレラップでの毎年の夏の恒例行事、カマフェスティバル(フリーマーケット)が今年も4日間開催され、私達も行ってきました。これは使ったものを売るフリーマーケットがメインですが、そのほかにも新鮮な野菜や果物、サラミを売っていたり、マッサージのお店が出ていたり、自分で詰めるキャンディショップなどが出店されています。レストランやパブも大きなテントで出店され、夕方以降にはライブが行われますし、移動型の遊園地もけっこうたくさんのアトラクションで設置されています。車も停め放題で、こんなに広大なフリーに使える芝生の土地があることをうらやましく思うばかりです。

 さて一昨年でしたか、前回に来たときにはこのフリーマーケットの中にポルノショップの出店があったことに驚き、笑ってしまったものですが、今回は新たに社会民主党のブースを発見、デンマークにおける政治の身近さをちょっと感じることができて、とても興味深かったです。

 社会民主党 Socialdemokraterne は、1945年以来、デンマークの政治に最も影響を与えてきました。2001年の選挙で政権を失いましたが、現在もデンマーク第2の政党です。

 ブースは全体に党のカラーである、ややスモーキーな赤で統一されて、入り口には党首のヘレ・トーニング・スミットの布製のポスターと党の旗がはためいています。そして左側には缶が3段に詰まれ、そばに「政権を倒せ」という張り紙がしてあります。その政権に見立てた缶に向かって、思い切りボールを投げようというもので、シンプルながら、ちょっとおかしくて笑ってしまいました。ショウミーはもちろんやりたがり、見事、命中!政権を倒したご褒美に「社会民主党キャンディ」をもらいました。

          
          3段の缶が詰まれています。

          
          社会民主党キャンディ。中味は1種類はラクリスでした・・・(やはり)。

 そしてブースの右側にはパンフレットや本、子ども用のぬりえが置いてありました。感心したのは、これらがとても地元密着型なのです。パンフレットは3-4種類あり、ひとつは「何かしてみよう(主張してみよう)」というタイトルで、入党をするとこういうことができますという具体的ないくつかのことなどが書かれ、入党の申込書がついています。次に「ファーストクラスの健康をすべての人に」というパンフレットで、迅速に対応できる医療をという党の方針が書かれており、これも入党の申込書がついています。そしてもうひとつが毎月出されている地元密着型の「報告リポート」です。このパンフレットはバレラップを含めて3つの町向けに構成されており、各地域のリーダーやメンバーらの寄稿、「コペンハーゲン市庁舎を見学に行きました」などというようなリポート、党の出した新しい方針や法案についての説明、地元でのコムーネの政治家たちや、社会民主党の活動グループの紹介、今月の予定(党首に会おう、地元ミーティングなど)など16ページの構成となっています。

 また本は「De stred sig frem(彼らは苦労して前に進んだ、というような意)」というタイトルで、1892年から1945年あたりまでの社会民主党とバレラップの歴史が書かれています。160ページほどの本で、中には写真も多用されており、党の歴史とともにバレラップにおける詳細について丁寧に書かれています。こういった本をまとめあげるのはすごいことだと思います。もともとバレラップは社会民主党が強いようですが(市長も社会民主党)、それにしてもこの本に費やされたエネルギーの大きさと思いの大きさに、感銘を受けました。こうした本が地域への愛着や地域の政治への関心を促すことでしょう。

 私たちがこれらの印刷物をぱらぱらと見ていたら、中からバレラップのリーダーという方が出てきて、名刺をくれて、少し話をしました。いつでも、何でも聞いてねと言ってくれたのですが、本当に気軽に聞いていい雰囲気でした。(日本で政治に携わる人が、こういう気軽さを持ち合わせているのかな?と改めて考えさせられます。)

 こうしたフリーマーケット会場に気軽にブースを出すこと、開かれており、誰でも気楽に立ち寄れること、いろいろと工夫をこらしながら、足元から人々を巻き込んでいこうという姿勢が、私にはとても新鮮に感じられました。パンフレットもできるだけシンプルにわかりやすく書かれており、その平易な言葉こそは人に何かを伝えやすいものだと思います。選挙中は駅などでいろいろ配ったりという活動などもあるそうですが、普段からのこうした「開かれた」雰囲気、誰でも気軽に意見を言えるような場の提供などが、人々が自分が政治に「影響できる」ことを認識させ、これがデンマークの政治を大きく支えているのかなと思いました。日本とデンマークの投票率の違い(2007年総選挙の投票率は86.53%)に出てきているのかもしれません。
          
           移動型遊園地のバンジー?ジャンプで

2007年デンマーク総選挙から

2007-11-29 16:46:57 | デンマーク 政治・歴史関係
 11月13日(火)、デンマークでの総選挙が行われました。今回、デンマークにおける選挙というものに初めて私は注目してみましたが、日本からだと残念ながらなかなか実像の見えないものでした。なんといってもデンマークは日本では報道されず、選挙結果はネットのニュースで「現政権が続行」という程度の情報は得られましたが、それ以外のマスコミではほとんど報じられることはありませんでした。(デンマークという国の日本における影の薄さを、今回も改めて実感することとなりました。)

 情報収集に努めてみたものの、デンマーク語のできない私にはかなり限界がある、というところでした。最終的に、デンマークの各政党の公約といったものを私の中で明確にすることはできませんでしたし、各政党の党首のカラーなどもあいまいにしか見えませんでした。これは少々愚痴になりますが、デンマークの政党も名前が非常に似ていて、また日本の左派右派というのとも土台が違い、政治思想の土台が違うため、全体を正確に理解するにはますます困難を極めています。おまけにそういったことを説明している文献が、日本語ではほとんどありません。

 それでも選挙の結果は明確に出ており、最初に書きました通り、現政権が続投ということになり、デンマークが大きな舵取りをして路線を変更することはなさそうです。今回一番の注目であった、新政党「新同盟」は思ったほど議席を伸ばしませんでした。この政党がなぜ注目されていたかというと、党首のナサ・カダー氏が移民であったからです。彼はシリアからの移民であり、2005年あたりのムハンマド風刺画問題の際に、デンマークとイスラム諸国との間に立って活躍したという経緯があります。移民受け入れによる問題を抱えるヨーロッパの中で、とりわけ厳しい外国人の流入に対する政策を採っているデンマークにとって、この新同盟による緩和政策が注目されるところであったと私は解釈しています。が、思ったほどの票の伸びはなく、それでも議席は確保したものの、5席にとどまりました。

 今回の選挙を見終えて私にとって面白いなと思ったのは、人々の保守的な心が意外と根強いものだということです。先ほどの外国人に対する政策の厳しさは、他国からの非難を受けるほどでもあります。デンマーク人自身もこの政策をやりすぎではと思っている人も少なくないようです。けれども、デンマーク人は最終的には保守に回りました。このことから思うのは、人間は昔も今も、自分の財産を守ろうという保守的な気持ちがどんなに強いかということです。17世紀から18世紀のイギリス革命、そしてフランス革命において、何が最終的に目的だったかというと「自分達の自然権(今で言う基本的人権のようなもの)を守る」というものであり、絶対君主からの絶対権力からの自由を求めたものでした。これをリベラリズムというわけですが、もっとかみくだいていくと、つまりは私的財産の尊重というもので、自分達の財産をどうやってでも守ろうというところに、その時代の人たちの革命への強い原動力となったわけです。ただし、これは当時の市民層でのことであって、都市下層民においては少々事情が違ったわけですが・・・。

 デンマークの今回の選挙はもちろん移民政策が一番の論点だったとはいえませんが、少なくとも選挙結果の一部の要素として、こういった人間の不変の保守性が表れたように思い、私は非常に面白いなと思いました。一方で、革新的に、協働的に生きていきたいと思いつつ、もう一方では保守的に、自分本位になるのが人間というものだと思います。時代を超えて、国を超えて、人々はそうやって自分を守り、家族を守ろうとして、日々やっているわけなのでしょう。

不思議なデンマーク国王名

2007-02-24 17:19:09 | デンマーク 政治・歴史関係
 デンマークだけではないようですが、なぜ国王の名前が同じ名前なのか?とデンマークの歴史の本を読んでいると不思議に思います。フレデリック(フレゼリク)とクリスチャンという名前が延々と繰り返されています。何世とあとにつきますが、わかりにくいことこの上ありません。

 日本では歴史上の人物の名前が重なるということはありませんので(恐らく)、日本人の私にはどうして名前を変えてくれないのだろうと少々恨めしく思いさえします。なかなか覚えられないし、そもそも誰が誰なのか理解したかと思うそばから混乱してしまいます。

 これはなぜこういうシステムになっているのでしょうね。デンマーク人にとってもなかなか混乱することではないのでしょうか。おそらく、そのために王様の名前の後に通称(青歯王など)がついたりしていますし、いつもいつもフレデリックというわけではなく、クリスチャンと交互に名づけられています。理由を知っている方がいたら、ぜひ教えていただきたい歴史の不思議です。