いつの頃か記憶は定かではないが、恐らくテレビで観た京劇の場面が強烈な印象として脳裏に刻まれていて、いつか機会があったら本物を観てみたいと思い続けていた。派手な化粧と衣装に甲高い声での歌とセリフ。シンプルな動きと曲芸のような激しい動きが入り混じって、それらを盛り立てる独特な音色とメロディーの音楽。要所要所で俳優が見得を切るときは、思わず声をかけたくなるほど興奮がクライマックスに達してしまう。
youtube でも京劇を観ることができるのだが、観るたびにやはり一度本物を近くで観たいという衝動がふつふつと湧いてくるのだった。そんな時、タイペイアイというコンパクトにまとめた観光客向きの劇場が台北市内にあることを知った。インターネットで調べると、役者があの独特な化粧をしているところや、楽器を演奏するところを間近で鑑賞させてくれるという、何とも嬉しい演出までしてくれる施設だという。
これは行かない手はないと、今回の旅を思い立ったわけであった。到着したその晩に早速出向いて、念のため開場の1時間も早く行ったが、まだチケット売り場は開いていなかった。近くの喫茶店で時間を潰してから、一番乗りでチケットを購入したが、客は場内の半分にも満たなくて少し拍子抜けした。
開演までの間、ロビーで琵琶の演奏を見たり、実際にその晩に演ずる女優さんの化粧するところを見たりして、ワクワク感を募らせていった。前半は、中国独特の獅子舞の演舞で、これはコミカルな動きと、かなり高度なアクロバティックな演舞で、約30分堪能した。10分ほどの休憩の間も、ロビーでは役者さんとの記念撮影の時間があったり、女優さんの踊りと歌の実演があったり、サービス精神満点の演出で、ファンにはたまらないひと時だった。
京劇の演目は定期的に変わるようで、その晩は「白蛇伝」の中の「金山寺」だった。これは、有名な妖怪白蛇が人間の美青年と恋に落ち、それを知った金山寺の和尚が引き離そうとするというストーリーで、江戸文学者の上田秋成の「雨月物語」の下敷きになったことでも知られる中国の古い物語である。戦後、「愛染かつら」で一世を風靡した脚本家の川口松太郎がこの「雨月物語」を元に色々脚色して、監督溝口健二が映画化し、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞している。モノクロ映画だが、幽玄な少しオドロオドロしい映画に仕上がっている。
京劇の見どころは、歌とセリフと、しぐさと立ち回りと言われていて、歌舞伎と同じように、節目節目で役者が伴奏に合わせて見得を切るところもたまらない。また、歌舞伎では歌を歌わないが、京劇ではひときわ甲高い声で独特なメロディーの歌を歌う。それに歌舞伎には女優がいないが、京劇は女性は女優が演じ、かなりハードな立ち回りも見事にこなすので、これも見どころの一つとなる。
「金山寺」でも、最後のクライマックスの戦闘シーンでは、槍を投げたり、飛んできた槍を次々に蹴り返したり、最後には背中越しにかかとで、バックキックして返したりして、興奮は最高潮に達した。その晩は、観客数がたかだか100人くらいだったので、みんなで拍手したところでもう一つ盛り上がらなかったのが残念だった。実はカーテンコールの後もずっと拍手し続けたいほど熱狂した晩だった。
劇場を出てエレベーターに向う通路には、俳優たちが手を振って見送ってくれた。つい先ほど舞台で大きな演技を見せてくれた主演女優が、意外にも身長150cmくらいの小柄な女性だったので、驚いた。本当は、並んで写真を撮って欲しかったが、年甲斐も無く恥ずかしくていい出せなかったのが、少し心残りだった。
youtube でも京劇を観ることができるのだが、観るたびにやはり一度本物を近くで観たいという衝動がふつふつと湧いてくるのだった。そんな時、タイペイアイというコンパクトにまとめた観光客向きの劇場が台北市内にあることを知った。インターネットで調べると、役者があの独特な化粧をしているところや、楽器を演奏するところを間近で鑑賞させてくれるという、何とも嬉しい演出までしてくれる施設だという。
これは行かない手はないと、今回の旅を思い立ったわけであった。到着したその晩に早速出向いて、念のため開場の1時間も早く行ったが、まだチケット売り場は開いていなかった。近くの喫茶店で時間を潰してから、一番乗りでチケットを購入したが、客は場内の半分にも満たなくて少し拍子抜けした。
開演までの間、ロビーで琵琶の演奏を見たり、実際にその晩に演ずる女優さんの化粧するところを見たりして、ワクワク感を募らせていった。前半は、中国独特の獅子舞の演舞で、これはコミカルな動きと、かなり高度なアクロバティックな演舞で、約30分堪能した。10分ほどの休憩の間も、ロビーでは役者さんとの記念撮影の時間があったり、女優さんの踊りと歌の実演があったり、サービス精神満点の演出で、ファンにはたまらないひと時だった。
京劇の演目は定期的に変わるようで、その晩は「白蛇伝」の中の「金山寺」だった。これは、有名な妖怪白蛇が人間の美青年と恋に落ち、それを知った金山寺の和尚が引き離そうとするというストーリーで、江戸文学者の上田秋成の「雨月物語」の下敷きになったことでも知られる中国の古い物語である。戦後、「愛染かつら」で一世を風靡した脚本家の川口松太郎がこの「雨月物語」を元に色々脚色して、監督溝口健二が映画化し、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞している。モノクロ映画だが、幽玄な少しオドロオドロしい映画に仕上がっている。
京劇の見どころは、歌とセリフと、しぐさと立ち回りと言われていて、歌舞伎と同じように、節目節目で役者が伴奏に合わせて見得を切るところもたまらない。また、歌舞伎では歌を歌わないが、京劇ではひときわ甲高い声で独特なメロディーの歌を歌う。それに歌舞伎には女優がいないが、京劇は女性は女優が演じ、かなりハードな立ち回りも見事にこなすので、これも見どころの一つとなる。
「金山寺」でも、最後のクライマックスの戦闘シーンでは、槍を投げたり、飛んできた槍を次々に蹴り返したり、最後には背中越しにかかとで、バックキックして返したりして、興奮は最高潮に達した。その晩は、観客数がたかだか100人くらいだったので、みんなで拍手したところでもう一つ盛り上がらなかったのが残念だった。実はカーテンコールの後もずっと拍手し続けたいほど熱狂した晩だった。
劇場を出てエレベーターに向う通路には、俳優たちが手を振って見送ってくれた。つい先ほど舞台で大きな演技を見せてくれた主演女優が、意外にも身長150cmくらいの小柄な女性だったので、驚いた。本当は、並んで写真を撮って欲しかったが、年甲斐も無く恥ずかしくていい出せなかったのが、少し心残りだった。