マニラに赴任する前は、フィリピン人の対日感情はかなり酷いのではないかという先入観があった。少しフィリピン関連の本を読むと、大東亜戦争中に、日本軍がアメリカ兵の捕虜たちを移動のため長いこと歩かせたという、「バターン死の行進」と呼ばれる過去があると書かれていた。
直接フィリピン人をどうした、こうしたというわけではないようだが、ただ何となく日本軍は酷いことをしたようだという印象があった。なぜなら、私の赴任先が、そのバターン半島先端にある工業団地だったからだ。
しかし、実際に赴任してみると、私の不安は単なる杞憂に終わった。先輩たちに聞いても、特に反日感情など感じないというものだった。確かにDeath March と彫られた小さな石碑が建ってたが、草茫々でまったく目立たなかったので、地元の住民はまったく関心はないようだった。
たまに、休みをもらって、マニラに買出しに出たとき、海岸近くにあるサンチャゴ要塞跡に行ったときのことだ。スペイン統治時代の要塞跡で、石で造られた要塞には珍しい水牢があった。半地下に造られた牢獄で、満潮になると海水が徐々に流れ込み、捕虜や罪人は溺死する。
見ればその構造で何なのかは大体分かるが、小さな白い看板が立っていて、説明が書かれていたので読んでみた。水牢の説明が書かれていて、その末尾には「日本軍は戦時中この水牢で多くのアメリカ兵捕虜を溺死させた・・・」という内容の一文があった。
直感で、私はこの最後の一文は、あり得ないことだと思った。当時軍律の厳しさでは世界でも定評のあった帝国陸軍がそのようなことをするはずはない。赴任する前に読んだ本には、現地の戦争体験者のエピソードとして、空腹の日本軍が村に忍び込んで家禽を盗んだが、その後には棒切れが立ててあって、先端に軍票(戦時のお札)が何枚か挟まっていた。直接その紙幣が使えるわけではないが、当時の日本兵は悪者ではなかったという印象だったそうだ。
サンチャゴ要塞の立て看板は、アメリカの入れ知恵で立てられたのだと思う。アメリカはスペインからフィリピンを奪い取ろうと計画し、フィリピン人たちにスペインを追い出せば、お前たちは独立できると、耳打ちした。だからアメリカに協力しろというわけだ。そして、スペインが降参した後、アメリカはちゃっかりと自分のものにしたのだった。文句を言って逆らう多くのフィリピン人をアメリカ軍は容赦なく殺したという。
そういう史実を私は、他にもいろいろアメリカ軍の腹黒さを物語るエピソードと共に赴任前に仕入れていた。しかし、悲しいかな、悔しいかな、ほとんどの日本人観光客たちには英文の看板は意味不明なただの板でしかないだろう。
直接フィリピン人をどうした、こうしたというわけではないようだが、ただ何となく日本軍は酷いことをしたようだという印象があった。なぜなら、私の赴任先が、そのバターン半島先端にある工業団地だったからだ。
しかし、実際に赴任してみると、私の不安は単なる杞憂に終わった。先輩たちに聞いても、特に反日感情など感じないというものだった。確かにDeath March と彫られた小さな石碑が建ってたが、草茫々でまったく目立たなかったので、地元の住民はまったく関心はないようだった。
たまに、休みをもらって、マニラに買出しに出たとき、海岸近くにあるサンチャゴ要塞跡に行ったときのことだ。スペイン統治時代の要塞跡で、石で造られた要塞には珍しい水牢があった。半地下に造られた牢獄で、満潮になると海水が徐々に流れ込み、捕虜や罪人は溺死する。
見ればその構造で何なのかは大体分かるが、小さな白い看板が立っていて、説明が書かれていたので読んでみた。水牢の説明が書かれていて、その末尾には「日本軍は戦時中この水牢で多くのアメリカ兵捕虜を溺死させた・・・」という内容の一文があった。
直感で、私はこの最後の一文は、あり得ないことだと思った。当時軍律の厳しさでは世界でも定評のあった帝国陸軍がそのようなことをするはずはない。赴任する前に読んだ本には、現地の戦争体験者のエピソードとして、空腹の日本軍が村に忍び込んで家禽を盗んだが、その後には棒切れが立ててあって、先端に軍票(戦時のお札)が何枚か挟まっていた。直接その紙幣が使えるわけではないが、当時の日本兵は悪者ではなかったという印象だったそうだ。
サンチャゴ要塞の立て看板は、アメリカの入れ知恵で立てられたのだと思う。アメリカはスペインからフィリピンを奪い取ろうと計画し、フィリピン人たちにスペインを追い出せば、お前たちは独立できると、耳打ちした。だからアメリカに協力しろというわけだ。そして、スペインが降参した後、アメリカはちゃっかりと自分のものにしたのだった。文句を言って逆らう多くのフィリピン人をアメリカ軍は容赦なく殺したという。
そういう史実を私は、他にもいろいろアメリカ軍の腹黒さを物語るエピソードと共に赴任前に仕入れていた。しかし、悲しいかな、悔しいかな、ほとんどの日本人観光客たちには英文の看板は意味不明なただの板でしかないだろう。