インドの進学試験でのカンニングの凄まじさのニュースには大笑いしてしまった。人生が決ってしまうような試験らしく、必死になるのは分かるが、試験管が見てみぬフリをしているのはどんなものか。
カンニングといえば、私も思い出すことがある。二十数年前、フィリピンに赴任したとき、通勤で社用車を運転するので、国際免許証を持参するように言われ、暫くはそれで運転したが、やがて地元の運転免許を取るように上司から指示された。会社の顧問弁護士がマニラの試験場に同行してくれるから心配ないと言われたので、少し安心して、当日は特に何も用意せずマニラ市内の運転免許試験場に出向いた。
筆記試験は地元の人達と一緒に受けるので、外国人だからといって特典はない。まず、5パターンある問題集を閲覧して、出題される問題の傾向を学習した。5択の問題が、確か25問あったと思う。フィリピンの交通法規を勉強することなく、ぶっつけ本番で受験するので、自分の常識で考えるしかなかった。
「霧の出たときは、ヘッドライトを下げる」とか、「見通しのよくない交差点では、いったん停止をして左右の安全を確認する」といった、極々常識的なことを確認する問題ばかりで、合格する自信はあった。さて、20人も座れば満席になる部屋で、試験が始った。
順調に問題を消化していると、巡回していた試験官が私の机の横に立ち止まり、私の答案用紙をジロジロ見出した。その内またいなくなって、受験者の周りを巡回している。すると、私の横に来て立ち止まり、私の解答用紙の空欄を指差し、次に問題用紙の空欄と同じ番号の問題の選択肢の一つを、人指し指でトントントンとやってから、私を見て、「わかった?」といった表情をした。
最初、私は意味がよく理解できなかったが、どうもその試験官は私に答えを教えたがっているようだった。試験官が私のところで立ち止まるたびに、他の受験者たちが私たちの方をジロジロ見るので、私は迷惑千万だった。
試験時間はまだ半分ほど残っていたが、私はすべて終わってたので許可を得て退出しようとした。試験官は答案用紙を前に提出するように言って、その場で採点した。結果は2つ間違えただけで、合格だった。
視力検査を終えて実技試験を待つ間、同行した顧問弁護士に筆記試験はそれほど難しくはなかったと言うと、彼は、ニヤリとして500ペソは効果あったかい?と聞いてきた。どういうことだ、と聞くと、筆記試験の担当官と実技試験の担当官に500ペソずつ渡してある、との事。「税金みたいなものですよ。」と言って、弁護士の老人はゆっくりと首を左右に振った。
500ペソと言えば、マニラの労働者の一日の最低賃金の1.7倍ほどだった。英語がほとんどできない先輩の駐在員たちがみんなフィリピンの免許をもっている訳がようやく分かったのだった。
カンニングといえば、私も思い出すことがある。二十数年前、フィリピンに赴任したとき、通勤で社用車を運転するので、国際免許証を持参するように言われ、暫くはそれで運転したが、やがて地元の運転免許を取るように上司から指示された。会社の顧問弁護士がマニラの試験場に同行してくれるから心配ないと言われたので、少し安心して、当日は特に何も用意せずマニラ市内の運転免許試験場に出向いた。
筆記試験は地元の人達と一緒に受けるので、外国人だからといって特典はない。まず、5パターンある問題集を閲覧して、出題される問題の傾向を学習した。5択の問題が、確か25問あったと思う。フィリピンの交通法規を勉強することなく、ぶっつけ本番で受験するので、自分の常識で考えるしかなかった。
「霧の出たときは、ヘッドライトを下げる」とか、「見通しのよくない交差点では、いったん停止をして左右の安全を確認する」といった、極々常識的なことを確認する問題ばかりで、合格する自信はあった。さて、20人も座れば満席になる部屋で、試験が始った。
順調に問題を消化していると、巡回していた試験官が私の机の横に立ち止まり、私の答案用紙をジロジロ見出した。その内またいなくなって、受験者の周りを巡回している。すると、私の横に来て立ち止まり、私の解答用紙の空欄を指差し、次に問題用紙の空欄と同じ番号の問題の選択肢の一つを、人指し指でトントントンとやってから、私を見て、「わかった?」といった表情をした。
最初、私は意味がよく理解できなかったが、どうもその試験官は私に答えを教えたがっているようだった。試験官が私のところで立ち止まるたびに、他の受験者たちが私たちの方をジロジロ見るので、私は迷惑千万だった。
試験時間はまだ半分ほど残っていたが、私はすべて終わってたので許可を得て退出しようとした。試験官は答案用紙を前に提出するように言って、その場で採点した。結果は2つ間違えただけで、合格だった。
視力検査を終えて実技試験を待つ間、同行した顧問弁護士に筆記試験はそれほど難しくはなかったと言うと、彼は、ニヤリとして500ペソは効果あったかい?と聞いてきた。どういうことだ、と聞くと、筆記試験の担当官と実技試験の担当官に500ペソずつ渡してある、との事。「税金みたいなものですよ。」と言って、弁護士の老人はゆっくりと首を左右に振った。
500ペソと言えば、マニラの労働者の一日の最低賃金の1.7倍ほどだった。英語がほとんどできない先輩の駐在員たちがみんなフィリピンの免許をもっている訳がようやく分かったのだった。