功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『殴者 NAGURIMONO』

2010-01-16 23:49:36 | 日本映画とVシネマ
「殴者 NAGURIMONO」
製作:2005年

●今回も変わり種の和製マーシャルアーツ映画を紹介すしまが、これまた癖のある一品です。本作は、格闘イベント「PRIDE」を主催していたドリームステージエンターテインメント(以下、DSE)が製作した初の映画作品。作中には「PRIDE」の格闘家たちが多数登場し、スクリーンを彩ろうとしていますが、残念ながら悲しいほどに面白くないのです。

 舞台は明治初期の日本で、陣内孝則率いる任侠集団に属していた玉木宏が、思いを寄せる遊女・水川あさみと共に組織から抜け出そうとする姿を描いています。同じ頃、陣内は篠井英介らギャングと争っており、もめ事の解決にと「殴合(三本勝負の格闘試合)」が行われようとしていました。陣内の指図で動きつつ、密かに反旗を翻そうと暗躍する玉木。そして「殴合」に命を賭ける虎牙光揮などを軸に、本作は物語を進めていきます。
作中に登場する格闘家はバラエティに富んでおり、第1試合では桜庭和志とクイントン・ランペイジ・ジャクソン、第2試合では高山善廣とドン・フライ、第3試合では虎牙光揮とヴァンダレイ・シウバが拳を交えています。これらの顔合わせを見ると、DSEがどれだけ本作に気合いを入れていたかがよく解ります。が、その気合が実を結ぶことはありませんでした。

 まずストーリーですが、本筋の途中に回想シーンを挟み込むという作風になっていて、格闘シーンがいちいち中断されながら物語が進むという面倒臭い仕様となっています。また、玉木が陣内暗殺に挑むところまでは見ていられたのですが、その後のオチがあまりにも意味不明。水川があの行動に至った理由が語られないばかりか、説明不足のまま強引に幕を下ろしていました。
メインイベントである「殴合」も扱われ方が悪く、格闘アクションは映画的な見栄えやカットが一切考慮されていません。脚色は一切行われておらず、演出らしい演出といえば殺陣の合間にスローを挿入するだけ…この手抜き行為の数々が災いして、格闘家たちの頑張りが作品にほとんど反映されていないのです。
本作の監督は須永秀明という人で、PV出身の方だそうです。しかし、氏の代表作となっている『けものがれ、俺らの猿と』も評判は良くないらしく、なぜDSEが大事な商業映画第1弾を不確かな実力のPV監督に任せたのかが気になります。なお、DSEは翌年に『シムソンズ』というカーリング映画を撮り、以後は映画の製作を行っていないようです。