浦和レッズのホルガー・オジェック監督が解任されました。
まさかの連敗スタートになったとはいえ、前年にタイトル、それも「アジア・チャンピオン」の称号を勝ち得た監督が開幕からわずか2試合で解任されたことは、世界的に見ても異例の事態と言えるでしょう。
ただ、開幕前から不安は常につきまとっていました。
昨季に小野やワシントンら主力選手と起用法を巡って何度も対立するなど、選手達との元々の関係が良好ではなかったことに加えて、
前線に新加入選手が増えたことで重要性が増したプレシーズンに、日本代表選手が合流できなかったこと、
攻守の要である闘莉王と田中達也の慢性的な怪我など、不安材料は数多くありました。
そして何より、オジェック解任の理由の1つである、「攻撃の形を見出せなかったこと」が一番大きかったかと思います。
ガンバや鹿島に比べて、ワシントンとポンテの個人に頼る部分が大きかった攻撃が、センターFWとしてはワシントンよりも確実にスケールが劣るエジミウソンと高原に代わったことで、不確定要素に変わりました。
昨季よりも“周囲のサポート”を多く必要とする攻撃が求められていたのは当然ですが、それができていませんでした。
マリノス戦・名古屋戦ともに、高原とエジミウソンが孤立している場面が目立ちましたが、それでもどうにかできたのが、ワシントンとポンテの2人です。
個人で打開できないのであれば、チームで崩す他はありません。
ガンバや鹿島と違い、ACLは「決勝トーナメント」からの出場となるため、昨季に比べれば、浦和は今後のスケジュールに余裕があるはずです。
しかし、それを考慮する猶予がないほどに、ドレッシングルームの雰囲気が修復不可能なものになっているのでしょう。
「戦術以前の話。 選手を気持ちよくピッチに送り出して、踊ってもらうことができなかった。 練習の雰囲気も重苦しいし、環境を変えるのが一番だという判断です。」
と、浦和の藤口社長も苦しい胸の内を明かしています。
そして、同じく藤口社長が語った、
「浦和は結果を求められているチーム。」
という言葉から、浦和がバルセロナやレアル・マドリードのような“ビッグクラブ体質”に陥ってしまっていることも窺えます。
後任は、これまでも浦和の「コーチ」を務めていたゲルト・エンゲルスです。
この辺りについては、以前に元リバプールのジェイミー・レドナップ(ポーツマスのハリー・レドナップ監督の息子で、チェルシーのフランク・ランパードの従兄弟)が、イングランド代表がクロアチアに敗れてマクラーレン監督が解任された直後に興味深いことを語っています。
「“コーチ”の役割は選手と監督との橋渡し。
特に外国人監督である場合、選手達は不満を監督ではなくコーチに言う。 つまり、コーチの資質として“良い兄貴分”であることが求められるわけであって、エリクソン政権時代にその“良い兄貴分”だったマクラーレンが監督になっても、イングランドの“スーパースター”達に威厳を示せるはずがなかった。」
と、「監督」と「コーチ」に求められる人間的資質の違いについて説明していたことがありました。
オジェックとエンゲルスは、まさにその「監督」と「コーチ」の典型的な比較がそのまま当てはまるケースでしょう。
ただ、レドナップの言うように、“元コーチ”が監督としての威厳を示せない可能性もありますが、エンゲルス本人が、
「(選手には、コーチの時と)同じアプローチでいきたい。個人で話もしたいし、ミニグループでも話をして、いろんな意見を聞きたい。」
と語っているように、チームの風通しが良くなって、全体が良い方向に向かう可能性の方が大きいのかと、個人的には思います。
サッカー選手の社会的ステータスが高くなった現在では、世界的にも、「対話型」の監督の方が成功するケースが多くなっています。
「威厳型」というのは、その監督の“カリスマ性”と“結果”が伴って初めて成り立つものであって、どちらかのバランスが崩れてしまえば、すぐに内部からの不満は出てくるものです。
その浦和よりも迷走しているアーセナルのミドルズブラ戦の記事は、明日にでも。
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