指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『女衒』

2007年04月10日 | 映画
唯一つ見ていなかった今村昌平の映画。
明治時代、島原から海外に出て、日本人女を「からゆきさん」として輸出して儲けた村岡伊平冶の一生。
劇作家秋元松代が1960年代に『村岡伊平冶伝』として劇化しているが、主人公の村岡(緒方拳)は大変面白い人物である。
貿易商を目指して香港に密航した村岡は、偶然の機会から陸軍のスパイになり、満州で日露戦争直前の情報戦に従事する。
そこで軍人の小西博之に教え込まれたのは、富国強兵と天皇への忠誠だった。

香港に戻った村岡は、外国人に売買・監禁されていた日本人女を救出したことから、自ら娼館を経営することになり、日本各地から女を輸入してくる。
憧れの「貿易商」になったわけである。
そして、ついには「国立娼館」の設立をも領事館に提言して呆れられる。
この非常識さが、戦前に大日本帝国の非人間性を浮き出させたブラック・ユーモアになっていて、実におかしい。
だが、相当に理屈が多く、一般的にはよく理解するのはかなり難しい。
その性か、東映で公開されたときには、余りヒットしなかったようだ。

緒方の妻倍賞美津子をめぐっての、三木のり平や中国人商人ワンとのやりとりも想像を超える意外さで、大変面白い。
今村の日本人論の最たるものだろう。
脚本は、今村と劇作家の岡部耕大。


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