「日本映画学会会報38号」が送られてきた。昨年秋に映像関係では一番小さいこの学会に入会したのは、ここは会費が安く、また入会に推薦者が不要だったからである。
勿論、拙書『黒澤明の十字架』も送ったので、その書評と私が書いた自己紹介文『黒澤明産業に新規参入して』も載っている。
拙書の書評は、中部大学の小川順子さんで、筋を簡単に紹介した後、社会のコンテキストの中で黒澤作品を読み取ろうとしていると書いている。
それは正しいのだが、『羅生門』では、セックスを肯定しているのに、『赤ひげ』では、同性愛を否定し、さらに同時期にピンク映画を作っていた本木荘二郎を軽侮するような記述があるなどと見当違いもあって驚く。
私は、同性愛もピンク映画も否定していないが、黒澤が否定的だったという風に書いたつもりだったのだが。
要は、この人が言いたいのは、「この本はエッセイであり、学術論文ではない」ということのようだが、それは当然である。
普通の人が読む本として書いたのであり、当初は単行本ではなく新書版くらいで出すつもりだったのだから。
黒澤明への愛に溢れているとは少々驚いた。
私は、実は黒澤は、いつも尊大で偉そうなのでそれほど好きではなく、少なくとも溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、黒澤明の四大監督の中では、小津についで好きではない監督なのだが。
好きな順で言えば、溝口、成瀬、黒澤、小津になり、下から二番目であるのだが。
黒澤をはじめ、映画と時代、社会を考える入門書として最適とのご評価を頂いた。
小川先生、大変ありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いいたします。