1956年の日活、原作は柴田錬三郎、監督は阿部豊。
銀座のヤクザの組の事務所に、三橋達也が来て、親分の植村謙二郎に、「3年前のビルの建設費の未払い分を払え」と言う。
植村というのが古いね。
この人は、元日活で、戦後の大映時代は黒澤明の『静かなる決闘』でギャングを演じている。
三橋は、元少尉で、戦時中フィリピンで、ケチで因業な上官を射殺したヒューマニストであることが、警察の監獄係三島耕によって証言される。その上官の名は黒田。
三島も、この時期にはよく出ていた俳優で、二枚目で顔はいいが演技は下手な役者だった。
植村は、表看板としてキャバレーもやっていて、そこの組員には、高品格、柳瀬志郎などの、後の日活の悪役たちがいる。
そこで三橋は、月丘夢路に会うが、その名は黒田で、三橋が殺した卑怯な上官の妻だったのだ。
彼の墓参りに二人で行き、殺したことを告白しようとするが三橋はできない。
そのままに二人は魅かれあう。
なぜか、それはこの二人が美男・美女だからである。
当時の映画では、美男、美女は出てきたら愛しあうのが、決まりだった。
そこに、以前三橋と植村の揉め事で、刑務所にいた芦田伸介が出所してくる。
月丘は、昔は芦田の女でもあったのだ。
芦田は、後の刑事役の時より、太っていてすごみがある。
このことで、芦田と三橋は戦うことになるが、その場にいた月丘は、芦田をピストルで射殺する。
二人は、別々に逃げるが、三橋は警察に、月丘は植村たちに捕まる。
警察は、三橋を犯人として逮捕し、留置する。
そこには、いろんな連中がいて、中では天草四郎の新興宗教の教祖が一番面白い。
ある朝、団扇太鼓の連中が警察に押し寄せてきて、太鼓を叩き、騒動になるが、創価学会のことだろうか。
その他、大森義男の無銭飲食犯や内海突破の詐欺師など、戦後社会の社会風俗が面白い。たぶん、柴田の原作は、その辺にあったのだろうと思うが。
最後、三島の助けで、三橋は、警察を抜け出して月丘の病院に行くが、そこで月丘は、植村らの暴行がもとで死ぬ。臭
警察で、殺人犯とされそうになるが、赤ん坊を置いて逃げた女・関弘子が急に出てきて、殺人の場面を証言して三橋達也は、無罪放免。
関弘子は、観世寿夫の妻でもあったのだそうで、この頃は劇団青年座、同じく同座の山岡久乃もキャバレー女で出てくるが、美人。彼女は、美人で、小沢栄太郎とも浮名を流したことがあるそうだ。
戦後の阿部豊の作品として、面白い方だが、なんとも戦前、戦争臭を引きづっている。
この4か月後には、石原裕次郎の『太陽の季節』が公開されて、戦前的情景は一掃されるのである。
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