指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『女賭博師さいころ化粧』

2019年09月16日 | 映画
市川崑は、「シナリオができて、キャストが決まれば映画は80%はできたも同然だ」と言っているが、まさに面白い脚本に適役が配されれば面白い作品になる。
このシリーズを多作した井上芳夫監督で、脚本は大映の石松愛弘。

            

甲州の博打の縄張りを掛けたサイコロ勝負があり、善玉の親分の北竜二の代人の男が負け、大坂四郎に「イカサマザイを使った」と言われて自死してしまう。
その娘の大滝銀子の江波杏子は、クラブ歌手だったが、父親の死の真相を知りたく、勝った相手の女賭博師久保菜穂子の弟子になって地方を廻る。
ドサ回り映画であるが、「1960年代の近代社会日本の裏には、もしかしたらこういう昔ながらの社会があるのではないか」と思わせるのは、大映東京撮影所のリアリズムの力である。
ここは、戦前から現代劇専門の撮影所で、多くの秀作を作り出してきたスタジオである。

例によって博打の場所の設定が面白く、銭湯の広間がここでも出てくる。
久保菜穂子と江波杏子は、互いに通じ合うものが生まれ、このコンビ映画は、道中ものでもある。

久保の元恋人だった露口茂、ヤクザを止めて造り酒屋になっている松下達夫などという意外な配役もうれしい。
イカサマを仕組んだのは、大坂志郎で、最後江波と一本の勝負になるが、イカサマの方法が複雑で凄い。
また、江波がサイコロの練習をしているシーンで、「ピン・ゾロの長」と言って、1が2つとも出るのをワンカットで撮っているのは、本職の仕業なのだろうか。
昔、小林旭が、3個のダイスを振り、3つ立ったことがあったそうだが、それとも特撮か、なにか工夫したのだろうか。
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