20代のとき、一番好きな監督だったのは、蔵原惟繕だった。『憎いアンちくしょう』『銀座の恋の物語』『何か面白いことないか』などで、凄いのはこれらが皆日活の通常の娯楽作として作られていたことだ。
彼の作品に疑問を持ったのは、1975年に三軒茶屋中央劇場で『雨のアムステルダム』を見たときで、これには本当にがっかりした。萩原健一が騒いでいるだけで、実につまらないと思ったものだ。
1985年のこれも、それほどひどくはないが、売り物が古手川祐子の裸しかないのだから、大いに泣けてくる。
まあ、古手川や三田佳子、加賀まり子らをきれいに撮ろうとしていることは認められるが。
北大路欽也や三田佳子らの演技が非常におさえて淡々としているので、どこにも劇的な盛上がりがない。
あるのは、最後に三田が、北大路と古手川の隠れ家に乗り込んで来て、狂気的に北大路と自分を包丁で刺すところだけ。
着物と陶器類がすごいが、まさしくバブル時代と思える。藤田敏八が富豪、中尾彬がこれまた金持ちの医者として出てくるのも、実にバブル的。
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