指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

加藤茂雄さんが大演技している映画は

2019年11月23日 | 映画
元東宝の俳優だった加藤茂雄さんの主演映画『浜辺の記憶』が上映されているので、シネマジャックに行く。
鎌倉で漁師をしている加藤さんを主人公とした劇映画で、「長生きも芸のうち」を思いださせた。

さて、加藤さんが、大演技している東宝映画がある。
恩地日出夫監督、内藤洋子、田村亮主演の『あこがれ』である。
これは、元は横浜市中区にあった児童養護施設出身の二人を主人公とした作品で、テレビで『記念樹』として放映されたものの1つである。

最後、田村亮の母親の乙羽信子は、日本からブラジルに移民することになり、横浜の大桟橋から「さくら丸」で出航する。
これは、実際に船の出航に合わせて、俳優を船に乗せ、ロケ撮影したものだそうだ。

この中で、船のデッキで息子の田村亮に向かって手を振る乙羽の左隣で、大声で叫んでいる男性がいるが、これが加藤さんだ。
また、桟橋に来ている施設長の小夜福子の隣にいる職員も、記平良枝さんで、この方も東宝の俳優だった。
皆、俗に言う「大部屋役者」であるが、東宝と専属契約していた俳優だった。

このように、東宝はじめメジャーの映画会社には、スター俳優の他に、専属の俳優が数百人いて、群衆シーンを作り上げていた。
野球でも、スターの選手以外にも、脇役の選手、代打、代走、さらにリリーフ投手などの活躍を得て試合を戦うものだ。
同様に、映画もスター俳優以外の脇役から、その他大勢の「ガヤ」と言われる俳優がいて、初めて成立するものだった。
もちろん、逆に言えば、多くの専属俳優を抱えていられるのは、人件費が安かったからであり、1960年代中ごろに、各社は契約制度を変更し、専属制を止める。
そして、現在のように、その作品ごとに俳優のプロダクションから必要な俳優を出してもらうようになる。
その意味では、昔の日本映画は、非常に多額の予算で作られているので、出来が良いといいことになるのだと言える。




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