1958年の東宝映画、監督は「娯楽映画」の多い杉江敏男だが、この人はもともとは黒澤明の助監督も務めていた人なので、画面は正確でテンポも良い。宝田明のヒット曲『美貌の都』の映画化に続き、作られた宝田と司葉子のメロドラマ、前作は宝塚映画だったが、これは東宝で作られている。
お茶の水のニコライ堂のタイトルの後、バーで小泉博が飲んでくだ巻いている。その相手は、マダムの草笛光子だが、オーナーは他の店もやっている河津清三郎で、もちろん肉体関係もある。
昼は喫茶店、夜はバーの店に、司葉子がやって来る。草笛の亡くなった夫の妹の司は、上野から来たというので、東北の女なのだろう。
小泉は、神田の会社の社員だが、そこにいい加減な社員の宝田がいて、小泉は、社長の柳永二郎から
「息子の宝田をきちんと見てくれないと困る」と理不尽な小言を言われる。
宝田は、柳の息子だが、「俺は女中に生ませた子だ」として不貞腐れて女遊びを繰り返している。
今の女は、ダンサーの淡路恵子である。
当然にも、司と宝田は共に恋に落ち、横浜でデートするが、次のシーンがジェットコースターとは驚き。
一方で、社内には宝田を思うタイピストの団玲子がいて、彼女の家は、坂本武の下駄屋だが、その妻の浪花千枝子は、柳の家の女中だったという。
つまり、団玲子は、情実で入社したようで、「いったいこの会社はなんだ」と思う。
全員、少しも仕事しているように見えないのは、この時期の日本映画に共通するものだが。
柳は、宝田を大阪の自動車会社の社長伊豆肇の娘の白川由美とホテルで見合させる。
宝田は、白川のことを「ピンと来ない」と断るが、司と白川の感じが似ているので、ここは見ている方がピントこない。
司のことを知った浪花が、喫茶店に来て、司と草笛に対決し、宝田に「どこの馬の骨ともしれないお前は別れろ!」と言い放つのが最高。
この頃まで、結婚は、上層では家と家のものであり、元横浜市会議長の相川藤兵衛さんの奥さんは、港北の名門の飯田家から来た方だった。
草笛からも店から出て行けと言われた司は、河津の策謀で下流の店に行かされてしまう。もちろん、河津にやられたのだろうが、この時期の東宝なので、セックスシーンはない。店は、新宿南口で、ここは場末だったのだ。
司と別れた宝田はまじめになる。と言っても、毎日定時に出てくるだけのことだが。
そして、司が新宿のクラブで働いていることが分かり、宝田が会いに行くと、厚化粧の女になっていて、「もう昔の私じゃない」という。
主題歌が流れて雪の中を歩く宝田が、置いてあった車を開けると淡路がいる。
驚いたのは、いきなり淡路が拳銃で宝田を撃つ!
もちろん、軽症で、病室に司もやってきて、二人は結ばれることを示唆してエンドマーク。
家と家の結婚よりも、好きな同士で結婚しろというメッセージ。
現上皇陛下も、華族ではなく、上層ではあるが普通の家の正田美智子さんと結婚した時代なのだから。
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