指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『人間の証明』

2020年04月20日 | 映画
1977年の角川映画、テレビCMでさんざ聞かされた「母さん、あの帽子、どこに行ったのでしょうね」がラストで本当に流れる。
主演は、松田優作と岡田茉利子、岡田の夫で政治家が三船敏郎。松田の上司が鶴田浩二と、各社の大スターが出ている。
角川映画の功績と言えば、薬師丸ひろ子を作ったことの他、作品としては市川崑・石坂浩二の「金田一耕助シリーズ」くらいしかないが、日本映画にあった5社協定を有名無実化した実績はあったと思う。



著名デザイナーの岡田のファッションショーが開かれているホテルのエレベーターの中で、黒人青年の死体が発見される。
そして、これは戦後、闇市で米兵に暴行されたこともある岡田が、横須賀のバーで働いていた時にできた子であることが分かる、と言うもの。
話としては、松本清張の『ゼロの焦点』と同じで、戦後の米軍占領下の事件になる。
松本清張は凄いとは思うが、「下山事件」の解釈や小説『黒地の絵』などの米軍占領下の記述については、非常におかしいと思う。
もっとも、当時米軍の力は、今のわれわれには想像もできないほど大きかったので、仕方がないともいえるが。

この映画のニューヨークでの撮影は、日本のスタッフ、キャストが実際に行ったが、撮影の姫田真佐久さんの話では、カメラを操作したのは、アメリカ人スタッフで、姫田さんは米人の撮影監督を指揮する形だったとのこと。
また、佐藤純弥は、ほとんど役者の演技を見ておらず、「演出をしていなかった」とのことだが、本当だろうか。
結局、佐藤の作品で良いのは、『新幹線大爆破』だけだろうか。