「キネマ旬報」の昨年の日本映画ベストワンだというので、横浜シネマリンに見に行く。
予想通り、「夢も希望もない」作品だった。別に悪い映画ではないが、こういうものをベスト・ワンにしてよいのかね、と思う。
もし、若者が、ベスト・ワンだと聞いて見にきたら、驚愕し、二度と日本映画を見なくなくなるのではないか。
反アベノミクス映画としては、よくできているが。
ここに出てくるのは、下流社会の人間か、上流の弁護士だが明らかにかなり心がおかしく、同性愛になっている男である。
つまり、簡単に言えば、日本の多くの人間は、下層社会で苦しんでいるか、上層にいても心に問題を抱えているとものだと描かれている。
もちろん、歴代の日本映画の名作は、それぞれの時代の問題を表現してきた。
溝口健二の『浪花悲歌』『祇園の姉妹』は昭和初期の、ある種の好景気の中で身を亡ぼす女性であり、成瀬己喜男の『浮雲』は戦後の社会の向上とは逆に戦前、戦後の腐れ縁から逃れられない男女を表現したものだった。
それぞれが、時代に対して鋭い批判を持つものだった。
この作品で、一番面白いのは、橋梁の検査会社の同僚で、片腕の男が、爆弾作成に失敗して片腕になったというくだり。さらに、雅子様フリークの女性と、皇室詐欺を働く元準ミスの女である。
これらは、今までの日本映画には見られなかった人間像である。
製作・配給の松竹ブロードキャステングは、衛星劇場の会社だと思うが、よくこのように冴えない名作を作ったものだと感心した。
横浜シネマリン