指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『鼠小僧次郎吉』

2016年02月04日 | 映画

今回の三隅研二特集で、見たかったものの一つで、1965年の大映京都作品。

                        

 

テレビの『赤穂浪士』で人気になった林与一主演作で、ネズミと商家主人の二役を演じ、相手役は当時大映唯一の清純派人気女優だった姿美千子。

これは、テレビの深夜放送で、佐藤信が見てアングラ劇の『鼠小僧』を思いついたというものだが、見ていて期待ほど面白くなかった。

後にテレビ時代劇として小川真由美主演で『女鼠小僧』として作られ、明治座での公演もあり、私は見たこともある。

脚本は新藤兼人で、悪徳旗本の須賀不二夫や一味で、下層民の住むスラムを一掃して遊郭を作ろうとしている神田隆の悪事を暴き、神田や香川良介らの豪商から千両箱を盗んで貧民に小判を配る。

原作は、大仏次郎で、戦前には山中貞雄の映画もあったようだが、この三隅作品は少々面白さに欠けていた。

理由は、義賊の存在が時代とずれているからだが、それよりも作る側に若さがないからだと思う。

鼠小僧は、一種の青春ものだが、この作者、新藤兼人、三隅研二、そして製作者である永田雅一も、中年以降で若さがないからである。

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