指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『出所祝い』

2016年02月01日 | 映画

1971年に、映画『御用金』のヒットを得て作られた、フジテレビ、東京映画の作品、主演は仲代達矢で、安藤昇、丹波哲郎、江波杏子らによるヤクザ映画の大作である。

                                        

 

東京映画だが、仲代の兄弟分で最後は対立する親分が夏八木勲、先代の親分の娘で、子分の黒沢年男とできているが、対立する組の息子の嫁に行かされるのが栗原小巻、安藤の女房が川口敦子と俳優座の役者たちで、ほとんど俳優座映画ともいえる。

舞台は、青森で津軽じょんがら節と踊りが全面的に出てくる。

冒頭に、松田春翠の活弁による映画館でのやくざの出入りがあり、それが大正天皇の崩御、昭和天皇の即位の大赦で、受刑者が次々と出所してくるのが面白く、やくざ者の出所祝いが盛大に行われる。

この辺までは面白く、岡崎宏三のカメラ、小島基司の美術、そして佐藤勝の音楽も良いが、どこか面白くない。

要はテンポがなく、ドラマの流れが悪いのである。

岡崎宏三は、監督の五社英雄の演出をテレビ的で、ドラマがだれてくるとすぐにアクションを入れるのがそうで、詰まらないとチャンネルを廻されてしまうテレビ的だが、演出をよくわかっている職人的な監督だと言っている。

昭和初期で、関東大震災、さらに満州鉄道の建設で大量の木材が必要になり、津軽の木材の切り出し、運送の利権をめぐってのやくざの対立だが、人間関係がよくわからないこともあり、メリハリに欠ける仕上がりになっているのは誠に残念である。

栗原小巻が、やくざの親分の娘には見えないのが最大の問題だと思える。

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