いまさら?と言われそうですがこれは拾っておいた方がいいでしょう。
香港の立法会(議会)議員補欠選挙が12月2日に行われました。因縁の「女の戦い」となった対決の結果は、「香港の良心」と呼ばれる民主派のアンソン・チャン(陳方安生・67歳)が親中派のレジーナ・イップ(葉劉淑儀・57歳)に4万票近く差をつけて勝利しました。既報分はこちらを。
●お前らにはその程度がお似合い>>香港人(2007/09/11)
●香港で熱き「女の戦い」勃発。(2007/10/01)
さて今回の選挙、これをどう評するかと問われれば、標題の通り「『勝者』が負けて『敗者』が勝った」といったところです。
「陳太」(陳方安生)は選挙戦に勝利したものの、内容は辛勝というべき接戦。民主派の動員力の限界を示してしまいました。一方の「帚把頭」(葉劉淑儀)は敗れたとはいえ、親中派の動員力の強さ、また浮動票の一部も取り込んだという予想外の成功を収めて新たな支持層を開拓。
今回は議員(親中派)病死による補欠選挙でしたが、来年には任期満了に伴う立法会議員改選が行われます。勝ったとはいえ伸びしろのなさを露呈してしまった民主派とは裏腹に、今回敗れた親中派は来年以降に向けて明るい展望を持ったのではないでしょうか。
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香港と香港人を語る上で、当ブログは大雑把で図式的すぎるのを承知の上で、香港人をざっくりとタテ斬り&ヨコ斬りにするという腑分けを行っています。
まずは世代での分け方。
●「大陸脱出組」
新中国成立や政治運動、またそのしっぺ返しによる凄まじい飢餓のために香港へ逃げてきた世代。広東省の農民などが中心なので無教養な者が多いものの、この世代が必死に働いたからいまの香港がある(改革開放政策という追い風も吹いて、香港が「中国への窓口」という最高のポジションを得たこともありますけど)。中共政権の悪政で脱出してきたものの中国本土に望郷意識があり、結構親中派だったりするが、多くは政治に無関心。広東省の農民あがりだからもちろん北京語はほとんど話せない。その代わり客家語とか潮洲話が話せたりする。
●「むかし型香港人」
「大陸脱出組」が香港で産み落とした世代。香港で生まれ育ち、英国統治時代に社会に出た。1989年の天安門事件を目の当たりにしているので中共政権を信用してはいないし、2003年の「七一大遊行」(伝説の50万人デモ)を現出せしめた香港民主化を推進する主軸世代。とはいえ所詮は香港人、「商売第一」だから景気がちょっと上向くと政治への問題意識はすぐ頭を引っ込めてしまう。仕事で必要ある者を別とすれば北京語は話せない。ていうか耳汚しになるから話すな。
●「現在型香港人」
香港で生まれ育ち、1997年の中国返還後に社会へ出た。要するに北京語が必修科目となり中共政権が押しつけてくる「香港型愛国主義教育」のプログラムで成人した。天安門事件当時は幼児・児童のころなのでイメージを結べない。それゆえ中共政権への違和感は「むかし型香港人」に比べれば小さく、例えば「マスコミが自主規制している」と感じる「むかし型香港人」に「そうかなあ?」と逆に異質さを感じたりする。そこそこマトモに北京語を話す。
●「未来型香港人」
「現在型香港人」が将来結婚して生まれてくる世代。中共政権への親和度は先代以上で、「香港型愛国主義教育」を受けているから「私は中国人」がデフォ。もちろん北京語を巧みに使う。「天安門事件……何それ?」「文革……何それ?」「50万人デモ……何それ?」orz
これに対して自己認識という斬り方をすると、
●私は大陸から逃げてきた中国人。
●私は大陸から逃げてきた香港人。
●私は香港人。
●私は香港に住んでいる中国人。
●私は中国人。
……と、5段階くらいに分けられると思います。これを上の世代別分類に絡めると、色々なものがみえてきます。
あくまでも個人的印象ですが、1990年代初めに私が香港に渡ったころ、「むかし型香港人」が「私は香港人」と言い始めていて、つまり「香港人意識が根付きつつある」と、それが新鮮に受け止められていました。私の仕事仲間や元同僚や配偶者はみんなこの「むかし型香港人」&「私は香港人」です。
私と同い年である義姉(配偶者の姉)に尋ねてみたら、やはり躊躇することなく「私は香港人」という答が返ってきました。この「世代&自己認識」は選挙での投票性向にもよく反映されているように思います(「商売第一」要素を割り引く必要はありますけど)。
むろんそれは投票すれば、であって、投票に行かない人が多いのが香港の課題です。日本と違って香港は住民票がないため、まず有権者登録を事前に済ませていないといけないのです。
ですから「投票率50%」の基数は日本のように「20歳以上の日本国民」ではなく、有権者登録を済ませた人が分母となります。日本の算出法(18歳以上の香港市民権保持者)に照らせば、たぶん「50%」は30%とか25%くらいになってしまうでしょう。
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それはともかく、先日ある出来事で私はショックを受けました。
例によって配偶者の従妹であるアオイちゃん(20歳・学生)と北京語で雑談していたときのことです。年齢に照らせばアオイちゃんは「現在型香港人」。
「文化大革命……何それ?」
と私に問い返した剛の者であります(笑)。天安門事件(六四事件)は大略を知っていたものの、北京の学生が屯集していた場所(天安門広場)は私に教えられる始末。
で、電話中にふとアオイちゃんの自己認識を尋ねてみたくなったのです。
●私は香港人。
●私は香港に住んでいる中国人。
の二者択一で示したところ、
「香港に住んでいる中国人」
という回答が迷うことなく即座に、スラリとごく自然に返ってきたのでビックリしました。
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御家人「本当にそうなの?」
アオイ「うん。私の周りのコはみんなそうだよ。……あ、でもね、『マナーが悪い』とか『無教養』みたいな意味合いで『中国人』て言われたら『私たちはそうじゃない。一緒にするな』って思って嫌だけど。そうでなければ、『香港に住んでいる中国人』かな」
御家人「××(配偶者)や××の大家姐(義姉)は『自分は香港人だ』って言ってたよ」
アオイ「歳が違うもん、歳が」
……参りました。m(__)m
いやー本当に仰天しました。「私は香港に住んでいる中国人」なんて不届者(笑)がこんな身近にいたとは。教育ってのは怖いものなんですね。
以前のエントリーで指摘したように、香港は香港人自体が1990年代後半からそれまでの「成り上がり志向」(香港ドリーム)から「学歴重視」へと意識変化が進行していたので、社会からある種の活力が失われ、「守り」に入りやすい傾向、被雇用者=従属者属性が強まる方向へと変質しつつありました。
偶然ながらその時期が香港返還と重なったため、「香港型愛国主義教育」が身につくことで従属者属性に中共政権による方向づけが行われたのだろうと思います。
いま、アオイちゃんが20歳であるように、彼女のような「現在型香港人」の先頭集団が有権者資格のある18歳を続々と超えつつあります。年とともに「現在型香港人」の割合が強まっていきます。
これまで、香港の選挙では接戦が予想されると「投票率がカギ」と常に言われてきました。これは日本にもある傾向ですが、香港の場合は親中派が組織的な動員力に優るため、投票率が低いと勝率が高くなります。逆に投票率が高く浮動票が増えると、事実上「むかし型香港人&私は香港人」の大挙参入となるため、その大半は民主派に取り込まれてきました。……ところが、
「私は香港に住んでいる中国人」
と認識している世代が増えてくるなかで投票率が高まると、これまでとは違う結果になる可能性が強まります。
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それが新たな傾向として主流になりつつあることは、11月18日に実施された区議会選挙で民主派が歴史的惨敗を喫し、親中派政党が大いに議席を伸ばしたことに表れています。
●「植民政策」と中共のテコ入れが奏功?香港区議会選で親中派圧勝。(2007/11/22)
このときの投票率は、香港式の計算法で38.8%。この程度の投票率だと親中派が勝つのは当たり前、と言われそうなので、もうひとつ、2年前(2005年)の数字を出しておきます。公民教育委員会が香港市民に対して実施したアンケートの結果を香港紙『明報』が報じたもの。「祖国意識」「国民意識」の浸透ぶりを確認する調査だったようです。
●『明報』(2005/02/15・リンク切れ)
http://hk.news.yahoo.com/050214/12/19f95.html
「あなたは××人?」
●中国人(25%)
●香港の中国人(23.3%)
●香港人(21.2%)
●中国の香港人(19.2%)
2005年の時点で、香港人における「中国人意識」はまだ半数にも達していません。とはいえ翻って考えれば、これを以て、
「香港人の中で『自分は中国人』と揺るぎなく答える人が4分の1に達している」
「『香港の中国人』と『中国人』の合計が半数近くに達している」
と言うこともできます。「現在型香港人」の台頭によって、その比率は今後ますます高まっていくことでしょう。
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ずいぶん遠回りをしてしまいましたが、「陳太」vs「帚把頭」の香港立法会議員補欠選挙。事前の世論調査では「陳太」の支持率が40%を超え、「帚把頭」を10ポイントほど引き離していました(その他はいわば泡沫候補)。
これは意外な接戦で「陳太」にとっては予想外の苦戦。「香港の良心」と称され、出馬表明時には湧きに湧いた「陳太」で、しかも相手の「帚把頭」は典型的な悪役。2003年に自由を制限する法律(国安条例)を不完全なまま強行成立させようとして民意の大反発を買い、「50万人デモ」を引き起こした元凶ともいえる政府高官です(法案が廃案となり辞職)。
つまり非常にわかりやすい図式であるにも関わらず、両者の差はたったの10ポイント。元々親中派が持っていた議席ということもあるでしょうが、中共政権を背景にしたなりふり構わぬ組織戦術が、民主化で沸騰する勢いだった2003年当時ならともかく、現在なら有権者に対してそこそこ通用するということです。「現在型香港人」という新規有権者の参入も無視できません。
「陳太」の応援団は最大手紙『蘋果日報』。「陳太」後援会の機関紙になったかのように記事&社説で連日「陳太」への投票を呼びかけ、
「『陳太』が負けそうだ。みんな投票へ行こう」
と投票日当日には号外を出すほど煽りに煽りました。一方の「帚把頭」陣営は親中紙が「陳太」叩きの論評記事を連日掲載し、投票日が近くなると、
「『陳太』を支持するなら投票用紙の(4)にチェックを」
という携帯メールを大量に発信。投票用紙の(4)はもちろん「帚把頭」です。他にも、
「広東語を話せない『帚把頭』応援団がたくさんいた」
などの報道もあり中共政権もこの一戦に力を入れていることをうかがわせました。
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こうしたなか、専門筋の間で持ち出されたのはやはり投票率。「帚把頭」サイドの組織戦術が予想以上に健闘しているため、
「4割が分水嶺。投票率が40%を超えれば浮動票の力を得て『陳太』勝利だろう」
との観測が投票日が近づくにつれ主流になっていきました。『蘋果日報』が「投票に行こう!」と必死に煽ったのもそのためです。
そして本番。7時に開始された投票は「陳太」vs「帚把頭」の一騎討ちの様相で、出口調査でも接戦が報じられました。そんななか、投票率は18時半時点で38.3%。19時半時点ではついに「分水嶺」とされた40%を超えて41.7%、20時半には45.0%となり、最終的には52.0%。
「陳太」17万5874票、「帚把頭」13万7550票と4万票近い差をつけての「陳太」勝利です。とはいえ得票率は「陳太」が54.6%、「帚把頭」が42.7%。
投票率が52%に達したのにこの数字?……というのが、「『勝者』が負けて『敗者』が勝った」と私が評する所以です。
実は今回の選挙区については部分的に直接選挙が導入されて以来、「六四黄金比」と呼ばれるものがありました。民主派と親中派の得票率なり議席数なりが常に6:4で落ち着く、というものです。
ところが今回、投票率が50%を超えて中間層、浮動票が相当加わったにもかかわらず、民主派は「陳太」を以てしても得票率が60%を割り込み、初めてこの「黄金比」が崩れたのです。逆にいえば、浮動票の取り込みという点において親中派の躍進が目立った、ということです。「陳太」なのに6割に達さず、「帚把頭」でも4割を超えた。……ということが民主派にとって重い課題として残ったといえるでしょう。
一方で民主派は、世代交代が進んでいない、要するに次世代リーダーが育っていないとしばしば指摘されています。なるほど「陳太」は67歳。10歳年下の「帚把頭」が来年の立法会議員選挙への出馬表明を早々と行ったのに対し、民主派のエース格のひとりである「陳太」は家族が再戦に反対していると報じられています。
有権者の毛色が変わってきたこと、親中派につく浮動層が相当いたこと、そして来年の改選・さらにその次の選挙を見据えたときに、「香港に住む中国人」と自己認識する有権者が右肩上がりに増えていくことは確実ですから、民主派はその手駒からみて先細り感があり、伸びしろは小さいといった印象が残らざるを得ません。
これに対する親中派は、「香港に住んでいる中国人」意識の「現在型香港人」から忌避されずに意外に票を積み上げられたことから、今回は敗れたものの次回以降には期待できる要素が増えたといえるでしょう。
これまで「六四黄金比」を支えてきた「むかし型香港人」にしても、アジア金融危機とネットバブル崩壊を経験して不景気の怖さが肌身に沁みていますから、民主化がブームではない現在、民主派が変に大勝して中共政権との対立色が強くなっては困る、と判断する向きも少なくないと思われます。どちらにとって追い風なのか?と考えれば、「『敗者』だけど勝った」なのです。
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ところで、この構図を一朝にして崩し、再び民主派圧倒的優位の状況を生み出す秘策は、ない訳ではありません。……いや秘策というより偶然に期待するというべきでしょうが、台頭しつつある「現在型香港人」にショックを与えればいいのです。
正確には、「現在型」を含む香港人全てに衝撃を与える出来事が中国本土で発生すれば、それだけで親中派の支持率はガタ落ちします。かつて「むかし型香港人」がそうだったように、1989年の天安門事件のようなインパクトを伴う出来事を目の当たりにすれば、中共不信が再燃して香港政界の勢力図は一変するでしょう。
そんなの秘策でも何でもないじゃないか、と言われそうですけど、そういう偶然に期待するしかないほど、民主派は手詰まりの状況に直面しているのです。
まあ、どっちが勝とうが所詮香港は中共政権の植民地。後は墜ちていくだけですから、私としては本業のお給金と副業及びコソーリ活動の原稿料がもらえる環境でいてくれれば、それでいいのです。
彼らが、在日中国人のイメージアップに果たして来た役割は大変大きかったと思うのですが、今後は増え続ける新参者により、彼らの功績も虚しいものと成るでしょう。
http://miyazakimanabu.way-nifty.com/blog/2007/10/post_2628.html
を読んで思ったんですけど、中国共産党ってのは時には武力を用いて(チベット)征服し、時には制度を用いて(香港を)征服しますよね、
香港や台湾が中共に武力で敵わないのはわかりますが、中共だって香港を武力制圧できないから制度を用いているわけですよね。
なら何故香港が非武力で大陸を制圧しようとはしないのでしょうか?
征服欲の有無が中共の常勝を(?)招いているのでしょうか。
守勢の主義主張って、守った後に何をしたいのかが明確でなければなりませんし、その何かは自分の領域だけなのか、領域外にも突き付けないのか。
笑ってスルーして下さい。
ところで、私の知り合いは一番若くて20代後半、ほとんどは30代~40代なので意識的には「私は香港人」が多いと(勝手に)思っております。
ま、普段政治の話などほとんどしないので良くはわからないんですけどね。
現代型香港人に衝撃を与える、となれば五輪か万博が終わった頃に党が支えきれなくなって金融大暴落→民衆暴動→分裂国家でしょうかね。ってそんなに簡単にいかないか。
第二次大戦があって、そのあと植民地が次々と独立するなどして世界地図が塗り変わったからでしょうか、リセットしたように新しいリズムが刻まれていって、中身は違えど似たようなタイミングで世代交代が進んでいきますね。
>今後は増え続ける新参者により、彼らの功績も虚しいものと成るでしょう。
私はいつも不思議に思うのですが、日本の首相や外相が中国側と会談するとき、どうして在日中国人犯罪について叩かないのでしょうか。私が調べた限りでは18年連続1位です。国籍別で18連覇。台湾はもちろん香港やマカオもここには含まれていません。日本国民の対中感情の悪化は、基本的には生活レベルでにおける犯罪などへの脅威に起因していると思います。「草の根交流」が進んだら対中感情が悪くなったと(笑)。
同じように、日本人の対中認識についてもやや古い世代として少し心配しています。特亜のひとつに挙げられるようにマトモな国はでない、ということは浸透しているようですけど、中国は単に「イタい国」ではありません。ともすれば一党独裁政権の怖さを忘れがちではないかと。
香港の中国返還は、香港人の頭越しに英国と中共政権が話し合って取り決めたもので、香港人は全く関与する権利を与えられませんでした。また香港人の多くは中国への返還について当初はそう深刻な問題と考えずに受け止めていたのではないかと思います。ですから1989年に天安門事件が発生して、長いこと忘れていた中共の本質を思い出させられて、移民だ何だとパニックになりました。不動産は大暴落。それを底値で買って荒稼ぎした財閥もいましたね。
>なら何故香港が非武力で大陸を制圧しようとはしないのでしょうか?
仰る意味がよくわかりません。とりあえず制度によって何事かをなすことは不可能になっています。香港のミニ憲法である香港基本法を読めばわかりますが、重要な案件は行政長官の権限から立法会(議会)の構造に至るまで、親中派が多数派を形成できる仕組みになっています。その構造を変えるためには必ず全人代常務委員会,要するに中共政権の承認を必要とします。つまり根本に関わる制度や構造(例えば行政長官や立法会議員の全面直接選挙導入)については、最後に中共政権がハンコを押してくれないと何も変えることはできないのです。
香港人の価値観を中国に、ということであれば、香港人と中国本土の人間との間には致命的な意識の溝があるということは指摘できます。中国本土では万々歳で迎えた1997年7月1日を、当時私の周囲にいた香港人たちは例外なく「どうしようもないし」という諦めを交えた複雑な表情で過ごしました。親戚付き合いなどのある広東省を別とすれば、中国国民の圧倒的多数は「香港人も万々歳で返還を喜んでいるだろう」といまでも思っているようです。ネット上の掲示板での討論でそれを散見する機会があります。
中共的価値観を香港人が受け入れない限り、価値観の共有はあり得ないということです。もっとも香港人気質に照らせば、そんな途方もないことを考えているくらいなら頑張ってオーストラリアあたりの移民権とればいいじゃん、ということになるでしょう。また、エントリーでも指摘しましたが、世代交代などもあり香港人自体が変質しつつあります。これは香港社会が秩序化される時期に入った(階層間対流の機会減少=香港ドリームの幻影化)という香港自身の事情と、自らの価値観を押しつけようとする中共政権からの圧力の2種類があります。いずれにせよ中国による「同化政策」がやりやすい環境が整いつつあるようです。
>「陳太vs葉太」で何を勘違いしたのかむちゃむちゃアホなこと書いてますね、私。
そんなことないですよ。今回の件は取り組まなくちゃと思いつつもつい日を過ごしてしまっていたとき、頂いたコメントが背中を押してくれました。あのときの私のレスはそのまま今回のエントリーの骨子になっています。
>今日(4日)付けの蘋果見出しの「香港壓不死」は反大陸派の意地なんでしょうか。
これなんかナイスなツッコミでした。現実を受け止め切れていない真面目な「むかし型香港人」が危機感に押し潰されそうになるのを懸命に跳ね返そうとしているように思います。その意味で「壓不死」は勝鬨のようでもあり、止められない変化の本質を穿った悪い冗談のようでもあります。
>私の知り合いは一番若くて20代後半、ほとんどは30代~40代なので意識的には「私は香港人」が多いと(勝手に)思っております。
私の周囲もアオイちゃんを別とすれば、みな「私は香港人」派です。アオイちゃんが言っていたように「歳が違う」、つまり私が歳だからでしょうね。orz
個人的体験でいえば、「私は香港人」というのは1980年代末から1990年代初期に台頭し浸透した意識です。でもこれからは「私は香港に住む中国人」が増えていくのでしょうから、「香港人」の寿命は短かったということになるのかも知れません。
>五輪か万博が終わった頃に党が支えきれなくなって金融大暴落→民衆暴動→分裂国家でしょうかね。
いや、そんな派手な展開なら中国も香港どころじゃないでしょう(笑)。まあ人民解放軍が衆人環視の下で庶民を100人くらい無差別に射殺してその映像が全世界に流れればおk。ていうかそれも可能性としては非常に低いんですけど。
……いや違いますね。軍隊によるものかどうかは別として、衆人環視下でなければ数十人規模の虐殺は結構日常茶飯事だと思います。あとは台湾への武力侵攻でしょうか。でもそれやったら逆に香港人の中国帰属意識が高まっちゃうかも。ともあれ、香港は過渡期を終えつつある、という印象の残る選挙結果でした。
先のこととはいえ行政長官の直接選挙が決
ったようですね。香港の選挙自体は誰が
当選しようと、本土にはあまり影響しないと
思っています。むしろ影響するのは代表を
選挙で選んでいることを本土の人が目にする
事でしょうね。台湾に続きいよいよ本土の
政府の支配下でも起きるわけです。
共産党政府は今の土地買収とかでの権力志向を
改めないと、直接選挙要求が強くなるでしょうね。
はじめまして。御旅行先からのコメント、ありがとうございます。
香港の直接選挙ですが、まず実施されるのが10年後となっていますので、中国社会の現状を考えると、ある意味夢のような話です。それから直接選挙といっても私たちがイメージするようなものではなく様々な縛りがあり、例えば誰でも行政長官に立候補できるとは限らない、といったような不透明な部分が色々あります。
議会選挙にしても親中派が当選しやすい業界別選挙区が残される可能性があり、その新選挙制度自体も2020年から実施されます。13年先。
ともあれ「なんちゃって普通選挙」になる可能性が高いのでどれほど期待していいのか、ともかく台湾のシステムとはまるで違うものになるであろうことは想像できます。
中国本土に与える影響、これは現今の悪化した社会状況からすれば「理想よりパン」状態に近いものがあります。この10年で中国社会の様相はガラリと変わりました。今後10年でこれが好転する方向に向かうのかどうかは疑問です。民主化よりも別の動きが先に出てくるのではないかと考えたりします。
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