日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやーこういうこと、いつか起こるんじゃないかと思っていたんですけど、その兆しめいたものがとうとう起きてしまいました。モデルケースになるかな。なるといいんですけど(笑)。



 ●将棋でケンカ、相手を銃殺 中国の武装警察(MSN産経ニュース 2007/12/06/02:00)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/071205/chn0712052307008-n1.htm

 5日付の新華社電によると、中国河南省平頂山市で2日、武装警察の武器保管庫の管理人同士が将棋中にけんかとなり、1人が軽機関銃で相手を射殺した上、80発の銃弾を持って逃走した。警察が逮捕状を取り行方を追っていたところ、4日になって約1キロ離れた村の民家で発見。100人以上の武装警察が民家を取り囲み、銃撃戦の末に容疑者の男を射殺した。(共同)




 国営通信社・新華社及び香港紙『明報』の報道によると、事件は12月2日夜8時半ごろ、河南省平頂山市宝豊県で発生しました。加害者も被害者も「人武部」の武器庫管理人で、当直中のヒマつぶしに将棋を指していたら口論になって、……たぶん、

「あ、その手は待った!」

「だめだよー」

 とかやっているうちにエスカレートしてしまったのでしょう。2人の間には以前からいさかいがあったそうですが、激してしまうと場所が場所だけにダイナミックな展開です。アルコールの入っていた一方が席を外したかと思うと、ほどなく武器庫から
56式突撃銃を持ち出してきてズダダダダンと相手を射殺。弾倉4個(約80発)を持ってその場を離れました。

 この武器庫、新華社電では「人武部」のものとなっていますから、武装警察ではなく民兵の武器庫ではないかと思います。「人武部」って民兵とか予備役の軍人を仕切る部門ですから。『明報』でも民兵説です。犯人・張紅賓が上司と将棋を指していて口論となり……となっています。

 銃声を聞いて飛び出してきた同僚たちがあれこれ説得したのですが、犯人・張紅賓(38)は酒と発砲と殺人ですっかり逆上してしまっていて、そのあたりを一連射するなりすぐ逃走。

 さあ大変なことになりました。張紅賓は退役軍人だそうで、いわばその道の元プロが突撃銃に弾丸80発(40発前後との説も)を持って姿をくらましたのです。しかもテンションはかなりハイ。舞台となった河北省はもちろん非常呼集をかけて各所に捜査線を張り巡らし、さらに隣接する湖北省公安庁は容易ならぬ事態とみて一種の緊急事態宣言のようなものを省内に発令し、懸賞金2万元をかけて捜索を開始しました。

 ――――

 ところが、どこへ逃げたかと思われていた犯人・張紅賓,実は事件発生現場から約1kmしか離れていない自分の住む石灰窰村に夜9時45分ごろ姿を現し、知人である郭さん宅に押し入りました。郭さんは張紅賓の父親の友人とのことですからお爺さんでしょう。見知らぬ間柄ではなかったようです。先回りしていえば、郭さんにとってはそのことが幸いしたともいえます。

 さて郭さんを人質にとった張紅賓、突撃銃を片手に籠城の構え。ところが翌3日午前10時、学校から郭さんに電話があり、孫娘が病気だから迎えにきてほしいとのこと。

「行かなきゃ怪しまれる。ついでに食事の材料も買ってくるから」

 と張紅賓を説得して外出することに成功。孫娘を引き取り、本当に食事の材料を買い揃えて(笑)帰宅する途中、外出していた妻のお婆さんが付近に警官や警察車両がいることにビビっているのに出くわし、「家に入るな」と目配せして自分が中に入りました。

 ところがほどなく、郭さん宅の前に警察犬数匹が集まって吠え立てる気配に張紅賓はにわかに緊張。

「警察がこんなに早く来る訳がない。まあ飯にしよう」

 と郭さんは落ち着かせるように言ったのですが、張紅賓は目を血走らせて突撃銃を握りしめ、

「おれはこいつを放したりはしないぞ」

 と大声で叫ぶ始末。その数分後に郭さんの家は警官隊に包囲されました。様子を察して再び緊張する張紅賓に、

「警察はお前がここにいると突き止めた訳じゃなかろう。代わりに様子を見てきてやる」

 などと言いくるめて孫娘ともども脱出に成功(孫娘も連れていたんかいっ)。言いくるめられる張紅賓もどこか抜けている気がしますが(笑)、ともあれ3日の午後3時ごろから警官隊による本格的な対峙状況となり、引き続いて相次ぐ銃声。約2時間後に射殺された張紅賓が突撃銃や弾薬とともに引っ張り出されてきました。

 ――――

 この銃撃戦で郭さんの家は一方の壁が崩れ落ち、ひと部屋の天井が屋根ごと抜けてしまったそうです。……て、銃撃戦で壁が崩れたりするものでしょうか?という疑問に『明報』が答えてくれています。

 突撃銃という火力に退役軍人ということで
当局は済南軍区の野戦部隊に支援を要請し、装甲車2両、ロケット弾、歩兵部隊、狙撃兵などが出動。ところがこうして包囲網を固め、催涙弾を発射したりしながら行った説得工作にも張紅賓が応じませんでした。

 さればやむなし、ということで現場指揮官はとうとう実力行使を下命。装甲車が郭さんの家に体当たりして外壁を崩し、歩兵部隊が飛び込んで乱射、乱射、乱射。これでようやくケリをつけたとのことです。『明報』によると攻撃は軍サイドが担当し、警官隊は現場を包囲するのみで突入はしなかった模様。

 そりゃ装甲車でも体当たりしない限り民家の壁が崩れたり屋根が落ちたりはしないでしょう(笑)。ちなみに地元の警察当局はメディアの取材には一切応じていないそうです。

 ●「新華網」(2007/12/05/01:37)
 http://news.sina.com.cn/c/l/2007-12-05/013714450133.shtml

 ●「新浪網」(2007/12/06/06:29)
 http://news.sina.com.cn/o/2007-12-06/062913029675s.shtml

 ●『明報』(2007/12/05)
 http://hk.news.yahoo.com/071204/12/2kpp3.html

 ――――

 えー正直なところ事件の展開なんかはどうでもいいんですけど、どこか剽げた味があるのでつい一部始終を紹介してしまいました。

 私が「へー」と思ったのは、民兵の武器庫が県レベルで設けられていること。それから扱い方を知る者であれば、いざというときすぐ武器を持ち出して使用できる状態にあることです。民兵って確か突撃銃だけじゃくなくて、手榴弾や機関銃はもちろん、迫撃砲や携帯式対空ミサイルまで装備に含まれている筈です。

 例えば県全域なり県政府所在地で暴動が起きたときにですよ、民兵を味方につけるなり脅し上げて武器庫の扉を開かせてしまえば、暴動側が物凄く強力な火力を装備することになるのではないかと。

 もし農村暴動に民兵が合流したら……なんてことを常々考えていたんですけど、今回の事件のようにいとも簡単に武器が持ち出され、その犯人ひとりを始末するのに正規軍が装甲車まで出す騒ぎになるんですから、数千数万単位の暴動でそういう展開になったらそれこそ正規軍1個師団くらいを投入しないと鎮圧できないでしょう。

 全てが謎に包まれている四川省・漢源農民暴動(2004年)では、県全域で発生した暴動に十万人だかが参加し、この鎮圧のために警官隊が県外に出る道を完全封鎖しつつ正規軍2個師団を投入してようやく収拾したと噂されています。農民たちが人数だけでなく、侮れない火力を手にしていたからなのかも知れません。

 で、野次馬としては、モデルケースになるかなー、なったらすごいなー、そうであれかし、と期待してしまうのです。

 県単位で民兵の武器庫があるとすると、一党独裁政権とはいいながら意外に抜けているというか盲点ありまくりじゃないか、とか。暴動だけではなく、あるいは暴動に同調した県当局が率先して謀反を起こすのもアリじゃないですか。

 まあ社会状況が「和諧社会」(調和のとれた社会)構築を呼号しなければならないほど「不調和」の極みに至っている昨今だからこそ、そんなことを考えてしまう訳で。20年前にはそんなこと、夢想だにしませんでしたから。




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (sdi)
2007-12-06 14:22:09
中華人民共和国の民兵はたしか、文革のとき人民軍内部に足場を持たない四人組が人民軍への対抗武力とすべく組織化と重武装化を進めたと聞いています。(表向きの目的は「人民の海」戦略遂行のため)
ただ、その時点では人民公社単位の組織されていました。県単位で武器庫があり、武器の管理がされているのはそのなごりでしょう。軍事組織としての民兵がいまだ健在かどうかはわかりませんが、文革時代に整備された民兵のため兵站施設はまだ機能しているということですね。まあ、自動小銃とか手榴弾とか迫撃砲のような安値な歩兵用の装備(しかも旧式)なので横流しするやつもいなかったのでしょう。
でも、これで北京政府の頭痛の種が一つ増えましたね。番人が二人だけでしかも簡単に持ち出せる管理体制とは。
 
 
 
Unknown (まじっく)
2007-12-11 16:34:19
誤変換と思われる箇所がありましたので、報告します。

下から11行目、

>正規軍2個指弾を投入して

2個師団でしょうか?
 
 
 
誤記でした。 (御家人)
2007-12-12 00:41:17
>>まじっくさん
 御指摘ありがとうございます。タイプミスでした。
 
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